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【22年1月分】 豪華客船座礁事件とグッチ映画


イタリアにおける新型コロナウイルスの状況


オミクロン株の威力

11月の末に、最初のオミクロン株の患者が報告され、二週間後には2万人に増えた…。その一ヶ月後に控えていたのが、イタリアの年間行事の中で、最も重要なクリスマス。2020年は、政府の外出制限の規制により、家族全員で会うことはできないほど厳しかった。今年も寂しいクリスマスになるかと思いきや、特に指示は出なかった。前年より、一日の感染者は倍の3万人と多いが、死者数が少ないことと、ワクチンを接種が進んだことなどから規制が出なかったと考えられる。

よって今年は、クリスマスだけでなく年末年始にかけて、家族や友だちと過ごす人たちが多くいた。中には、集合する前に検査を受けて、「陰性である」ことを知った上で参加したとか。

検査場は、街の至る所にある「薬局店」で行うことができる。日本でいうドラックストアのようなものではなく、薬を主に扱う小ぢんまりとした商店の店先や屋外テントで行っている。

今年に入って、どこもかしこも行列。早朝から20人が並ぶ光景はもう珍しくなくなった。現在でも、1日に約100万人が検査をしている。検査している人が増えるから、感染が明らかになった人の数も同じように増えている。

OA当時、一日の新規感染者数が、1月に入り二年間の記録を抜き破り、20万人を超えた。一日の死亡者数も、今月急に上昇し、400人代まで達した。
(書いている2/2付では、感染者数は約13万人にまで下がったが、死亡者数は横ばい。)

ワクチンの摂取率は、
1回受けた人は、83%
必要回数完了した人は、76%
ブースター接種は46%。


ウイルスが目の前に

年末年始に、身近な人たちが感染していると明らかになった。あの人も!この人も⁉︎と周りにどんどん増えてくる。夫の友だちの中には、入院し、鼻からチューブを通しながら年越しをした人も。その病室にいるのが友だち同士だから、なんだか楽しそうに見えるのはイタリアらしい。陽気な人はどこまでも明るい。しかし、残念ながら音楽仲間の一人がこの世を後にした。この友だちらはみな、ワクチンを打っていなかった
反対し続けていた夫だが、仕事上でどうしても必要となり接種。その直後に、友だちのこの状況を知ったので、ギリギリだったとゾッとしていた。

イタリアでは、仕事をしている人は、接種をしないと働けない状況に置かれている。接種証明を持っていない人は、出勤できず給料も払われない。しかし、自営業や年金受給者は、ワクチンを打たなくてもなんとか暮らしていける。そんな人たちが、感染しては入院していると考えられる…
そしてついに、政府は踏み切った。「50歳以上の人にワクチンを接種義務」とした。違反者は罰金の対象になるとか。

経済的な麻痺を、実際に感じることはないが、濃厚接触者の隔離生活をしている人は増えた。また、期間がどんどん短縮され、3回目を接種した人は、必要期間を過ごしたのち、検査を受け陰性かどうか調べなくとも仕事復帰できるようだ。

さらに、幼稚園や学校に通う子どもたちやその親は毎日ハラハラ。クラスの中で、数人から半分が隔離生活に入ることも珍しくない。授業において、学校毎やクラス毎においても格差が出てしまうかもしれない。親の中には、自宅で仕事を再開した人もいるが、そうでない人は切羽詰まっている状況だ。明日はどうなるのか?と思いながら暮らしていると言える。その子どもたちに対し政府は、5ー11歳へのワクチン接種を開始した。


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コンコルディア座礁事件から10年


1月になると、イタリアでも毎年思い出させる出来事がある。2012年1月13日夜に発生した、「コスタ・コンコルディア座礁事件」。豪華客船が座礁したニュースは、世界中で報道された。なんと、あれから今年で10年の節目を迎えた。乗客乗員合わせて4299人のうち、負傷者60名、死者32名を出した。



