無理やり枠に押し込めるのではなく、違いを楽しむほうが健全かもしれない。
こんにちは。IKEUCHI note 編集員の井手です。
コンビニやスーパーなどで、日々購入する食べ物、日用品、雑貨。
消費者の僕ら目線でいうと、同じ商品を同じ金額で買うのであれば、品質が同じなのは当たり前。昨日買った商品が、今日買ってみたら違う品質だとすると、「えっ?」となりますよね。
でも、これって実はスゴいことで、定められた基準に適合する商品を大量に作ることのできるメーカーによる努力の賜物だったりするわけです。
だけど、一方で、その定められた基準に合わないはみ出しものも存在します。
例えば、有機野菜。
オーガニックな栽培をすると、どうしても不揃いな野菜がでます。むしろ、そのほうが自然ですよね。
じゃあ、基準を満たさない商品は不良品として捨てるしかないのか?
そんな問題意識から始まったのが、インド製の耐熱グラス「VISION GLASS」の輸入・販売を手がけるVISION GLASS JPの方々が中心となって行なっている『NO PROBLEM』プロジェクトです。
これは、製品の製造過程で必ず生まれてしまうB品と呼ばれる不良品を「NO PROBLEM(問題なし)」として受け入れることを通して、今の日本におけるデザインと生活の風通しをよくしようという取り組みです。
その『NO PROBLEM』プロジェクトが、東京ミッドタウン・デザイン部とDESIGN TOUCH合同主催の「DESIGN TOUCH CONFERENCE ー みらいのアイデアを学ぶ」において、トークセッション「これからの生活美学|B品を考える・NO PROBLEM!と言える価値観・ものづくり」を開催しました。
そして、そのセッションにゲストとしてIKEUCHI ORGANICの阿部社長が登壇し、IKEUCHIの考える”ものづくりの考え方”について話をしました。
今回のnoteでは、阿部社長が、どんな話をされたのかをレポートします。
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最大限の安全と最小限の環境負荷を目指して。
阿部さん:皆さん、こんにちは。IKEUCHI ORGANICの阿部です。
私たちは、愛媛県今治市でタオル製造を生業としている会社です。まずは、簡単に会社の紹介をさせていただきます。
私どもの経営理念として「最大限の安全と最小限の環境負荷」という言葉があります。
これは、私たちが作る商品は最大限の安全が担保されているべきという考えと、環境に最も最小限の負荷であろうと考えられる生産工程で商品を作るべきという考え方に基づいているものです。
素材に関しては、オーガニックな素材しか使わないという稀有なメーカーです。遺伝子組換えではない種を使っていること。3年以上農薬、化学肥料を使用していない畑で栽培していること。そして、フェアトレード。この3つの条件を満たしたものを我々はオーガニックと考えています。
また、環境負荷を最小限に抑えるために、工場で使う全ての電力を風力発電で間接的に補うグリーン電力を利用しています。そのため、我々のタオルのことを「風で織るタオル」と呼んでいただいていたりもします。
また、最小限に環境負荷を抑えるという点でユニークなのが、染色工場の取り組みです。実はタオルを製造する上で一番環境を汚してしまうであろうものは染色の廃液なんですね。我々を含め7社で工場を建てて、ここでは瀬戸内海に直接流せる状態まで浄化して海に返すということも行なっています。
我々は今「織布工場から食布工場へ」というスローガンを掲げています。織る布から、食べられる布ということですね。
私たちは、ISO22000という食品を安全に保つための体制づくりに関する国際規格のもと工場を運営しています。我々が作っているのは食品ではなくタオルなんですが、現在「赤ちゃんが舐めても安全」というところまでいっているので、「万が一、赤ちゃんが食べてしまっても大丈夫なところまで目指そう」という発想でやっています。
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なんとなくダメがB品の大半を占めている。
阿部さん:今回は、NO PROBLEM商品がテーマということですが、大前提として、我々の判断基準は全てにおいて”持続可能”かどうかなんです。
作り手である我々は、原材料をこれからも使い続けたらどうなるのか。そして、今の生産工程をそのまま続けたらどうなるのかを考えないといけない。
また、使い手である皆さんに視点を移すと、身の回りにあるものがどういう経路で手元に来たのか。それと、いま日常的に買っているものを買い続けたら、この先の未来がどうなるのかを想像していただきたいんです。
この供給者と消費者の2つの視点で、現在の生産と消費をそのまま続けたらどうなるのかを考え続けることで、持続可能な状態が訪れるのではないかと仮説を持っています。
この前提の上で、我々のB品、NG商品に対する考え方をお話させていただきます。
まず、NG商品の定義の問題なんですが、破損だったり、欠損だったり、製品的に使用上不都合があるものは、当然B品になります。
ただ、B品の中の大半は、「見栄えがなんとなく良くない」とか、「使うのには問題はないけど、なんかね」と言った情緒的な問題が大きな割合を占めているように我々は思っています。
そこで、情緒的な問題をどこまで許容するかということなんですけども、そもそも検品の基準が立場によって異なるわけですよ。
製造している作り手の目線。
販売をなさる売り手の目線。
実際に使われる使い手の目線。
この3つの目線を合わせていくと、B品を劇的に減らせるんじゃないかと考えています。
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許容の先に、どんな未来があるのかを提示すべき。
阿部さん:先ほどB品のほとんどは情緒的な問題だと言いましたが、情緒的な瑕疵の許容範囲が、商品や時代によっても全然変わってくると実感しています。
例えば、農産物であれば、不揃いなものであったり、形が悪いもの、色が不鮮明なものはNG商品。つまり、均質であるということが是とされていました。
