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【イタリア】市は家賃の補助金を容易には渡さない



先月、市役所から一本のメールが届いた。

2021年の家賃を補うための補助を付与




その条件は、

◆ 昨年の所得が、28,727.25ユーロを超えないこと。

 ◆ Covid-19の健康上の緊急事態により、25%を超える個人所得税の損失に苦しんでおり、法令で義務付けられている値が35,000ユーロ未満であることを示す証明書を持っている人も参加可能。 「賃貸住宅へのアクセスを支援するための国家基金。



実は、昨年のコロナ禍において、一度家賃1ヶ月分の補助金を受けていた。そのこともあって今回も知らせてくれたようだ。

私は、レストランでウエイトレスとして主に働いているが、夫は事実上の無職となっている。"働いてはいる"が、まだ契約書を交わしていない。イタリアでは、ブラックという意味のネーロと言う。本来ならばいけないことだが、コロナの影響により、企業側も人を雇う余裕などなく、ネーロは横行している。

ということで、我が家にも助け舟はやってきた。だが、誰もが簡単に乗れる船ではなかった…


説明文の中に、こんな一文があった。

補助金の申請書は、次のアドレスに接続して、市の市民ネットワークの専用プラットフォームを介してオンラインでのみ提出する必要があります。


つまり、専用のサイトで全てを完結させる。
アナログ人間な夫は、窓口でとりあえず聞いてくるという具合だ。私はというと、コロナ禍で誰が人と直接会いたいと思う?いないよ。ネットで全部できるんだって!と言い張る。



一見、簡単なように感じるこの作業には、あらゆる手続きが必要になった。ざっとまとめると、

・IDを確認するためのアプリ設定
・有効な納税者カード
・PDFファイルを編集できるアプリ
・サインのデジタル化
・賃貸の契約書PDF化
・昨年の所得証明
・本人を証明できる正式な銀行の口座番号


その締切が、メールを受け取ってから1ヶ月後の、11/11の日付が変わる前まで。直前になって取り掛かるのはいつものことだが、3日前にやっと開始した。

夫はパソコン作業は滅法弱いので、私が行うの。だが、イタリア語で書かれた行政の書類は、まだ完璧に理解できないので、そこは夫の助けが必要となる。なのに、前日にケンカしたから少し気まづい。でもやらないといけない。。。


いざ、作業へ  

[残り5時間]


必要な書類を揃える

まずは賃貸の契約書は、書類しかないので写真を撮って、パソコンで修正し3枚を一つのPDFにした。このやり方も知らないので、ネットで検索して形になった。

次に所得証明は、メールで送られてきているので、ダウンロードして名前を変更した。

銀行の口座番号は、夫の銀行アプリから入ろうとしたが、パスワードを何度も間違えて「しばらく開きません」と表示が出た。マズイ。とりあえずこの作業は保留。

一応、これらで挑戦!


サイトへGO!
[残り48時間]

パソコンを開いて、例のメールを開く。PDFに書かれた説明に目を通す。はいはい。なんとなく理解。

で、どこからその申請ページへ行くの?

またPDFの説明を見る。市役所のサイトに戻り、申請専用ページへ。(この時点で右往左往)

ページにたどり着いたら、ID確認アプリで解錠成功。これは、かつて使っていたので楽だったが、これを一から行う人にとっては1時間以上を要する面倒な工程だろう。

申請専用ページに内に入ると、書類と同じ画面になり、矢印に従っていく。すると、応募フォームが現れダウンロードした。

ここで夫の出番だ!が、さっき出かけていていない。冷たいあしらいに逃げたのだろうか。ここで中断するはめに。

ムムム。
仕方がないので、この申請に係る書類全てを、デジタルで申請するにも関わらず印刷した。これで二度手間になるまい。鼻息がだんだん荒くなっていく。

夕方、帰ってきた夫に応募フォームの印刷物を渡し、埋めるように伝えた。(ケンカ後なので、対応はかなり冷めている)


続きは翌日の朝
[残り38時間]


この時点で、締め切りがあと15時間後だと勘違いしているから焦っている。


夫が隣で、紙に書いた応募フォームを見ながら、サイトに入力していく。チェック項目を慎重に選んで、備考を頼りに埋めていく。

すると、家の広さを記入する項目で、どこに書いてあるか分からない。家の契約書にはなぜか書いていない。ではどこで見るべきか…。どこかで見たような…絞り出して考えると、電気代のところに書いてた!と思い電気の契約書を見てみるとあった。はい、記入。

続いて、例の銀行の口座。未だアプリは開かない。夫は、これまたどこかに紙で印刷していたはずだと、大事な書類棚の中から探す。もう机の上は書類で溢れている。その中からいくつも出てきたが、正式にな書類が見つかったので、写真からPDFに変換。

フ〜。まだまだ。

昨年の、所得の全額を記入する項目は、書類のどこに書いてあるかをじっくり見ないと、どれがそのら数字が一目で分からない。この手の書類は、イタリア人らしからぬ、分かりにくいデザインだ。いつになったら改良されるのだろう。そんなことはさておき、夫は2つの会社で働いていたので、これとあれとを足して、合計は… おそらくこれダ!という数字を見つけて記入。ヨシッ。

選択する項目では、必須じゃないけれど、該当するのではと一生懸命読むが、当てはまらないので先に行こうとするも、これでいいのかと何度も立ち止まる。こんな時のお役所言葉は、イタリアでも理解しにくい。まどろっこしい説明は、どの国でも同じようだ。でも、雑には扱えないのには理由がある。

