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バイオリンは何で作られているか

バイオリンは何で作られているかと問われると、ほとんどの人が「木」と簡潔に答えられるでしょうが、どんな種類の「木」なのかと言われるとはっきりとは知らない人が多いのではないでしょうか。

今回はこのバイオリン製作に使用される「木」についてお話していきたいと思います。

美しい木材

バイオリン本体には主に2種類の木材が使用されています。

それは
メイプル 【英】maple 【伊】acero
スプルス 【英】spruce 【伊】abete rosso

です。

その中でも表板とバスバーがスプルスで、裏板・横板・ネックはメイプルで出来ていますから、バイオリンはほとんどメイプルで出来ていると言えます。

バイオリン各部名称 印

メイプルは日本語で言うところの「楓」になりますが、よく公園や神社仏閣にあるようなイロハモミジではありません。

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イロハモミジ

どちらかと言うとカナダの国旗になっているサトウカエデのような、成熟すると20〜30mにも達する大きな樹のセイヨウカジカエデです。

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セイヨウカジカエデ
セイヨウカジカエデは、木材生産のためにも栽培される。その木材は、白くて、絹のような光沢を持ち、耐久性が高い。楽器、家具、フローリングや、寄木細工に使用される。 中でも、波状の木目を持つ木材は、装飾用のベニヤ板として高値で取引される。 重さは、立方メートルあたり630kgで広葉樹としては中程度である。古くからバイオリンの裏板、ネック、スクロールに使われてきた伝統的な木材である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

中でもバイオリンには縮杢(虎杢)と呼ばれる、波状に縮んでしわがよったように見える、木目とは別に現れる模様を持ったもので製作されることが多く、その模様を際立たせるために製作家はニスの配合や種類にこだわります。

私が知る限り、ニスにこだわらない製作家には会ったことがありません。

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裏板用のメイプルを鉋掛けしたもの:縦の線が木目で横の模様が虎杢

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Masahiro Ikejiri: Violin 2015
裏板に顕著に縮杢が見られる

この縮杢は光の角度によって模様が変わります。

その理由は、縮杢は波打っている木の繊維によって光の反射角度が変わって模様が浮かび上がるため、光の角度が変わると模様も変化するように見えるからです。

虎杢だけでなくバーズアイと呼ばれる、まさに鳥の目の様な模様のものもありますが、材料が希少なため楽器になっているものは多くありません。

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バーズアイメイプルで作られたスクロール

縮杢やバーズアイは繊維のうねりが光の反射によって現れる模様ですが、木目(年輪)は元々の素材の色が違います。

夏目と呼ばれる白い部分と冬目と呼ばれる色の濃い部分があり、季節によって成長速度が違うために、育つ速度が早く繊維が疎になる部分と、育つ速度が遅く繊維が密になる部分で、それぞれに色の違いが現れます。

メイプルは全体的な硬さは比較的硬いのですが、夏目・冬目の硬さがほとんど同じで、硬さが均一で欠けにくいため加工が容易です。そのため、スクロールなどの彫刻を彫るのも、欠けて失敗するといったことが少ないのです。

製作用の材料は裏板・横板・ネックそれぞれに合った大きさのブロックや板状にすでに製材されたものが販売されています。しかし、ただその形に切り出しているだけではなく、木目の向きなどを考慮して切り出されています。

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バイオリン用の木材では最も広い面積の面が木目が平行に並ぶように切り出されます。この木取りを「柾目に取る」と言います。木材は乾燥していく時に現れる反りなどの変形を「狂い」と呼びますが、柾目に取られた材料は狂いが少ないので、この取り方の材料で作る場合が多いのです。

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ただ、山形や筍形の木目が現れる「板目」と呼ばれる取り方をした裏板で作られた楽器も稀に見られます。

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裏板が板目の楽器
木目がまっすぐではなく湾曲した楕円を描いている

バイオリン族にメイプルが使用される理由ははっきりわかっていません。
後述しますが、メイプルは音(振動)を最も吸収しやすい木材の一つなので、音響的な観点からはあまり良い材料とは言えないかもしれないのです。

