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【イタリア】店員が見たワクチンパスポートの現実

導入から一週間経ち、お客さんの所有率が判明。
常連の人たちは意外にも、みんな持っていない⁉︎

そんな中、予想通り「偽物パス」が広まった。

チェックする側の立場として、
これまで見てきた人やその反応を記録していく。



「グリーンパス」というワクチンパスポート


2021年の初夏、
イタリア政府は、他のヨーロッパ諸国に準じて、
ワクチンパスポートである
「グリーンパス」の導入を早々に決めた。

これにより、ヨーロッパ内の観光や就労を、
安全に行うことができると発表。

当時のイタリアは、まだ高齢者のみが接種したくらいで、
40代以上のワクチン接種の予約受付が始まったばかり。
外国人に対し、旅行を受け入れる体制をアピールした。


しかし、持っていない人たちから、不安や不満の声が上がった。
本格的な夏休みを前に、
接種をしていない子育て世代や若者は、
帰省や旅行に行けるのか否か、旅行先で打つのかなど、
半信半疑の中、それでも旅の準備を進めていた。


所有者の条件


パスを持てる人は、

■ ワクチン接種者
   ・必要回数終了した人
   ・または、1回目を受けて15日経過した人
   ・感染から復帰し6ヶ月が経過した人

■ 検査陰性証明
   ・48時間以内に行った、陰性結果の証明になる。

これを所持していれば、
国境を越えて帰ってきた際に、
自己隔離の免除や緩和の対象となる。



7月末、街を見ていると、急に外国人観光客や
外国ナンバーの車が増えたと実感した。
豪華客船の出入港や、大きなスーツケースやバックパックを持った、
外国語を話すグループを頻繁に見かけるようになった。

いち早くグリーンパスを手にした人たちが、
気兼ねなく念願の旅をしている。 



所有者の行動範囲


一度でも接種を完了した人は、
QRコードが送られ、スマホで提示するか、印刷し所持しておく。
それをチェックする側は、スマホの専用QRコードリーダーで、
一人ずつ読み込んで、名前や接種日付を軽く見る。



パスが必要な場所

長距離の移動
  空港、高速列車、高速バス、フェリー

商業施設
  レストランやカフェなどの飲食店の屋内席
  結婚式、映画館、美術館、劇場、イベントやフェス映画館、
  スポーツ大会、ジム、テーマパーク、スパ、カジノなど

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パス発行前に行ったスパ施設


必要がない場所

地域の電車、地域のトラム、地下鉄、
飲食店以外の商店など


生活する上での、最低限は守られているが、
娯楽や運動施設、大人数が集まる場所では
所持が必要となっている。
もし持たず入場すれば、当事者だけでなく
店や施設側も日本円で約5万〜13万円相当の罰金となる。


パスポート導入発表以降、
ワクチン接種は進んでいき、
8月上旬には、20代の若者でも完了者は増えた。


イタリアでは、12歳以上が接種可能で、
教育施設では、教師や学校関係者の接種必須となっている。



反対者の意見


グリーンパスに異議を唱える人は少なくない。
導入する直前まで、反対デモや抗議が
イタリア全土、ないしはヨーロッパ各地で行われた。

彼らの意見は、

・接種をするかどうかは、個人の自由であること。
・パスは、差別や偏見につながる。
・ワクチンは危険だ!  など



ドラギ首相は、元欧州銀行総裁を勤め景気回復に尽力した強者。
経済を回すことを優先していることを、就任当初から感じられた。
昨年のコロナ禍で舵をとった前首相とは全く違う姿勢を示し、
反感を抱く人も少なくない。



時事通信の記事によると、

ドラギ首相は、「経済活動を続けるために不可欠だ」と強調。導入に反対する一部野党を「ワクチンを接種しないよう呼び掛けるのは、死ぬように呼び掛けるのと同じだ」と非難した。



運用開始!店先の様子レポ

8月6日(金)、
反対デモをよそに、グリーンパス導入となった。
勤めている、日本食レストランでも、
オーナーから、専用のQRコードリーダーのアプリを
ダウンロードするように言われ、チェックしたところ、
機能していることを確認した。


そして、お客さんがやってきた。


レストランは、昼と夜の営業を行っている。
昼は、暑さから屋外席は設けていないが、
所有していない人を考慮して、数席用意した。

そこに来たのは、常連客。
「グリーンパスを持っていますか?」との問いに、
「ないから、外で食べたい」とのことだった。

内心、あっ、この人も持っていないんだ…と思った。

そして次に来た人は、持っているけど、外で食べたいと。
次々に、これまでなかった屋外席に座る人が増え、
連日店内で食べる人は数席のみという状態。
暑くても開放的で見られることが好きなイタリア人。
クーラーの涼しさより外がいいようだ。


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夜になると、利用者がドッと増える。
初めてQRコードリーダーを使う時がやってきた。



証明は100%ではない


あらかじめ予約をしていてたカップル。
スーツとエレガントなワンピースを纏ってやってきた。
所有の問いに、「もちろん」とスマホを提示してくれた。
チェックすると、男性はすんなり。しかし女性のものは、

「有効ではない」

と表示され、お客さんも私も凍りついた。。。



接種は7月に終え、特に問題なく過ごせていたが、
保健省から受け取ったコードに、何らかの問題があると考えられる。

とりあえず、屋外席が空いていたので、
そこを案内し一応は落ち着いた。


実は、こんな人が、彼女だけでなく、
後日もう一人、現れた。
その人は、衝撃を隠すことができず落ち込んだ様子。


なぜ「有効でない」が存在するかネットで調べると、
ワクチン接種場所や、ワクチンのタイプ、
感染回復からの経過など、
なんらかのアルゴリズムから
弾かれたという考え方があるようだ。


まだ謎に包まれた新機能は、
実際に摂取していても、「有効でない」と表示される。
QRに従うのか、紙の摂取証明書を採用するべきか。
オーナーは、店内での飲食許可を出した。



このパスが目に入らぬか!