というのも、説明書に、

間違いや、不足の資料があった場合でも、
こちらから要求することはありません。

と、冷たい一言が書かれていた。とにかく不備なく揃え提出しなければ、家賃の補助金を受け取ることはできない。焦りつつも、仕事へ行く時間が迫り、昼食も食べずに家を後にした。


最後のチャンス!?
[残り30時間]


今日提出するんだ!と、3時過ぎに勢いよく帰ってきたが、肝心な夫がいない。何度連絡しても繋がらない。申請専用サイトの中に入れない。提出ができない!悶々…家を掃除しようにも手がつかない。とりあえず、夜の仕事のために休む。

夕方、夫はまだ連絡がつかない。ケンカの怒りが蒸し返したか。無視されているのか。苛立ちを抑えながら、メッセージを送る。「あなたが帰ってくるタイミングで、私も職場から駆けつけるから、残り時間で作業をしてしまおう!」

いざ、仕事へ。オーナーに事の説明をして、夫の連絡を待った。すると、


「今、僕はバンド仲間とライブを見に来ているんだ。いつ帰れるか分からない。」と…

ハァ⁉︎

もうここまで来たら、笑うしかない。今夜の仕事は、いつ終わるか検討つかない。間に合ったら間に合った時だ。残念ながらこれが現実。ギリギリに対処するのがいけないのだ。


この一部始終を見ていた同僚が、市の補助金って誰でも受けられるの?と聴くので、市役所のサイトを見せた。すると彼女は「締め切りは明日の夜って書いてるよ!」ええッ!?

焦っていた今まではなんだったのか。。。

気を取り直して、夫に連絡。「OK!今、仲間に笑える小咄している!」って返事がきた。あなたはどこまでいってもイタリア人ね!

そして、この夜は作業せず寝た。


ラストスパート
[残り15時間]

早朝から起き、夫と揃って作業に入る。資料を確認しながら、応募フォームを入念に確認、もうあとは全ての資料を添付するだけというところになった。とは言え、この時点で1時間半は過ぎていた。

夫は身支度をしだし、外出してくると。すぐ戻ってくるらか!と言いながら、帰ってこないのがいつもこと。まぁいいやと進める。


再び、つまづいた。

家族の大黒柱であることを証明するPDFの書類を編集しなければならない。そこで説明書に書いていたのが、「Adobe Acrobat Reader」をダウンロードせよと。アプリを取り、作業を進めると、「編集するには、アカウントを登録が必要です。7日間の無料はコチラ」と勧めてくる。
どんなに避けても通れないので、お試しを登録する以外の選択肢はない。嫌々クレジットカードの番号を入れて登録完了。やっと、PDFの編集画面に切り替わった。

簡単な編集だが、夫がスペルを間違っていた。そこに気づいた私はエライ!その横に数字が書いてある。なんだろう?と思い夫に連絡。そしたら「そこに何を書けばいいのか分からなくて」と。確かに、解釈の仕方で書き方が変わる。ならばと、ネットで同じ文章を調べる。すると、夫の名前を書く欄と分かった。再び連絡し納得していた。

そして最後に、書類に直筆のサインをする項目。アプリ内でにはデジタルサインを入力することができるようだ。が、またも肝心な時に夫は出掛けて帰ってこない。

また、ランチ営業の時間が近づいてくる。夫に連絡しようと思ったその時、紙の資料に、直筆でサインをしてあったのを発見!写真を撮って、写真加工アプリ Pixlr.comで綺麗に仕上げ、書類に貼り付けた。これでもう完璧!


全て揃ったところで、あとは提出画面へ全てを添付するのみ!

夫に連絡。市の提出サイトへ入るために、IDアプリを再度起動しなければならない。電話の向こうで解錠するよう指示。手こずっているのが分かる。兎に角、パスワードを入れて!冷静に!と裁判官の「静粛に!」の具合で伝える。ぶつぶつ言いながらしているのが伝わる。私はその何倍もぶつかっては進んでを繰り返しているんだょ!という感情をぐっとこらえて、待っていると、やっと専用ページに入れた。そこから、全ての書類を各項目へ当てはめていく。

夫には、電話を切らず聴いて待つように頼んだで、私は全ての項目を読み上げていく。次々にチェック項目の赤色が消え、最終画面にたどり着くことができた。

最後に、領収書を受け取り、無事、任務完了!!!!!!


締め切りより、12時間前に作業を終えることができた。そして、Adobeの無料体験も解除し、あとは市役所からの連絡を待つのみ。

パソコン作業が得意だと自負する私でも、てんてこ舞いぶり。イタリアに住む、低所得者の中にはパソコンを持っていない人、加工ができない人、そもそも読解力がない人など、IT弱者は少ないくない。その人たちはできたのだろうか。もちろん、窓口も設置されていたが、今日は大混雑になっただろう。

またもや、MacBook Pro を買った甲斐があったことを実感。あなたじゃなきゃできなかったと、今日は、撫でてこのパソコンを閉じることにする。


追記
その後、この苦労虚しく補助金をもらえることはなかった。書類の不備か、他の点かは誰も教えてくれない。おそらく、僅かながらの投資信託があるからだろう。あれを手放さないともらえないのか。なら、稼ぐしかない。頑張れ私たち!

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