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夜のアメリカンドッグ

こんなこと、本当は言いたくないのだが、
女の夜道は怖い。

いやな一日、いい一日、どっちにしても、
一人で回想したり気分転換したいときには
散歩が最適だと思う。

だけど夜道を長々とは歩けない。

男はいいよな、一人で気ままに歩けて。なんて、
男は女はと言いたくないし、言われたくない癖に
そんなことを考えてしまう。

会社から一番近くの駅の出入り口は、
徒歩1分のところにある。あまりにも近い。
(朝は時間ギリギリだし、強い日差しもなく雨にも濡れないから実際すごく良い立地なのだけど。)

だから仕事帰りボーッとしたいときには、
少し離れた出入り口まで歩くことがある。
それがわたしの、ちょっとした夜のお散歩だ。
ぽけーっと歩く10分にも満たないひととき。

本当はもっと歩きたいのに、という気持ちを
紛らわせるのに最適なのは、コンビニスナックだと思う。

中でもお気に入りはアメリカンドッグだ。

夜のアメリカンドッグには、
2つの効果がある。

一つめは、仕事帰りの空腹を満たすこと。
二つめは、歩きながらコンビニスナックをかじって(お行儀の悪い食べ方をして)、背徳感を得ること。

人によるのだろうが、なんとなく、
真っ昼間にコンビニスナックをかじりながら
車も人も通る道を歩くのは少し気が引ける。

それが夜になれば人通りは減るし、
お互いにあんまり顔も見えない。
なんとも言えない充足感をもたらしてくれるのだ。

限られたお散歩にアメリカンドッグを加えると、
短時間でもまあいいかと思える。
しかも、たったの108円。

マスタードとケチャップはもちろん全て使い切る。
最初と最後はなにもつけず甘い生地も楽しむ。
少し柔らかめのソーセージもがしがしと頬張る。

完全に甘くもない、
完全におかずでもない、
割とボリューミーで、
いつ食べればいいかわからない。
でも大好きなこの味。

まさに、遠回りしている曖昧な空白に
ぴったりじゃないか。

力があまってステップを踏むように歩きたい日も、
歯を食いしばりたくなるような日もあるけど、
丸くて、甘くて、しょっぱくて、
ふかふかとなんでも受け止めてくれそうな
優しいアメリカンドッグに、
また頼ってしまおう。



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