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【帰国日記】器に惚れた 〜伊万里風か〜


松山の旅へ行った際のできごと。 

風情ある街を歩きました。


松山城へ登るロープウェーの麓に、

バリアフリーに整備された道があります。

名前はそのまま「ロープウェー商店街」と言い、

大街道という繁華街から抜け、乗り口までの全長500m。

道の両側には飲食店や本屋や雑貨屋などが並んでいます。

坊ちゃんや子規によって、レトロな風情を再現する松山は、

この通りでも、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。




松山は砥部焼を代表するように、陶器も有名です。

通りにはいくつもの骨董屋がありました。

その一つに、「ここ入ってみよう!」と

思わせるお店がありました。

「青蛾」という小ぢんまりとした中に、

骨董や着物、絵画などが所ぜましと並んでいます。

店主は白髪のセンター分けのおじさん。

ボーダーの服を着て目がくりくり。

興味津々そうにこちらを見ていました。

先輩や友だち四人で入ったからお店はすぐ満杯。

通路を歩く時に、引っ掛けないかと気にかけながら

真剣に物色しました。

しかし、時間がなくなってきたので、一度お店を出ました。

次の予定を済ませて、そろそろ松山を出ようと考えていた時、

一緒に旅していた先輩に質問、

「さっきのお店と、おっちのお店どっちに行きたい?」

間髪入れずに「さっき!」とそそくさと歩き出しました。

再び訪れると店主はまたまんまるな目で見ています。

ラジオの音を下げたかと思うと、フランス語が聴こえてきました。

いつか、フランスに買い付けに行きたいんだとか。

日本の古美術だけでなく、海外の宗教にまつわる物や

道具を扱うほど、店内に魅力がぎっしり詰まっています。


今度は二人だけなので、椅子にジャケットや鞄を置き、

身軽な体勢で腕まくりなんかして物色開始!


写真なんてありません。それどころでないんです。

たくさん積んである中からお宝を探すんです。

画家の友だちに、和柄のものを頼まれていたことを思い出し

着物を見るも、大きすぎて持って帰れない。



入り口の下の埃まみれのコーナーには、

「明治時代のもの」という文句だけで心躍る。

不揃いの豆皿があり、手に取って、柄を見ながら

どれかを買って帰りたいと欲望が出てきました。


ですが、イタリアの家に丸いお皿はたくさんある。

四角や花形がないか探すもピンとこない…
 

物色していると、どうも呼ばれているような器がありました。

求めていた伊万里のような柄です。

有田焼かもしれません。

他のものを見て回っても、やっぱりそれを手に取りたがる。

もうこれしかない。


骨董屋で買い物なんて、人生で初めてのこと。

歴史を重ねてきたものを買うだなんて、

少し緊張しましたが、これも松山の思い出にと

買うことにしました。

それがこちら

左側から

小さなぐい呑み。お酒は飲みませんが

料理用に小鉢として使える。

艶があり新品そうなので、古伊万里ではないはず。

右側から

少し雑な絵に、そんなに高価なものではないだろうと予測。

おじさんにいくらか聴くと、

一つ、1500円でした。

我が家は夫と二人暮らしなので、なんでも二つ揃えたい。

エイッ‼︎ と二つ買いました。


眺めていると、どこから来た何なのか気になってきました。

GoogleやPinterestで画像検索をかけました。

何も引っかかりません。

似たような器も何か違う。

こんな値段だし、本物ではない。


裏に書いてある文字から分かるかな?

私には「夾化甲衣」と書いてあるように見える。

で、調べてみると、何も出てこない。

出身地の判断もしづらい。


そして、結局諦めました。

ぃゃ、これで良かったのかもしれません。

ブランドや名前にこだわりステイタスを重視しがち。

本来の器としての楽しみ方を堪能するなら、

どこの何よりも、松山のボーダーを着た店主の所で、

古風な器を「記念に買った」という方が物語になる。

これを使うたびに思い出すし、おもてなしで

旅の小話を入れることもできる。

そっちの方が値段以上の価値があり、有意義かもしれない。

これが骨董の楽しみの一つなのか。

他人にとってどうでもいいものに感じるかもしれないが、

私にとっては、最高の一杯を手に入れた。

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