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匂い。

去年と同様、わりかし時間のあるゴールデンウィークなので、新潟の美術館に行った。

午前10時ぐらいに思い立って、新潟近代美術館に新幹線で行って、久保田成子のTHEメディアアート!って感じの展示を見て、へぎ蕎麦を食べて、日本酒を飲んで、喫茶店に行って、17時ぐらいに新幹線に乗って帰ってくるだけの、弾丸というか音速旅行みたいな。

(音速旅行....?)

なぜか2021年のTOKYOでは禁酒法が流行っているので、普通に店で酒が飲めて、喫茶店ではみんなタバコを吸っているという状態が、少し浮世離れした日常のように捉えられてしまって、首を横に振って改まる。

マスクをしていない人々が行き交う70年代の街中のヴィデオ映像を見ていたら、ああ、こんなに顔と顔を近づけて話す時代があったんだ、と、まるで熱の日の昼間に見る夢のようにそれらを見るけれど、ニューノーマルになるのは1分野だけで、今、この現状が、おかしな世の中であるという認識はいつまでも持ってなければならない。首を縦に振る。

さて、猫のいる喫茶店で、巨大な黒猫の写真を撮って、モクモクとした喫茶店から出ると、

自分は吸っていないのに、マスクが異様にタバコ臭かった。

店内にいると気づかないけど、外に出てみるとすぐにわかる、自分たちの匂い。腕を鼻に持ってきて、くさ!のジェスチャー。

環境にあまりにも順応してしまって、その環境から離れた瞬間に今までの異常さが際立ってくる、あるいは過去の自分を否定したくなるような体験。

とにかく匂いがキツかったので、新しいマスクを買ってすぐにつけたのだけれど、

「今の体験はさ、田舎から東京に出ると、自分の田舎くささが突然気になってくる、みたいなことと同じ感覚なのかな?」

と閃いたかのように妻に同意を求めると、

微笑を浮かべながら「i agree.」と一言だけ。

PITTAのマスクが思ったよりビニール臭かったみたいだ。

大通りは西日が強く差し込んでいるのに、大粒の雨が降り出して、キラキラした光の線が、まるで雪みたいだった。




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