事故の原因が…


ジリオ島の近くを通り、島民に挨拶することが恒例になっていた。その島には、かつて供に働いた船の同僚が暮らしていたとか。会社側は勝手に進路変更していたことを知らなかった。そしてこの日は近づきすぎて、船を損傷。その後、座礁したというわけだ。幸いにも、浅瀬に乗り上げたので、半分が沈むだけに終わった。だが船長は、一目散に対岸へと逃げたが、指示され船に戻った。
後に船長が、「懸命に救命行動を取っていた」と擁護した女性が現れた。しかしこの人は、乗客名簿に名前もなければタダで乗っていたという。なんと船長の愛人だったということが発覚。どこまでお粗末な人なんだ。
軽はずみな行動により被害者や死者が出ただけでなく、保険金・損害賠償・撤去作業など何千億もの被害総額となり、前代未聞の事故になった。

一連のことにより、最後退船義務を無視したことで、過失致死などの罪で16年の有罪判決。現在もローマの収容所にいる。


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イタリア人ショック!『ハウス・オブ・グッチ』は偽物⁉︎


イタリアでは2021年に公開された『ハウス・オブ・グッチ』について。この映画を見たイタリア人の感想が意外すぎた。

映画の内容

貧しい家庭出身だが野心的なパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、イタリアで最も裕福で格式高いグッチ家の後継者の一人であるマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)をその知性と美貌で魅了し、やがて結婚する。しかし、次第に彼女は一族の権力争いまで操り、強大なファッションブランドを支配しようとする。順風満帆だったふたりの結婚生活に陰りが見え始めた時、パトリツィアは破滅的な結果を招く危険な道を歩み始める…。

映画公式サイトより


イタリア人は、この映画をどう捉えているのか

1月初旬にシネコンへ観に行ったら、大きな空間に集ったのはなんと、たったの6人!もちろん、新型コロナウイルスの感染を恐れて、来場者が少ないこともあるだろうが、そもそもこの映画に興味を持っていないのかもしれないと感じた。調べていくと3点が浮かび上がった。


イタリア人のショックベスト3
【その一、イタリアの俳優がいない!】

そもそもこの映画は、アメリカ人によって作られた。
レディガガやアルパチーノは、イタリア系アメリカ人。「グッチ」はイタリアのブランドなのに、イタリア人俳優が一人もいない!!!!!
もう、この時点でイタリア人からしたら、横目で見ている…

逆にいうと、アメリカだからできた作品とも言える。イタリアで、大企業のスキャンダルを描き切れる根性のある人はどこにいるだろうか。また、俳優陣も、グッチのファッションショーなら喜んで参加するが、腫れ物に触れるような事件に携わりたくないと思うのが本音だろう。



イタリア人のショックベスト3
【その2、ヘンな訛り】


2021年の暮れの公開に向け、予告編が各メディアで流れた。ほんの数分見た人が次々に耳を疑った。その理由とは…

「役者たちの英語が、変な訛り!イタリア人の英語じゃない!

レディガガを含む俳優らは、いつもの英語ではなく、少し訛りを加えて "イタリアっぽさ" を表現したが、実際には「ソビエトやロシアの訛り」になっていたようだ。この予告編を見た人が次々に「がっかり!」というコメントを残している!もう、これは残念の極み!さらに映画への関心が薄れていったどころか、嫌気が差している。

確かに、関西に近い私も、関東の人が関西弁を話す役に違和感を覚えることはある。似たようなことは、お国言葉を持っている人それぞれが一度は感じたことがあるだろう。それと同じで、イタリア人からすると、この耳障りな言葉により、作品に入り込めなかった人も少なくなかったようだ。

とは言いつつも、
イタリアでは映画は、吹き替えで見ると言うのが一般的!オイオイ!とツッコミを入れたくなるだろう。字幕で見るという習慣があまりないので、俳優の本当の声を知らないと言うこともざら。イタリア人は、ジョージクルーニーの甘く低い声も、ジュリアロバーツの声のトーンも知らずに作品を見ている。

