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オープンワールドのクエストとしてインターンシップ・プログラムをつくる。ーDHW Boat Config

デジタルハリウッド株式会社が開催する実務体験型インターンシップ・プログラム-DHW Boat Config- の企画・進行を担当しました。27大学から参加した学生32名が、3日間の内に本学の広報企画を考え、施策を完遂する、というものです。

先日、開催レポートが配信されたので、担当者視点での振り返りを書いておきます。

背景と経緯

今年のインターンシップ・プログラムの内容を大学事業部にする、という決定を受けて、企画と進行を担当することにしました。

インターンシップは日本で新卒向け就職を希望する大学生にとって重要です。グローバルな視点でインターンシップなるものが機能しているかどうかはさておき、大人と仕事場で接した回数、は如実に就職決定力というか、採用されやすさに結びついているためです。大人とよく話しているのだな、という雰囲気を感じさせる人とは、一緒に働いている未来が想像できる。

逆に、どれだけ能力やスキルが高くとも、そういう雰囲気を纏っていない人には縁遠さを感じます。戦略的に大量採用する大企業でのことはわからないですが、貴重な数名の枠で人材獲得を争う中小企業にとっては、重要なポイントであろうかと思います。それは学生ノリだとか意識だけ高い系からの脱却といったこととは違って、単に経験で醸成される類のものです。素朴に、一人の大人として接してくれる環境で、大人たちと接し、会話すること。コミュニティに半構成員として出入りするだけで、勝手に変わってくる性質のものです。だから、インターンシップには積極的に参加するとよい。

(これは新卒就職活動においての話であって、起業・独立を含めた大学生の進路一般に思うことではありません。本学は学発ベンチャー輩出数が全国でも上位の実績を持っていますが、かれらには”大人”とか”働く”とか、関係無いです。実装あるのみ。行動あるのみ。)

そういう視点をもってインターンシップを見ているので、実態として企業の説明会に過ぎないとか、お土産的にビジネススキル的なものが身につくらしいワークショップの体裁のプログラムに対して、私は一歩引いている立場をとってきました。

コンセプトと設計思想

そのため、自社のインターンシップ・プログラムの内容を企画するにあたり、文科省認可の大学と、株式会社の人材戦略の交差点で、以下のようなポイントを重視することにしました。

1)主催会社の様々な部門・メンバーとの接点を設けること
2)リアルタイムのフィードバックを行うこと
3)実際の仕事に直接関係する、価値ある活動を任せること


そしてこれらに加え、産学協同で運営される自社事業ならではの特色として、
4)外部のパートナー企業の協力を得てプロジェクトを行う
を加えることで、未来の産業界の担い手である大学生のためのインターンシップ・プログラムとして意義を深めることができるのではないか、という仮説を立てました。

参加学生にとっての価値としては、「私がやりました」と具体的に実感を持って記録、プレゼンできる実績をつくること。個別のURLが公式アカウントから出ていて今後の就職活動などで使えること、を目指す。「成長できました、経験しました、気づきました、理解しました」ではない、個別の実績をつくる。個別個別と言っていますが、学習者中心であろうということなのかもしれない。

これらを踏まえて、設計コンセプトを「時間だけ圧縮して、本物のミッションを任せる、オープンワールドのクエスト」と定めました。

プログラム内容と準備諸々

大学の中に設置されている、産学官連携センターにインターン生を配属し、私はゼネラルマネージャーとしてプロジェクトを統轄。講師役でもファシリテーターでもなく、大方のメンバーにとっては上司の上司、として普段の仕事に限りなく近い行動原理で動きます。そして、志願者の中から選考してマネージャーを置き、リアルな組織を設定します。

マネージャー役は2名に決定。それぞれが自分のユニットを持ちます。すべての裁量を委ねることを事前に伝えました。

荒っぽいプログラムなので、クリエイティブの力を使って、全体のトーンを調整しておく必要があります。これは産学官連携センターのキービジュアル。

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このビジュアルのモチーフでもあったル=グウィンの古典的ファンタジー小説「ゲド戦記」のたたかいを手がかりに、自分のボートを設定する、という気持ちを込めてBoat Config と命名。(レトロなIT用語 BOOT CONFIG を意識していたりもします)。ネーミングと、指示書仕立てのWebサイトをつくることで、プログラムを一つの装置、一つのプロダクトのように仕立てます。

