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振り返れば俺がいる(24)テレビについて(その10・終)テレビの影響、これからのテレビ

――「自分にインタビュー」テレビ編も10本目の記事となりました。そろそろまとめに入りましょうか。

いやぁ~、語りましたね。普段、こんなにテレビの話をする機会がないので、非常に充実している気がします。

――そう言っていただけると、インタビュアー冥利につきます。これまでいっき82さんの幼少期から現在までのテレビ遍歴を伺ってきました。
その中でテレビがいっき82さんの人格形成や人生そのものに大きな影響が与えたような気がするのですが、いかがですか?

確かにインタビュアーさんのおっしゃるように、私の人生はテレビの影響を強く受けてきました。

小さい頃にアニメの『ゲゲゲの鬼太郎』を観て、マンガが好きになって、自分でもマンガを描くようになった。

『加トちゃんケンちゃん』から始まったバラエティー番組遍歴は、『みなさんのおかげです』『やるならやらねば!』に繋がり、『ボキャブラ天国』の頃には、お笑い芸人に憧れるようになりました。

中学~高校時代にハマった中谷美紀を経由して、音楽や映画の世界にも興味を持ち。

大人になってから好きになったドラマからは、ドラマそのものの楽しみ方、演技のおもしろさも教えてもらいましたね。

そして、三浦春馬からは、命そのものの尊さを教えられた気がします。

――テレビをはじめとするマスメディアは、時に利権を握る資本家が一般市民を操る道具にするとも言われますが、その辺りの認識はいかがですか。

私自身もそのことには問題意識があって、ネットや出版などのメディアを通じて、そのような問題提起について触れたことがあります。

もちろん、悪いところもあります。むしろ、善悪でわけられることではないんですけどね。

この世に存在するものは、すべて両面がありますから。

時と場合によって、「善」と「悪」がひっくり返ることもありますし。

そういうことを理解したうえで、上手にテレビと付き合っていけば、こんなにおもしろいものはないと思いますよ。

私は「本」というメディアにも大きな恩恵を受けましたが、テレビにも大きな恩恵を受けてきましたから。

――具体的にはどういったことがありましたか。

例えば、私が中学時代に人間不信に陥って、人間関係に悩み出した時、その心に寄り添ってくれたのが、ウンナンの番組をはじめとする多くのバラエティー番組でした。

あの時、テレビがなかったら、私は途方に暮れていたことでしょう。

今とは全然違う人間になっていたと思いますよ。

――本に助けられることもあれば、テレビに助けられることもあるということですね。

その通りです。今の時代は、たくさんのメディアがあって、そこに優劣を付けたがる人たちが多いようですが、本当は優劣なんて付けられません。

確かにテレビの放送自体は、受信料さえ払っていれば、見放題のタダ同然のコンテンツなので、軽視されがちです。

それだけに多くの人の憩いの場となっているのも事実です。

――これからのテレビにもとめられるものはどういった番組なんでしょうか。

今は、ネットも普及して、我が家も配信で番組を観ることが増えました。

地上波の放送も観たいものは録画をしておいて、好きな時に観ることができます。

そんな中でも、「リアルタイムで観たい」と思うような番組も、数は少ないながらあるわけです。

本当はテレビの強みはそっちにあるのではないかなぁと、最近、強く感じています。

――リアルタイムで観る可能性がもっとも高いのは、生放送でしょうかね。

そうですね。昔の生放送の番組は、何が起こるかわからない緊張感があっておもしろかったものです。

そういうのもあって、YouTubeとかでもライブ配信が流行っているのでしょう。

テレビでも不定期の放送ですが、『おげんさんといっしょ』(’17)なんかは毎回、生放送で頑張っていると思いますよ。音楽番組だから、本番一発というのは凄くリスクがありますよね。

▲2017年5月~ 不定期放送(NHK総合テレビ)

――『おげんさんといっしょ』は、緊急事態宣言の中でも、ぬいぐるみを使ったリモート放送をやりましたよね。

ああいう不安な時期に人の心に寄り添った番組は必要だと思いますね。

それと、これからのテレビにはもっと教養を育むような番組があるといいと思いますね。

エンタメ的なものも、もちろんおもしろくていいんだけど、観た人が自然と「ためになったなぁ」と思うような番組です。

それを番組としておもしろくするのは難しいことだとは思いますが、テレビを作っている人達にはそこを頑張ってほしいです。

――最近、東大生が出演するクイズ番組があったり、林修先生の番組なんかも教養を高める番組なっているのではないでしょうか。

確かに、ああいう番組が続いているというのは、視聴者の中にそういうニーズがあるということなんでしょうね。

あれはあれとして、楽しんでいる人がいて、私もおもしろいと思います。

でも、私が教養と言ってるのは、「雑学」ともまた違うんですよね。

例えば、坂本龍一がゲスト出演したのがきっかけで、NHKの『にほんごであそぼ』(’03~)というのを観たことがあるんですけど、ああいうのが、私の言っている「教養」ですね。

▲2003年4月~ 月・火・水曜朝、平日17:00放送(NHK教育テレビ)

――子どもたちに日本語のおもしろさを伝える教養番組ですね。

あの番組では、古典の文学とか、狂言とかの伝統芸能を題材に、子どもにも楽しめる映像にしていますけど、大人が観ても勉強になる番組だと思います。

今は大人でもそういったものに興味を持つ人は少なくなりましたからね。

まぁ、私も大した知識はないんですけど。

でも、これを観て育った子どもがどんな大人になるのか想像すると、なんだかワクワクしてしまいました。

昔、私が子どもの頃にNHKの教育番組で『音楽ファンタジー・ゆめ』というのがあったんです。

▲1992年4月~1996年4月 (NHK教育テレビジョン)

これはコンピューターで作ったクラシック音楽をBGMにして、CGのアニメーションが展開される番組だったんですよね。

『ゆめ』で知ったクラシック音楽は、今でも結構覚えていますよ。

だから、『にほんごであそぼ』も子どもが古典に触れるいい機会だと思うんですよ。そういうものに抵抗がなくなるでしょう。

今は大人も古典や伝統に興味がなさすぎると思うんです。

日本の古典や伝統を日本人が愛さなかったら、誰が愛するというんでしょう。

まぁ、若年寄りのたわごとですが、大人向けの『にほんごであそぼ』みたいな番組があるといいですね。

文系の分野に限らず、色んな分野でそういう教養的な番組があるといいと思います。

テレビの時代はもう終わったという人も多いですが、実際には今でも大きな影響力のあるメディアです。

その証拠に、今もネットで話題の中心となっているのは、テレビで話題になったものです。

だからテレビで国民の教養をもっと高めることができたら、今の世の中で起きている色んな問題が解決すると思うんですけどね。

(「テレビについて」おわり)


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