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シンデレラOD

時空を超える手前の少女、魔法が切れるまでの物語

ガタンゴトン、ぷしゅー、、

はっと気づくと僕は列車のドアの前に立っていた。
慌てて横にさけ、降りる人を通す。
列車に乗り込み、端に立つ。僕は車窓からぼーっと風景を眺めた。

今日もまた、飛べなかった。

僕はこの世界が嫌いだ。勉強は出来ないし、友達は少ない。きっとこの先は真っ暗で、トンネルの向こうには絶望しか残されていないのだ。それなら絶望する前に死のうと決めていた。

それなのに。

僕は制服のスカートを握りしめた。僕は臆病者で意気地無い。飛び降りてしまえば一瞬の痛みとともに全て終われるのに、それすらも出来ないのだ。

皮いた笑みが浮かぶ。虚ろな目で夕焼けをみた。
夕焼けは、僕のことを嘲笑っているように見えた。

ガサゴソ

僕はカバンの中からブロンの瓶を出した。
手のひらに錠剤を出す。からんころんと、甘い糖衣錠を口の中で転がした。

ああ、僕は落ちぶれてしまったのだ。

少しの後悔と共に列車が揺れた。1時間も経てば楽になれる。僕は薬に救われていた。


家、帰りたくないな。






じんわりと心が温かくなる。
くらくらくらりとたちくらんでしまうが、もうどうだっていい。薬が効いてきた証拠だ。身も心も多幸感につつまれる。

列車に乗って何時間が経っただろうか。家にはもう帰らない。途中、スマホから母親の着信があったが、全部知らんぷりを決め込んだ。それから僕は立っていられなくなったので座席に座っていた。

夜空に星が見える。一番星だ。

そっと手を伸ばした。一番星を掴むように。
星を見るのなんていつぶりだろうか。死んだら僕も星になれるのかな。なんて。

ブロンは1瓶飲んでしまった。まだまだ沢山カバンの中にあるからいいけど。

昔は僕も優等生だった。親や先生の言いつけは破ったことも無かったし、兄弟にも優しくしてた。テストだって満点を撮ったこと、何度もある。

いつからこうなってしまったのかな。僕は頑張った代償にブロンを飲んでいる。日々は目まぐるしく早いスピード過ぎ去り、僕はぽつんと置いていかれた。もう置いていかれないように頑張りすぎることは無い。もう、もう疲れたんだ。

ブロンの魔法が切れるまでは、感傷に浸って空を眺めていよう。考えたところで何も変わらないのだけれど、最後ばかりは思い出を噛み締めたかった。

今日は月が大きいな。うさぎがもちをついているのがよく見えた。もしかしたらブロンで視界が冴えているのかもしれない。僕はメジコンを1箱入れた。




目覚めると黒いグルグルした霊が列車の窓の外に立っていた。中に入ってきた霊は僕の前でニタニタと口が避けるような吊り上がり方をして嘲笑っていた。

これは、僕が犯した罪や、奪った命の代償なのか。

霊が怖くて仕方ない。気持ち悪い。吐きそうだ。僕はブロンを3瓶口に流し込んだ。

命がゆれる。

ニタニタゆらり。
グルグルぐらり。

おかしくなる。




僕はいつの間にか震えていた。頭は火照って重く、寒気がした。

ああ、もうすぐ終わるのだ。
僕は虚ろにそう思う。
こんなにODしたんだ。ちゃんと生きてられたら、薬なんて辞められるのだろうか。

脈が0になる。

今すぐ救急車を呼べば助かるだろう。

今は12時。
終点手前の列車の中で、
シンデレラの魔法は切れる。

電車が時空を超えたのはすぐだった。



僕は静かに息を引き取った。



シンデレラOD / 櫻花アリス
https://youtu.be/RVPcgXT1rok?si=Bke1bR76Jr20zQIz

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