メイプルは杢が美しく出るので、家具などの工芸品にもよく使用されています。このことから、美しい木材だからバイオリンにも使うようになったのかもしれません。

もしかしたら「伝統的に使い続けてきたから」という事が、メイプルを使う最も大きな理由かもしれません。

音を増幅する木材

表板とバスバーはスプルスで出来ています。

厳密にはブロックやライニングもスプルスで作る場合と、ウイロー(柳)で作る場合がありますが、使用部分が少ないのであえて無視していきます。

スプルスはマツ科トウヒ属の常緑針葉樹の総称で、日本語ではトウヒ属(唐檜属)といわれる木の仲間です。よくマツ科なので間違われて「松」とされることがありますが、「松」はマツ科マツ属で、樹形が広葉樹のように上部で広がるものが多く、幹もあまりまっすぐではありませんので、スプルスとは結構違う木です。

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砂浜とマツ(福井県気比松原)

どちらかといえばクリスマスツリーでおなじみの「モミ」に似ている木です。しかし、モミもマツ科モミ属なので、これも厳密に言えばトウヒ属とは違います。

トウヒ属の中でもドイツトウヒとかオウシュウトウヒと呼ばれる、アルプスなどの山岳地帯やスカンジナビア半島が原産の木がバイオリンに多用されています。

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オウシュウトウヒ 【伊】Abete rosso

このオウシュウトウヒ、特にイタリアのフィエンメ渓谷(Val di Fiemme)のものが過去の偉大な製作家たちが使用してきた材料として有名で、現在でもフィエンメ渓谷の木材は楽器用木材として人気があります。

また、スプルスはギター・ハープ・リュートなどその他の弦楽器や、ピアノなどの鍵盤楽器でも共鳴板として使用されている材料でもあります。

Si ritiene che numerosi strumenti musicali, anche di illustri liutai dei secoli scorsi, siano stati costruiti con il legname di risonanza della Val di Fiemme e della foresta di Paneveggio in provincia di Trento, nonché della Val Canale e del Tarvisiano in provincia di Udine. Antonio Stradivari, per i suoi straordinari violini, si riforniva presso la Magnifica Comunità di Fiemme. Attualmente, famose case costruttrici di pianoforti da concerto di alta gamma (quali, ad esempio, Bechstein, Blüthner, Fazioli) utilizzano per i loro strumenti tavole armoniche realizzate con abete di risonanza della Val di Fiemme.
Da Wikipedia, l'enciclopedia libera.
過去数世紀の著名な弦楽器(バイオリン)製作者の数多くの楽器は、 トレント州の フィエンメ渓谷(Val di Fiemme)とパネヴェッジオの森(foresta di Paneveggio)、およびウーディネ州の カナーレ渓谷(Val Canale)とタルヴィジャーノ(Tarvisiano)の木材を表板に使用して製作されたと考えられています。 アントニオ・ストラディヴァリは彼の素晴らしいバイオリンのために、 マニフィカ・コムニタ・ディ・フィエンメ(Magnifica Comunità di Fiemme)から物資を入手していました。 現在、ハイエンドコンサートピアノの有名なメーカー(ベヒシュタイン:Bechstein、ブリュートナー:Blüthner、ファツィオリ:Fazioliなど)は、フィエンメ渓谷のスプルスで作られた響板を楽器に使用しています。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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赤い印のある所がフィエンメ渓谷
なお、ストラディバリのいたクレモナはミラノの東南東約75kmに位置する

ちなみに、ストラディバリの購入先である「マニフィカ・コムニタ・ディ・フィエンメ(Magnifica Comunità di Fiemme)」とは、フィエンメ渓谷周辺の地域を支配していた社会政治行政機関で、現在の日本で言うところの「市」に近い小さな共和制自治体のことです。ただ、領土としては何世紀にも渡ってトレント司教領に属していて、司教から資源の利益確保と一定の自治を保証されていました。

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Magnifica Comunità di Fiemmeの旗:

この旗の中心にある丸い紋章は1587年にトレント司教領の君主であったルードビコ・マドルッツォ司教によって与えられましたが、この旗自体は19世紀半ばまではなかったそうです。

