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命の予算

この記事は自殺関連に対する予算編成に疑問を呈する記事です。その為自死遺族の方などは過去の辛い記憶が思い返されるかもしれません。ご自身の心と相談の上お読み下さい。



自殺者の統計

厚生労働省が令和5年7月現在公表している自殺者の統計「令和4年暫定値」は、21,843名で、毎年2万人程度で推移しています。

この数は世界で6番目に多く、15歳~39歳に関しては死亡の原因第1位が自殺という悲しい結果になっています。また、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は主要先進7ヵ国の中で最も高くなっています。

ちなみに東日本大震災の死者数が1万8425人(関連死除く)なので、自殺者数はこれより多く、東日本大震災が毎年起きていると言っても過言ではありません。

自殺で毎年信じられないほど多くの国民が犠牲になっているのですが、メディアや行政だけでなく、国民もあまり関心をもっていないように私は感じています。

政府、行政の対策

ただ政府も対策を行っており、2006年に自殺対策基本法が制定されて以降、当時3万人を超えていた自殺者数が約1万人ほど減少した事で、今までの対策は一定の効果があったと言えます。

また、政府が推進すべき自殺対策の指針として令和4年10月に「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」が閣議決定されました。

この自殺総合対策大綱では、コロナ禍の自殺の動向も踏まえつつ、これまでの取り組みに加え、
・子ども・若者の自殺対策の更なる推進・強化
・女性に対する支援の強化
・地域自殺対策の取組強化
・新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対策の推進など
 
を新たに行うとしています。

問題点

予算不足、人手不足

2020年に「週刊女性」が『いのちの電話』が抱える問題点という記事を掲載しています。これによると「電話をかけてもなかなかつながらない。受付時間が午後10時までというのも実情に合っていない」といった内容です。

また、人員も予算も足りておらず、厚生労働省の自殺対策予算は増加していいるものの、民間主体の『いのちの電話』への補助までは手が回っていないのが現状。ボランティアや寄付で成り立っている。地方だと1人~2人で対応している。と現場の現状を伝えていました。

自殺対策予算額の妥当性

東日本大震災では政府は国民の生命と財産を守る為に、被災後10年間で復興予算「約32兆円」を投入してきました。大きな人的、物的損害が出た為妥当な金額かもしれません。

では、毎年2万人が犠牲になっている自殺対策予算はいくらでしょうか?
厚生労働省「令和4年度予算案の概要」によると…
①地域自殺対策強化交付金による自殺対策の推進「29億円」
②指定調査研究等法人機能の確保等【一部新規】「6.9億円」
①+②=合計35.9億円と、言う事でした。

被害者人数に対しての予算額があまりにも少なく感じます。
もちろん予算をやみくもに増やせばいいという訳ではありません。だだ「命の電話」「SNSでの自殺対策」「啓発活動」など活動は多岐に渡る為、行政の支援は不可欠です。復興予算までとは言いませんが自殺対策予算を増額する必要性を感じています。

予算を増額する為の論理的根拠

自殺者に占める生産年齢人口

令和4年自殺者暫定値21,843名の内訳を年齢別に見てみます。この内、労働に従事できる年齢に当てはまる年代を太文字にしてみます。

  ~19歳   798名
20歳~29歳 2479名
30歳~39歳 2540名
40歳~49歳 3660名
50歳~59歳 4088名

60歳~69歳 2757名
70歳~79歳 2990名
80歳~   2480名
不明        51名
太文字の年代の合計人数は12767名です。

生存していた場合の税収

仮にこの年代、もしくはこの前後の年代で労働者12767名の自殺を防げたとします。労働者の課税所得が日本人の平均年収443万円(2021年)とした場合…

「1人当たりの年間所得税額:45万8500円」
これに12767人を掛けると「58億5367万円」となります。これを10年継続できれば単純計算で、10年後は税収が「585億円」増える事になります。

結論

よって、自殺対策予算額は最低でも60億円程度が妥当と考えます。また、先行投資の観点からいえば、数年間100億円程度集中投資を行い自殺者数削減の全国的な流れを作る手段も選択肢として有りではないでしょうか。

まとめ

今回わたしが長らく思っていた事を記事にしました。もちろんこのように物事がうまく進まないのはよくわかっています。しかし私が言いたいのは「自殺対策は国益になる」と言う事です。

少子化や人口減少、労働力減少が叫ばれているなか毎年2万人の人達が自ら命を絶っている今の状況が異常だと周知される事を願ってこの記事を終わりたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。


「⾃死・⾃殺」の表現に関するガイドライン

NPO 法⼈ 全国⾃死遺族総合⽀援センター」参考




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