所有者は、堂々とした態度で、パスを出してくる。
それはまるで、水戸光圀公の葵の御紋のよう。
だが、チェックする私は「はは〜ッ」とはならない。

ただ、持っている人は、”無敵”と勘違いしている人が多い。


イタリアでは、屋外のマスク着用義務が解除され、屋内だけになった。

アフリカ大陸からやってくる熱波の影響で、
信じられない暑さを叩きつける真夏に、
屋外は外せることは幸いだった。


しかし摂取者は、違う。
「ワクチン打っているから!」と言い訳をし、
マスクをせずに入ってくる。


変異株を知らないのか、死んでもいいのか、
無鉄砲に行動する接種者が目にあまる。



偽物のパス闇販売

予想していた通り、偽物が出回った。
しかも、有料で

パスは、QRコードなので、
スマホにスクショを撮っておけば簡単に出せる。
一つの写真と同じような扱いになるのだから、
友だちと共有することも実は容易。

チェックする側は、
読み込みはするが、身分証明と照らし合わせて確認するまではしないし、
そこまでチェックする時間も余裕も、
はたまた、疑うようで度胸もない。


偽物が出ても仕方がないとは思ったが、
コレをビジネス? 詐欺?に使おうと考えた輩がいた。
ネットで偽の証明書を販売したようだ。

軽いものなら、ローマのある街の薬局で
€5で偽物を販売した。

悲惨なものは、
偽物を作った上に、個人情報を盗まれたとか。
料金も€100以上。
容疑者も特定されたというから、
警察の仕事も早かったと言えそうだが、
詐欺集団は日々増加しているようで、
偽物証明を見つけ出すのは至難の業だろう。



屋外席だけループ


「席は空いてる?」と尋ねてくる常連のお客さんに、
パスを所持しているかどうか尋ねると、
半分は接種していないように見受けられる。

4人のグループで、一人は摂取していない程度。

こうなると、お店は屋外席だけが満席になる。

食事の時間も、19:30から23:30までの
幅広い時間帯でどんどん入って来くる。


外の席を設けていないお店は、
経営が厳しくなることだろう。
当店では、さらにスペースを拡大したいと、
市に依頼しているがまだ返事はない。
このままでは、各店売り上げがマイナスになっていく。

首相の考える、景気回復強行は、
まだ市民の声が届いておらず、
いつかパンクすることになるだろう。


非接種者を追い詰める政府


さらに新たな決断を下した。
当初8月末までの予定で始まったグリーンパスは、
2021年の12月31日まで延長を発表した。

学校施設は、対面授業にもどる意向。
長時間の移動をする公共交通機関と、
スポーツイベントにパスの所有が必須となる。


教師の声

常連のお客さんの中に、ワクチン接種を反対する先生がいる。
「僕たちは行動しているので、必ず変わる時が来ると。」
「子どもを産むことを考えるなら、なおさら受けないで」と忠告してくる。

この人の発言もあり、ワクチンの予約はしたが、
未だ躊躇している。
まだ、納得のいく答えが見出せていない。


妊婦の声

また、先日来た妊婦さんも、摂取していないとのこと。
他の妊婦さんも半々で、病院側も提示は義務付けていないので、
今のところ診察は可能。
最新のニュースでは、妊娠・授乳期間中でも問題ないと、
アメリカの結果を伝えている。
この記事しか見当たらないことも少し不安の要素だが…。




日本での導入


7月末から、日本でもワクチンパスポートの発行受付が始まった。
しかし、「海外渡航予定者」のみ。

国内で使うには、まだ体制が整っていない。

時短営業となっているお店や施設は、
パスポートにより利益が増える可能性は大いにある。
反面、病院や老健施設では、たとえ所持していても
新たな変異株への恐怖を増幅させるだけのものになるかもしれない。


今、日本で必要なのは、

・偽物や詐欺が出てくることを念頭に置いて、
 騙されないように注意をすること。

・生活のために必要な立場ならば、常に情報を追いかけること。

・スポーツや学校関連は、必須になり得る。

・飲食店は、屋外席の確保、または拡大すること。

などが言えるだろうか。



バカンス時期に暮らしづらいが、
それぞれの行きたい道を進めばいいと思う。

私は屋外でも、なるべくマスクを着用し、人混みを避けている。
積極的に外出もしないし、(暑いのもあるが)
独自に人に迷惑をかけないよう行動している。

これが年末まで続くとなると億劫だが、
もう少し考え続けてみよう。


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