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【女性モノローグ】四低

(ヨガのポーズをしながら、同世代の友人に話す)
断ったの。
あ、うん。断ったの。
いや、本当に。丁重に。ごめんなさいって。

いや、別に問題は何もないよ。
すごくいい人だったし、だから私の問題なの。
条件的には最高だったもん。全部完璧だったって言っても良いくらい。
流行りの四低、全部クリアしてたんだよ。すごくない?
いつも優しいし、マウンティングもしないし、お前とか言わない。すごく『低姿勢』で、しかも『低依存』「結婚しても家事は一緒にしようね」って、「子供も一緒に育てようね」って約束してくれたし。しかも国家公務員だよ。給料いいし、安定しているし、すごく『低リスク』さらに煙草も吸わないし、お酒も嗜む程度なの。すごい『低燃費』
低姿勢・低依存・低リスク・低燃費。結婚を考えたら理想的な相手だったと思うんだけれどね。それに相手のお父さんとお母さんもとても素敵な人だったし。
もう完璧だったと思う。
だからあとは私の問題なの。

話したくないなぁ・・・・・・だって、これ言ったら引かれると思うもん。
うーん、引かない?だって私、今からきっとすごいこと言うよ。
私が同じこと言われたら間違いなく引くもん。
まぁ、ここまで言って言わないってのも確かに気になるか。

・・・・・・どうしても身長と顔がね。身長はまぁ、譲歩できるとしても、顔がねー、顔が・・・・・・うん、顔がダメだったの。

いや、わかってるよ。
100点なんて目指してないんだって。
そんなの目指してたら結婚なんて出来ないでしょ。
最低条件をクリアしていたら、真剣におつきあいしようって思ってたよ。
年収も共働きでいいから300万もあればいいし、私の年齢もあるから、相手の年齢も老人でなければ問わないし、向こうの両親と同居じゃないほうがいいけれど、それでも相手の両親に会ってみていい人だったら同居もありだし、煙草だって子供ができるまではOKだって思ってたし、だから、わかってるって。ほとんど全部クリアしてたの。
でも・・・・・・顔が、どうしても顔が。ダメだったのよね。

んー、好きな人は好きな顔なんじゃないかな。
でも私はダメだったの。なんかウーパールーパーみたいっていうか。
ほら、私、子供の頃から蛙とか両生類嫌いなの知ってるでしょ。
生理的にダメなの、あのテラテラヌメヌメした感じが。
ナメクジとかゴキブリとかを好きになれないでしょ。
違うよ!彼のことゴキブリだって言ってるわけじゃないし、彼は人間でしょ。わかってるよ。人間的にはすごく好きなんだよ。でもね、キスができなかったの。そういう雰囲気にはなったんだけれど、雰囲気を顔が押し返したっていうか。もうなんかダメだーって思って。でもすごくいい人だからなんか申し訳なくなっちゃって。

私も、足りないところたくさんあるし、顔も中の下だって思ってるよ。だからさ、こうして自分磨きをしているわけじゃない。でもさ、整形しようとは思わないわけ。
努力はするけれど、ありのままの自分を好きになってくれる人がいいじゃない。
だからさ「あなたと結婚したいとは思うんですけれど、整形してくれませんか?」って言える?それって酷くない?私、それ言われたらものすごく傷つく自信あるよ。

・・・・・・ね、言えないでしょ。
だからさ、もっと他にいい人いると思うんだよね。
あー、顔さえ良ければなぁ。
(ポーズをしながら)悟り開いたら何とかならないかなぁ。

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