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大学って何の意味があるのか?:好奇心を育てて欲しい

今回は大学の中のことについて書きます!

(私の所属する)大学では4回生から卒業研究をするため研究室に所属し、多くの場合さらに大学院の修士課程に二年間通うことが普通になっています。僕の研究室は生態学という学問を専門にやっているところですが、そんな一つの分野の研究室にも色んな学生がやってきます。研究者になりたい人、そうでない人、言われなくても生物や自然にしつこい興味を持っている人、そうでない人、就職活動や資格の取得に意欲的な人、そうでない人、真面目にコツコツ研究を積み上げる人、ギリギリまで何もしない人(たまに期限がきても何もしない強者もいます笑)。学生が研究室に入って、出ていくのを見ていると、

興味も背景も多様な学生に対して、研究者が何ができるのか。
学生に、どんなふうに学部や大学院の期間を過ごして欲しいか。

とたまに考えます。学生がどう時間を過ごすか、なんて個人の責任・自由だと言ってしまえばそれまでなのですが、せっかく短くはない時間を小さな世界(大学)で一緒に過ごすのだから、楽しく過ごして欲しいと考えるのは普通なことのように思います。そして「大学で楽しく過ごす」とは、研究者の手前勝手な意見かもしれないのですが、一時的であっても本気で何かを学ぶことではなかろうか、と思うのです。じゃあ、何を学んで欲しいのか。

好奇心を育てる

全ての学生に共通して大事そうなもの、つまり生きていくのを楽しくしてくれるものは何でしょうか?

僕は好奇心を育てるってことではないかと思います。育てる、というところがポイントです。好奇心をもつと言うのは、

何かあるものを自分ごととして捉えること

ではなかろうか。

家の片すみを歩くアシダカグモの生態を、自分にとって重要だと思えるか?南米の森が切り開かれている現状を自分にとって重要だと思えるか?美術館に飾ってある何が書いてあるかわからない絵を大事だと思えるか?

それまで自分とは遠い世界であったり無意味なものだったものに興味を持つ(自分ごととして考える)には、実は準備が必要ではないかというのがこんかいの仮説です。

それは、自分が広い世界を持っていることではないでしょうか?自分がそれまで大事にしてきた世界からあまりに外れたものに興味をもつことは難しい!自分も今年の流行ファッションは?という話から、自分の生活があまりに離れているので、興味がなかなかもてない。でも、ファッションの素材についての話だったらどうでしょうか?どういう植物や原材料から作られて、そこにどんな職人or技術が関わっているのか?と言われると、興味がわきます。

つまり自分がより広い世界を持っていたら(より広い興味をもっていたら)、その外側のいろんな世界にももっと興味を持てるようになるんじゃないのか、と思うのです。興味を持っていることが増えていくと、さらに興味を持ちやすい話が爆発的に増えていく。つまり興味は興味を呼ぶのではないか。

研究室や大学で学ぶ専門的な話

上の話が本当だとすると、「好奇心を育てる」とは、何かを深く学ぶこと、ということになります。読者が、植物学を学ぶ大学生だとして樹木の研究をしたとしましょう。樹木は歴史を通して人間社会の資源として必須でした。大工さんの建築技術であったり土木であったり美術であったり樹木を利用する動物であったり料理であったり、そこから色んな興味を広げていくことが可能でしょう。研究に集中することも大事ですが、その周りのことを掘り下げることもして欲しい。それが研究の楽しさを倍増させてくれることを保証します。

学生の大部分は一時的に研究室に所属し就職して出ていくことになります。その時間は以上のことをするのに、最適な時間のように思います。別に研究でなくても構わないので、興味の幅を広げるために時間を使って欲しいなあと思います。それからそれを楽しむことを学んで欲しいというのが、僕の期待です。仕事に忙しくてそれだけに集中する、というのも大事でしょう。でも、それだけでなく、色んなことをする機会を持って欲しいです。

そうやって広げた多重な生活が、実は世の中を豊かにする+昨今問題となっている環境問題の解決にも関わるんではないかと思います。環境問題の根本的な問題は、多くの人が自然環境から切り離されて、自然のことがわからなくなることにあると思います。環境問題だけでなく、マイノリティの問題など、知らないということが社会で色んな問題を起こしているということは、多くのひとが経験していることではないでしょうか。

社会の中の人の興味の幅が広がれば、実は色んな社会問題が自然と解決するかもしれませんね!そのために自分が何ができるか、まだわかりませんが、おいおい考えて行きたいと思います。

まとめ

大学でやることが社会で何の役に立つのか?

この問題について考えるとき、漫画「はちみつとクローバー」のラストシーンが思い出されます(以下ネタバレがあります!)。

東京の美大に通う主人公(竹本)は、美術の才能を持った学生(花本めぐみ)に最序盤から一目惚れしますが、最後には恋敗れ寺社仏閣を修復する大工に仲間入りし東京を離れます。東京を離れる電車の中で、最後のお別れをし、

「消えてしまったものは、無かったことと同じなのか?」

と自問自答するシーンがあるのです。大学の研究は恋愛ではないですが、竹本君と同じように、過ごした時間に意味があったと思って研究室を出て欲しい。上で色々と言っていましたが、結局何かに本気で打ち込んで楽しめば、それでいいのだと思います。そうしたら自然と好奇心は育つはずです。

もし読者が学生なら古い!と指摘するかもしれませんね。でも大事なことは時代を通して変わらないはずです。ぜひ漫画を読んで、それから大学・大学院で楽しく勉強して過ごしてほしいと思います!

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