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4.28 なんにもしないってこと

    皆さま、いかがおすごしですか?今日の猫はカーテンの中で眠っていました。私はというと、とてもよい気分です。でも、今朝はそんなことありませんでした。夕方からアルバイトだからです。

    私は、ああなんてゆううつなのかしら、と思って二度寝をし、大学のオンライン授業のために昼前に目覚めます。講義が始まると教授の声が部屋中に響きわたり、うるさくてしかたありません。アプリの仕様なのか音量も下げられず、猫は二階のカーテンへ逃げてゆく始末。授業が終わり、冷凍のパスタを食べて時計を見ると、13時をまわっていました。家を出る時刻は15時50分、となると15時には支度を始めたい。ちょうど2時間の空白がそこにはあります。2時間というのは私にとって微妙な時間で、たとえば眠ったとしても満足できずに中途半端な気持ちで出勤することになってしまうでしょう。眠り足りない、おおいやだ、なんてぶつくさ言いながら歩くのは美しくありません。それなら。私は思い出しました。冷蔵庫の中にバラの紅茶があるわ。こんなときには、彼に倣って空白を楽しみましょう。彼とはクリストファーロビン、空白を楽しむとはすなわち「なんにもしないってことをする」ということです。お湯を沸かすあいだ、私は長袖のパジャマからノースリーブのネグリジェに着替えます。本を四冊、できるだけ頭を使わないものを用意して、お湯をティーポットへ。ティーパックを閉じ込めたら少し蒸らしてカップへうつし、温かいお茶をとろりと喉へ流し入れます。私の身体はバラ園へひとっ飛び、肩の力が抜け、今日という日はあざやかな春色へとみるみる変わってゆきました。そうしてお茶を飲み本を撫で庭に二輪咲くチューリップを眺めて、私は2時間のゴールデン・アフタヌーン(年中口ずさんでいます。6月じゃなくたってね)を生きたのでした。

    話は戻り、「なんにもしないってこと」について。くまのプーさんの、大すきなシーンです。そして聞く度に泣いてしまいそうになる言葉。「ねえプー、ぼくが大人になってもここに来て、なんにもしないってことをしてくれる?」クリストファーロビンは小学生になるから、これまでのプーたちとの穏やかな日常とはお別れをしなければなりませんでした。けれど今は、スローライフという言葉が流行る時代です。というか昔からずっとそうですが、大人にも「なんにもしないってこと」をする時間は大切なのです。眠れば疲れがとれる、眠ることでしか疲れはとれない、というのはとんだ思い込みで、心の疲れは睡眠だけではとれません。自分なりの「なんにもしないってこと」をすることにより、気持ちはうんと楽になります。そしてそれは、ただ手も足も休めてぽけーっとすることとは少しちがっています。「なんにもしないってこと」は、「目的を持たずに思いつきだけで過ごすこと」だと私は思います。やらなければならないことはあとにして、読みたい本があれば読む、踊りたくなったら踊る、そういったことを思うがままにするということ。そういう時間。大人になるとそれは、意識しなければできなくなってしまいます。だからどうか忘れないで。もしも少しの空白ができたなら、身体だけでなく心も休ませてください。ごきげんに生きていきたいものね。それでは皆さま、よい連休を。


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