みどりハイツの午後
みどりハイツの午後
ゴ・ゴー、
ゴ・ゴー と、永劫のことか?
幽かな声で響いている音楽で
水たまりに浮かんだ白い、白い葉と
虫仔が何匹も何匹も、
網で掬いとって清潔な沼地はつくられる。
ふるい文字列を切り取る
継ぎはぎされた虫仔の柄を眺めている。
きみのことは【ハウス】とよばれる街で知ることになった
(落雷。
植物背の庭で眠っていた・・・
+
+ +
+
+ +(敵地に、
背を向けることはできない。
配列をくるわせる器楽部隊の隊長だったきみのことだ、もう何も心配して
いない
さ行が極端に苦手だった幼少期のことを少しずつ取り戻しています
つま先からあいだに空気が入らないように丁寧にまかれた身体を
そのなめらかな背はぼくらの特徴だった、背はぴんと伸びていく
日記には天気が記されている、昨日は曇り、また、今日にでも空からは虹
が落ちてきて
「●」と、頁の真ん中に書かれた
回想するだけならたやすいことだ、きみもまたぼくらの記録に接触し
光りの速度では、なにもわかりゃしないのに、
旅先で盗まれる眼鏡拭きや指が詰められた小瓶
緻密に編まれた空気層に向って紙ミヒコウキをとばしていた、それが証か
しだった
あともどりできない、と
沼地にうつる鳥の会話を眺めていた。
聞こえないふりをしていた、何回も、何回も
かき消されるとはわかっているのに
やさしい貝の痕があるのも、
忘れようとしていた。
+
+
+(きみが、
ここを走り抜けた
のだと、
記録されている)
あいまいな言語で、
あいまいなまま交わされるぼくらの命令記号
(Psyche!)
紡ぎながら、立ちすくんでいる。
その、光りの中 で
ぼくらは
路面電車を待った
*『現代詩手帖』2024年2月号 新人作品選外佳作(峯澤典子・撰)にあげていただきました。
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