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【男性モノローグ】おたく

(チェックの服、ジーンズ、バンダナを着た男が母親に話している)
ドゥフフ、全部、拙者が悪いのでござるか。
母上、それはちょっと早計でござるよ、常考。
常考は常識的に考えるってことでござるよ。
オケオケ、しっかり話すでござる。拙者ガクブルでござるよ。
怒らないで欲しいジャマイカ。オツオツ、冷静に聞くことキボンヌ。

拙者DDだったでござるよ。DDってのは誰でも大好きの略でござる。
クラスメイトがみんな大好きだったでござるよ。
大学でリア充デビューしたかったから繋がり厨になっていたのでござるなぁ。
神対応を心がけたでござる。
ああ、リア充はリアリティが充実している人、繋がり厨は繋がりを目的として現場、この場合は大学でござるなに行ってる人、神対応は良い対応ってことでござる。
でもそうすればそうするほど塩対応されて叩かれてぼっちになっていって病んでしまったでござるよ。
えーと、塩対応は悪い対応、叩かれるはいじめられる、ぼっちは一人ぼっちで、病むは気持ちが落ち込むだよ、でござる。

喋り方を叩かれても困るでござる。
拙者はこういう喋り方でござるから。
気持ち悪いとかマジレスはやめるでござる。
拙者、ティウンティウンでござるよ。

・・・・・・母さん、泣かないででござる。
高校の時の漏れより大学に入ってからのほうが充実してるでござるよ。
今は叩かれてないし、いじめもないでござるよ。だから安心してほしいでござる。
泣かないでほしいでござるよ。

母さん、僕は大学デビューに失敗したんでござるよ。
もともといじめられっ子が大学で華々しく人気者になるなんて無理だったんでござるよ。
え?

・・・・・・わかった。「ござる」はやめるよ。うん「拙者」もやめる。

僕、空回りしてたんだ。まわりからキョロ充って呼ばれてバカにされてた。キョロキョロしてていつも周りの顔色ばかり覗っているやつだってね。だからいつもひとりぼっちで食堂にいたんだよ。そしたら「おまいつ」って話しかけられたんだ。おまいつってのは「おまえいつもいるな」の略なんだってさ。それで琢郎とよくつるむようになったんだ。

琢郎はね、かっこいいんだ。
アレだよ、世間でいうオタクってやつでさ。チェックの服にジーンズでいつもリュック。もう服装から完璧だよ。会ってもアニメか漫画の話ばかりするんだ。大学ではおおむね浮きまくってる。でもね、それが本当に楽しそうなんだよ。
琢郎の周りのやつらも、みんな本当に楽しそうなんだ。
自分をしっかり持ってる感じがしたんだよ。琢郎に聞いたんだ。「何でそんなに楽しそうなんだって、嫌われるのが怖くないのか」って。そしたら琢郎は言うんだよ。
「拙者、恋人がいなくても推しの嫁はいるでござる。友達がいなくても二次元があるでござる。人を嫌いになって粘着している暇があるなら好きな二次元に浸るでござる」ってさ。強いなぁって思ったよ。「それに世界は大学だけじゃないでござるよ。2チャンネルの海に飛び込んでみるでござる。色んな人がいるでござる。色んな考え方があるでござる。オフラインが楽しめないならオンラインをマターリ楽しめばいいでござる」って。

笑っちゃったよ。
ああ、羨ましいなって思った。こんなに人目を気にしないで生きていけたら楽だろうなって。「拙者は友達はいらないでござる。いるのは同士でござるから。かっこいいでござろう」って「かっこいいね」って返しちゃったよ。そしたら琢郎が言ったんだ。「拙者のかっこよさが分かるならもう我々は同士でござろう」ってね。

母さん、僕はやっと友達ができたんだ。
僕をバカにしない、いじめない、暴力を振るわない友達が。
今から琢郎と一緒に秋葉原に行くんだ。
琢郎が推してる地下アイドルのライブに行くんだよ。
一緒にサイリウム振るんだ。
すごく練習したんでござるよ。

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