イタリアのインフルエンサーの中には、「吹き替えの技術が高いから、字幕なんか見ちゃダメよ!」と。私は字幕で観たいし、本人が語る英語で聞きたい。そんな人たちは、数少ないシネコンを探して、わざわざ観に行く必要がある。



イタリア人のショックベスト3
【その三、創造で描かれたイタリア人像】


アメリカから、イタリア以外の国の人に向けて作られた映画と考えるべきだろうか。イタリアにまつわるイメージで作られているように見える。

イタリア人からしたら、もっとグッチのブランドの力強さや女性の活躍、服の美しさを表現してほしかった!と言う人もいた。また、「そんな風な仕草はしない」という、動作、ジョスチャーなどが過剰だったり、事実とはかけ離れているという声もあった。


イタリアに住む、一外国人として感じたことがあった。約9年イタリアに住んでいるが、動きについての違和感はあまり感じられなかった。だから、私はまだイタリアの暮らしに浸かりきっていないそっち側なのだろう。

だけれども、私だから感じたのは、
イタリア人たちはこの映画から、差別的な感情を抱いているのではと端から見えた。わざとらしい言葉の訛りや過度な表現に、世界中に「イタリア人って…」ということを、密かに広めた映画にもなったのかもしれないと。


イタリア人の映画を見た感想は、

  • 音楽が良かった!

  • 長すぎる

  • こんな内容だから、キャストが豪華なのね

  • グッチが哀れに描かれている  など

あまり良い意見がなかったのも事実。この事件自体楽しいものではないし、内容を知っているから、わざわざ映画館へ見に行かなくてもいいと思ったのかもしれない。

その後のパトリツィア
イタリアでは、犯罪の犯人が、後々マスコミ出演し、当時の様子を語ると言う、番組はよくある。例の如く、彼女もその一人として、ディスカバリーチャンネルのインタビューに答えていた。出獄し72歳になった時だ。

その中で、彼女は、心神耗弱状態だったと主張していたこともあり、刑務所の中で特別優遇を受けていた。ペットを飼っていた。それもフェレット!お庭に出て日光浴をしていたとか。弁護士は、刑務所を出て働ける仕事を見つけてきたが、彼女は拒否し、刑務所内の植物の世話係を申し出た。そして釈放されたのは、2017年2月。結局求刑は26年だったが17年に短縮された。
刑務所は彼女を更生するどころか、刑務所を変えさせた。

現在は、彼女の資産管理を手助けする人たちに見守られ、ミラノで静かに暮らしているようだ。


その後グッチは、家族経営ではなく今に至っている。この手のトラブルは、あらゆる企業で起こっていることだろう。しかし、これまでの事件に発展するのは、グッチ以上にない。


OAでは触れていないが、準備していた話がある。
他のブランドでも気になる事件があった。

ムッソリーニ消息事件
  父親から経営を任されていたヴィットーリオは、妻と友人夫婦と
  バカンスに出かけたが、その後飛行機が消息不明となった。
  後日海中で見つかった。事件性はなかったということになっている。

ヴェルサーチェ殺人事件
  デザイナーであり創業者であるヴェルサーチェーは、
  マイアミにある別荘の前で、殺人キラーによって殺害された。
  こちらは経営とは関係なく、交友関係における嫉妬や憎しみが
  引き金となり事件となった。
  アメリカではドラマになった。その役をガガが演じると噂されたが、
  ペネロペクルスになった。


有名ブランドは、何かしらあるものなのかもしれない。だが、どのブランドも、そんな事件や事故とは関係なく、ブランドとしての地位を保っている。それは世界中で変わらず、支持を得ているから分かるだろう。
イタリア人の友人は、ブランドの中でも特にグッチが好きだとか。彼女にとってどんな存在なのか、何に魅力を感じるのか、あの事件についてどう思っているのか、今度取材してみよう。

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