では、なぜこのスプルスが他の楽器を含め響板、特に共鳴板として使用されるのでしょうか。

弦楽器の共鳴板として必要な性質は、「軽く、腰が強く、振動しやすい」ことだと言われます。

まず「軽さ」ですが、木材の軽さ(密度)を比べる値として気乾比重と呼ばれる値があります。

気乾比重とは、木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値で、木材の硬さや強度を表す基準の一つです。

数値が大きいほど重く、小さいほど軽いことを表します。

スプルスは木材の中では軽いものの仲間で、気乾比重が0.35~0.4です。日本の家屋によく使われる杉や檜といった針葉樹も近い値を示しています。

ちなみに最も軽い木材は「バルサ」で、気乾比重が0.15~0.2です。

逆に、重い木材として代表的なバイオリンの指板にも使われる「黒檀」は、気乾比重が0.85~1.09ですから、密度の濃い黒檀は水に沈みます。
(気乾比重1が水と同じ重さ)

そして次に「腰の強さ」ですが、楽器用のスプルスは鋼やガラスをも上回る強度を持っています。

最高級のバイオリン、ピアノ響板材料であるドイツトウヒ材の中には、35GPaを 超えるものもある。これは、鋼やガラスなどの値に比べて20~30%程度も高い。
矢野浩之 楽器と木材 より

ただし、どの方向でも同じ様な強度が得られるわけではなく、木目方向に対する力で最も強く、木目に垂直の方向に対する強度は一割程度になります。

スプルスの木目はメイプルと違いとてもはっきりとしていて、夏目部分はとてもスカスカなのですが、冬目部分はとても硬く、この硬い部分が梁の様な役目を果たしているので、軽いのに鋼を超えるのような強度を作り出しているのです。

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鉋掛けした後の柾目のスプルス

最後に「振動しやすい」です。

まず、想像してみて下さい。鉄の板を叩くとしばらく振動し続けますが、ゴムの板を叩いてもすぐに振動が止まってしまいます。
なぜゴムはすぐに振動が止まってしまうのかと言うと、ゴム自身が振動を吸収してしまうためなのです。

つまり、振動が長く続くためには振動を吸収しにくい材料でないといけないのです。

しかし、振動を吸収しにくい鉄やガラスなら良いのかというとそうでもなく、鉄やガラスはある特定の音の高さで敏感に反応してしまう性質、いわゆる「共振」が大きく出てしまいます。そのため、ある音では大きな音がするのに、他の音ではそんなに大きな音がしない状態になったりします。

さらに言うなら、演奏で使われる音の高さはごく限られた一部の音、つまり世界最大の音域を持つピアノでさえ一般的には88音(88鍵)のみしか使用しないのですが、自然界にある音はセントで言うならピアノの音域だけでも8800セントあります。

何が言いたいかと言うと、共振する音が必ずしも演奏で使用される音になるとは限らないどころか、8800あるうちのどれかですから、それが88のうちのどれかに合うことはまずありえません。その上、少しずれたところで共振してしまうと、チェロでよく発生する「ウルフ音(ある特定の音でうなりが発生してしまう現象」が発生してしまいます。

この様に、演奏音でもなく、演奏音に近い音でも演奏するためには邪魔にしかならないので、共鳴板は振動を適度に吸収する必要もあるのです。振動を適度に吸収しつつ、適度に振動することで、共振する音がぼやかされ、幅広い音域を増幅することになります。

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特定の振動に反応する材料と適度に振動を吸収する材料のイメージ
木質材料工学研究室:葦の振動吸収能と糖の影響 より

この様な適度な性質の木材である「軽くて腰の強い」スプルスが経験的に最適とされ、後世になって科学的な分析によって、それまでの経験則が正しいことが証明されてきたのです。

ちなみにメイプルは木材の中では振動吸収が最も大きい材料のうちのひとつです。

メイプルという材料の音響的な役目は、その振動吸収性によって独特な音色を作り出す事にあるのかもしれません。

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さて、バイオリンを作る上で使用される材料を見てきましたが、消耗部品を含めるとこれ以外の材料も使用されます。