そして、ワンキャリアなどを見て参加者が次々にエントリーしてきました。予想よりずっと多くの方から申し込みをいただき、正直言って驚いていました。他のプログラムとの違い、特色を感じ取って参加を決めたということを事前に教えてくれたインターン生が多かった。

参加者には、下の指示書サイトを事前に見てきてもらいました。制作はアーティストとデザイナーの汽水クリエイティブユニット、Arrows。産学官連携センターのキービジュアル制作から対話を重ねているので、プログラムのコンセプト、設計思想を共有して、しっかりした世界観のサイトをつくってもらうことができました。いつもながら、感謝です。

他に、事前にしたことは、
・パートナー企業との事前打ち合わせ(設計思想の共有)
・Slackワークスペースでのコミュニケーション
・マネージャー役の選考面談

など。

このあたりは相当に時間とエネルギーを注ぎ込みました。学発ベンチャーであるBRAIN MAGIC 神成さん、Peatixの畑さんには、無茶とわがままをたくさん聞いていただきました。ありがとうございます。

オープンワールドで行うクエスト

1日目は完全リモートで実施。さすが、2020年度の大学生はZoomでのチームアップもあっという間です。早々に、見守るだけのモードに。

初日のオリエンで使ったスライドから抜粋。「ご提供」するプログラムではなく、自らの手で状況ごとつくるのだということを強調しています。

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2日目の夜にはプレスリリースを配信しました。

そして3日目の午後から、2つのユニットの施策が始動。

イベント実施を想定していましたが見事に覆され、Unit-KはSNSでのコンテンツ展開。

Unity-Yは、Spatial Chat 2つを使って、バーチャルイベント。パートナー企業の社長だけでなく、卒業生や学長、私まで前夜にアサインされ総出で実施。Spatial Chat の有料プランについて急激に詳しくなる。ゼネラルマネージャーとしても判断を迫られる場面があり、痺れた。

予定調和を排除したので、担当としては当然ながら最後まで怖かったわけですが、設計思想を曲げずになんとか貫きました。「ここからは、任せた」と宣言して始まってしまってからは、「OK」「わかりました」「やりましょう」くらいしか言わなかったような気がします。ベタですが、良い表情をたくさん見せてもらいました。最初に書いた、「一緒に働いている未来を想像できる」雰囲気です。参加メンバーには、そのあり方で、今後の就職活動に取り組んでもらえたら嬉しいです。あれは私がやりました、と言える・書ける実績になっていたら、このプログラムの到達目標はクリアです。

参加者・関係者からのフィードバック

私は今回、株式会社が主催するインターンシップ・プログラムの、コンテンツ部分の企画・運営を請け負った形になります。プロジェクトオーナー、主催者であるところの広報室長のつぶやきによると、

とのこと。「意思決定を体験できるプログラム」、まさに。本記事のタイトルに使わせていただきました。全力で打ち込める新しい機会をもらえて、本当によかった。

最後に、終了後にインターン生からもらったメッセージから抜粋。

予定調和はないと言われたけれども、やってみるまでそれが何を意味するのかはわかっていませんでした。しかし実際に2日目から動き出していて、ゼロから何かを生み出す当事者になる感覚、興奮しました。出会ったことのない人に、変化を与えている。自分たちにも、変化が生まれている。ぞくぞくしました。この短期間で"やってみる"ことができたのは、インターンシップという環境で、経費や人脈、機材、時間などのリソースを担保されたことが一番基にあると思います。私たちの実装する勇気は実装できる環境によって成立していました。その基盤を与えてくださったことに感謝しております。

以上。企画・進行を担当した私の視点からの振り返りでした。

開催レポートも合わせてご覧いただければ嬉しいです。

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ありがとうございました。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。つたないものですが、何かのお役に立つことができれば嬉しいです。