でも、今は「農産物に均質性を求めるって、どうなの?」という認識に変わってきたのではないかと個人的には思っています。
また、繊維製品も、風合いが異なるもの、色が異なるもの、傷物はNG商品だと以前は認識されていたものが、「着用に影響なければ、廃棄しない方が資源の無駄遣いにならない」という風潮に変わってきたように思います。
逆に、家電とか雑貨のような消費材は今だにほぼNGだと思うんですね。自然由来の素材から作られていないから、許容範囲が狭いのかもしれません。
我々はずっとタオルを作っているので、原材料は自然由来の綿がほとんどです。そのため、以前と比べると皆さんの許容範囲が広がっている印象があります。
そして、大切なのは、この情緒的瑕疵の許容範囲を広げた先に、どういう未来があるのかを提示することだと思います。
今まで許されなかったものを許すということは、何か代わりに新しい視点だったり、何か自分の新しい価値観を目覚めさせるものがないと難しいと思うんですね。
例えば、職人さん一人ひとりの手仕事の大切さだったり、品質の揺らぎの大切さだったりを、きちんと売り手や買い手にお伝えする。
そうすることで、売り手や使い手の納得感が高まり、どなたでも瑕疵の許容範囲を広げることに取り組めるのではないかと思います。
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違いを楽しんでいただいた方が健全だと思って。
阿部さん:そのなかで、我々の取り組みの事例として『コットンヌーボー』という商品の事例を紹介します。
綿の収穫の年次を区切っていて、その年にできた綿花だけで糸をつくってタオルを作るというものです。「ワインのように楽しむ」とサブタイトルがついています。
このコットンヌーボーが始まったきっかけが、取引先からの返品でした。
私たちはオーガニックコットンを使っているので、基本的にロットごとにズレというのは絶対にあるんです。しかし、お取引先様のところに商品を納めさせてもらうと、「風合いが違う」「色味が違う」と返品が届くことがあったんですね。
「でも、製品的には全然大丈夫なのになぁ…」とブツブツ言ってたら、デザイナーの佐藤利樹さんから「阿部さん、食べ物みたいに売ったらいいじゃん」とアイデアをくれたんです。
普通は商品の均質性を保つために糸をブレンドしているんですよ。複数の年次の糸だったり、色々な産地の糸をブレンドして使っているんです。
でも、我々のようなオーガニックを扱っているものは、そもそも生産地域は決まっているし、年次ごとのブレンドもできることに限界がある。
それであれば、その年に生まれたものを個性として、そのまま製品にしちゃって、「違いを楽しんでいただいた方が健全だよね」という発想から、2011年に生まれた商品です。
このコットンヌーボーを販売してから、「商品ごとに違いがでることが、むしろ面白い」と思っていただき、瑕疵の許容範囲が広がったように思います。
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自分は何に一番軸足を置くべきなのか?
阿部さん:2020年に東京オリンピックがありますが、これから自分たちと違う目線の方々を受け入れることが必要になっていくと思うんです。
なので、A品・B品を何で判断するのかということもそうですが、色んな見方というものがあって、その時に「自分は何に一番軸足を置くべきなのか?」を個々人が考える時期にきているような気がしています。
そうすると、メディアで流れている情報から全てを判断するというのはなかなか難しい。
インターネットで調べたり、勉強会に足を運んだり、自分から知ろうとする「知る努力」というものが大切になってくると思うんです。
知る努力をしつつ、「どうすれば、持続可能なんだろうか?」ということをそれぞれが考えていくことが、これから求められてくるのではないでしょうか。
今日はありがとうとございました。
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以上、トークセッション「これからの生活美学|B品を考える・NO PROBLEM!と言える価値観・ものづくり」における阿部さんの登壇内容のレポートをお届けしました。
傷や違いがあった時に、それを不良品だと思うか、そこに味を感じるかは、受け取る人の価値観次第。
阿部さんが最後におっしゃったように、自分の価値観の軸をどこに置くのかが、一人ひとりに強く問われる時代になってくるように思いました。
つくる責任とつかう責任。そのためにも、”知る努力”というものを意識して、日々を過ごしていきたいですね。
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最後にストアイベントのお知らせです!
『IKEUCHI ORGANIC 新作 Preview 2019』
毎年恒例となりました「新作Preview」、今年も開催が決定いたしました!
弊社代表の池内が直営店3箇所をまわり、2018年のご報告とこれからのIKEUCHI ORGANICのお話をさせていただきます。
【各日程】
TOKYO STORE:11月15日(木)18:30~20:00
FUKUOKA STORE:11月23日(金)18:30~20:00
KYOTO STORE:12月8日(土)18:30~20:00
※19:00頃より代表池内よりご挨拶させていただきます。
タンザニアのオーガニックコットンの収穫状況や風合い、発売までのスケジュールなどを、代表池内よりお集りの皆様にご報告させていただきます。また、コットンヌーボー2019のPreviewの他、新作アイテムもいち早くご覧いただけます。
ご参加の方には今秋、今治本社で手摘みしたオーガニックコットンボールをご用意しております。また、ささやかではございますが、オーガニックなお飲み物をご用意して皆さまのお越しをお待ちしております。
イベント中は入退場自由となっておりますので、お気軽にお立ち寄りください。
是非、こちらの機会にSTOREへお越しになってみてはいかがでしょうか?ご来店をお待ちしております!
Text & Photo:井手桂司
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