バイオリンの銘木たち

バイオリンに使われる木材は消耗部分を含めると、スプルス・メイプルだけではなく多くの種類があります。

特に目立つのは真ん中にある真っ黒な部分、指板に使われている黒檀ですね。

黒檀【英】Ebony【伊】Ebano
カキノキ科カキノキ属の熱帯性常緑高木の数種の総称。 インドやスリランカなどの南アジアからアフリカに広く分布している。 木材は古代から世界各国で家具や、弦楽器などに使用され、セイロン・エボニーは唐木のひとつで、代表的な銘木である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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セイロン・エボニーの林

黒檀は産地と品種によって真っ黒ではなく縞が入っているものなどもあります。その中でも特にバイオリンには真っ黒なセイロンエボニーが好んで使用されます。

アフリカ以外の地域のものは植林などが昔からされているので大丈夫なのですが、アフリカンエボニーは現地のギャングなどによって乱伐されて絶滅の危機に瀕していることから、ワシントン条約の附属書IIに登録されています。

黒檀は指板だけでなくペグやテールピース、顎当てなどのフィッティングパーツにも使用される木材で、黒檀の持つ「硬い」という性質のためにそれらの部分に使用されます。

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黒檀で出来たフィッティングパーツ

気乾比重のお話の時に「重い木材として代表的な、バイオリンの指板にも使われる「黒檀」は気乾比重が0.85~1.09ですから、密度の濃い黒檀は水に沈みます。(気乾比重1が水と同じ重さ)」とちょっと紹介しましたが、木材では密度が濃い(重い)とその分硬くなる事が多いです。

ですが、それでも木材ですからカンナやノミで削って形を作ることが出来ます。

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指板の裏側をノミとカンナで削って形を作っているところ

指板は指で弦を押し付けられ、柔らかいとすぐに摩耗して交換する必要がありますので、最も硬い木材のうちの一つであり、手に入れやすい黒檀が指板には最適なのです。

バロック時代はバイオリンの重量を軽くするためと柔らかく軽い音色にするために、表面だけ黒檀の薄い板を貼り付けた指板が使われていましたが、19世紀のモダンフィッティングへの改良の時に指板は黒檀の無垢材になりました。

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バロックバイオリン用指板の製作風景
土台のスプルスに薄い黒檀の板を貼り付けてある。

これは顎当ての登場で楽器の保持がしっかり出来るようになったことと、芯のある輝かしい音を出すために楽器の重量をある程度増す必要があったのだと思います。

他にも重くて硬い黒檀同様の木材がありますが、流通などの面もあり、現状では指板材には黒檀が一番良いでしょう。

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実は一時期日本ではローズウッド(紫檀)が黒檀よりも手に入れやすかった時期があり、廉価な楽器の指板にローズウッドが使われていたこともありました。

ローズウッド(紫檀)
ツルサイカチ属の植物に冠される総称。これらの木材は一般的に茶や赤茶の色をしている。日本では紫檀(シタン)とも呼ばれている。 ローズウッドは重硬で、ヤニを多く含むため耐虫害性や耐候性があり腐敗せず長持ちすることから、古代から世界各国で家具や仏壇、唐木細工、楽器、ナイフの柄、ビリヤードのキュー、チェスの駒(黒いもの)などに使用されている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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イースト・インディアン・ローズウッド(マルバシタン)

ローズウッドは黒檀の代替で使用されたことからもわかるように、重く・硬い材料で、気乾比重も 1.04と黒檀に近いです。

ところが、このローズウッドはアフリカンエボニーと同様に武装ギャングによる違法伐採が盛んになったため、ツルサイカチ属の種全体がワシントン条約の附属書IIに登録されてしまいました。

そのため流通量の減少と価格の上昇が起こり、現在では入手しにくい木材となりつつあります。

指板には使われなくなりましたが、フィッティングパーツには使用されています。

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ローズウッドで出来たフィッティングパーツ

美しい木目が特徴的で、フィッティングパーツでは人気が高い材料です。

ちなみにローズウッドの「ローズ」は文字通りバラのことで、新鮮なローズウッドはバラの様な香りがすることからこの名がつけられています。

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フィッティングパーツではこの他にボックスウッドで作られているものも多いです。

