見出し画像

イタリアで陶芸体験


ある日、いきなり友達から、「今日空いてる? 5時にこの場所に来て。」と連絡がありました。そこへ行ってみると、大理石でできた重厚な建物。巨大な扉を開けて足を踏み入れると、吹き抜ける玄関ホールは街の喧騒を遮る静けさでした。

声が聴こえる方へ向かっていくと、そこは地下1階。地下といっても暗室ではなく、庭があり、少しの陽が差し込んでいます。要塞のお堀に面していて、明るい空間です。元々この街は、地下一階部分に街があったのですが、年々水位が上がってきたことで、街を嵩上げた過去があったようです。よって、私が訪れたのはかつて街があったあたりです。

友だちはそこで、ある年配の男性と話をしていました。そして何かを作っている様子。挨拶をして、紹介されたこの男性は、陶芸の先生でここはアトリエでした。

70代の先生は、「楽焼」という日本の陶芸に夢中になり、器や花器はさることながら、彫刻の作品も数多く作成してきたようです。書斎のように壁一面の本と資料が並び、所々に作品が並んでいます。日本でも勉強し、茶器や釉薬の色使い、土の特徴など、長く研究を行っています。

私の友だちはというも、彼女もアーティスト。画家として、日本女性について学び、和服姿の芸妓や舞妓など、数々の絵画を発表してきました。今回は久しぶりに彫刻に挑戦するということで、陶芸用の土を買ったようです。多くの土が届いたので、せっかくだから一緒に何かを作ろうとサプライズしてくれました。
彼女の目的は、同じ時間を一緒に過ごすことと、日本人である私の顔を見本にするためでした。彼女は「若い日本女性」の頭像を作っていました。

一方で私は、陶芸はほぼ初めてで、何を作って良いか分からず、先生に言われるがまま器を作りました。ろくろは壊れて使えないので、型を使い、手で少しずつ形成する方法を教わりました。

それから毎週通うようになり、私の趣味になっていきました。

形ができたら、土の表面を平らにする工程。私の几帳面さは、先生には興味深く映ったらしく、木ベラや石を使ってどうやってここまでツルツルにしたのか、どれだけ忍耐があるのかと驚かれました。

二ヶ月後、

器と湯呑みを二つずつ作成。友人も一つの頭像を作り終えましま。まだ土が余っているので、一緒に同じ題材に挑戦することに。
先生のお気に入りである、日本人の陶芸家の本から、直感でいいと思った、「巻貝の器」を作ることにしました。

私は先生の手解きを受けながら、友だちは学んだことを活かし、勢いよく作業に入ります。黙々と作り続ける私たち。何週にも渡って、形成と修正を繰り返し、ついに焼きを入れることになりました。

先生が所有する電気釜に一部を入れ、もう半分を楽焼という方法で釉薬をつけたり、色をつけたりしました。この時、仕事で参加できなかったので、先生にお願いしました。こうして、できあがったのがこちら

自分にはない色合いで、先生とのコラボが実現しました。



今度は、一度電気釜で焼いた器の色付けです。こちらが巻き貝。白色でもいい感じですが、色を塗ってみることにしました。

右側が親友。頭像を作っています。
左は若い女の子。「手」を作り、
中心に電球を置くようにデザインしています。
その後ろには、先生と若い男の子。
みんなで和気藹々と作りました。



巻き貝のほか、器にはとんぼ玉のカケラを入れてみました。しばらく乾かして再び電気釜で最後の焼きを入れます。さて、どんな色になるか緊張の瞬間…


タターン‼︎


巻き貝はもっと鮮やかな青を想像していましたが、海の色を想像できるかな
上から見た器。水色はとんぼ玉のカケラ
一部焦げてしまいました。
黄色もくすんだ色になっています。
イメージと違うけど、これも経験ですね。
右側の緑は、日本らしい色合い。庭にあった笹で型をとり、色も淡くつけてみました。



ということで、イタリアで陶芸を行いました。
「楽焼」という文化を知らなかったので、一から学んでみたいです。踏み入れない方がいい一歩かもしれません。奥が深く簡単に抜け出せなくなりそうな予感が。

できれば、シンプルな白いお皿や器などを作りたいのですが、先生は日本らしい作品を見たいのか、日本人が作るような器を目指しているのか、面白みがないとさせてくれません。好みが違うんですよね。
お互いに歩み寄って、好きなものを作るか、作品なるものを作るか… 先生は私の才能を見抜いているのか⁈ なんて前向きに捉えてみたり。どんなものを使いたいのかしばらく考えてみようと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?