ボックスウッド(セイヨウツゲ)
ツゲ科ツゲ属の常緑性低木。庭木や街路樹としてよく用いられる。ボックスウッドとして知られている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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セイヨウツゲ:バトゥミ植物園

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ボックスウッドで出来たフィッティングパーツ

この写真を見ると結構茶色い木材のように見えますが、ボックスウッドの木肌はもっと白く、写真のようなフィッティングパーツは硝酸とアンモニアで表面を焼いて、色をつけています。

そのため、ペグを楽器に合わせるために削ると、白い木肌が出て来てしまいます。

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上が削っていないもの、下が削ったもの

そのため、ボックスウッドのペグは楽器にフィッティングを行った後に、削った所を焼いて色をつけないといけません。

セイヨウツゲは日本原産のツゲ(黄楊・柘植)とほぼ同じ性質で、気乾比重は0.75とエボニーやローズウッドと比べると若干軽く、柔らかいですが、木目が細かく緻密で道管が均一に分布するため、加工後の狂いが生じにくい材料です。そのため、日本では昔から櫛や印鑑、将棋の駒などの細かい細工が必要なものに用いられてきました。

そして、成長が遅いのであまり大きな原木が入手しにくく、高級木材の一つでもあります。

ただし、決してフィッティングパーツの中で極端に高級なわけではありません。

古い楽器にはボックスウッドのパーツが使われることが多いのですが、それはエボニーやローズウッドよりも柔らかいために楽器への負担や摩耗が少ないので、古い楽器によく用いられているだけです。

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A. Stradivari 1721”Lady Blunt"
彫刻が施されたボックスウッドのフィッティングパーツが使用されている

事実、ストラディバリウスでも黒檀のフィッティングパーツを使用しているものもあります。

どちらかと言うと、フィッティングパーツの価格差は「材料」というよりも「フィッティングパーツメーカー」によって大きく違います。

TEMPELやGERALD CROWSON、Guardelliなどの老舗メーカーのものが高価なのは、加工技術が高く、原木の品質も高いものを使用しているからです。

しかし、近年はインド産や中国産でも技術が向上してきた上に、原木が国内で手に入れられるので仕入れも安く出来るので、性能に関しては大きい差がなくなってきて、安く品質の良いフィッティングパーツが作られるようになっています。

楽器の購入時に気をつけていただきたいのは、楽器に高価なフィッティングパーツが使用されていたとしても、基本的に楽器の価格には関係が無いと言うことです。

良心的な専門店は高価なフィッティングパーツをセッティングすることで楽器の価格を釣り上げるようなことはしませんし、性能が同様で品質が良ければインド産や中国産も使用します。

「オールド楽器と同じボックスウッドのフィッティングパーツを使っているから楽器も高価」というわけではありませんし、必ずしも「高価な楽器だから高価なフィッティングパーツを使用している」わけでもありません。

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この他にも、弓に使用するフェルナンブーコやスネークウッドなどもフィッティングパーツに使用されたりしますし、近年ではカリンなども用いられるようになりました。また、バロック時代はメイプルもフィッティングパーツに使用していました(現在もあります)から、フィッティングパーツにはそこそこ硬ければどんな木材を使用しても良いとも言えます。

※ただし、狂いや吸湿性・膨張性・摩耗性によっては向かない木材もあると思います。

数十年前からプラスチックのフィッティングパーツが安い楽器に使用されてきましたが、近年は高級なカーボンファイバーの弓や顎当て、テールピース、さらには楽器本体もカーボンファイバーのものが登場してきましたから、今後は木材以外のものが積極的に使用されていく時代になって行くのかもしれませんね。

出典・参考文献
 Wikipedia
  イロハモミジ
  セイヨウカジカエデ
  マツ
  オウシュウトウヒ
  Picea abies
  コクタン
  ローズウッド
  セイヨウツゲ
 木材の基礎知識/新潟角千木材
 世界の銘木 木材図鑑
 木質材料工学研究室
 矢野浩之 楽器と木材 高分子 56巻 8月号(2007年)
 the Strad
  Poster: Antonio Stradivari 'Kruse' violin 1721

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