Bohemian Rhapsodyを見た
五年前に書いた文章。
ネタばれあり。
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Bohemian Rhapsodyを見た。
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ドイツに行くルフトハンザの機内で、映画を探していた学生たちが叫んでいた
「Bohemian Rhapsodyがある!」
(え、どうしよう。見たいけどどうしよう)
私が思ったのはそういうことだった。
映画館でBohemian Rhapsodyが映画になる。このことはかなり前から知ってはいた。封切りと同時に見に行きたかったが、封切りの前に耳がおかしくなってしまった。この耳の状態で映画なんかとてもではないが行くことができない。
今最悪の状態は脱してはいるが、まだ安定していると言うところには来ていないと思う。その状態で見たらどうなってしまうんだろうか。だから見たいけどどうしようと思ったのだ。
それで、結局見てしまった。とても良かった。
行きと帰りで合計2回半ほど見てしまった。通して見たのが2回。見たいところを探しながら見たのが1回であるので、半分とする。
1回見て
(これは、映画館で、観客と一体になって歌いながら見る映画だなぁ)
と思った。
が、飛行機の映画はビデオなので見たいシーンを簡単に探せて何回も見ることができる。だから、歌うことを我慢することができれば、飛行機で見たのはよかったかもしれない。
良かった。
とても良かった。
◇
Queenと言えば私にとってはとても大切なバンドの1つだ。私が最初に見た外タレは、Queenだ。Queenの2回目の来日公演の時、武道館で見た。
ステージ向かって左側の2階席である。目の前でブライアン・メイが、フレディ・マーキュリーが演奏し歌っていた。ロジャー・テイラーも、ジョン・ディーコンも演奏していた。
フレディ・マーキュリーがソロアルバムを出す前あたりまで聞いていたと思う。彼がエイズになったと宣言をした翌日に亡くなったのもよく覚えている。
◇
中学生の時ギターを始めた。最初はガットギターを手にしていた。もちろんエレキギターやフォークギターが欲しかったのだが、なぜか家にはガットギターであった。
歌が好きだった私は、それでもふきのとうの「白い冬」からギターを始めたと思う。Emから始まる曲なのでとてもひきやすかった。そしてあれこれ聞いている事に出会ったのがQueenであった。
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最初に聞いたのがBohemian Rhapsodyだった。とにかく衝撃を受けた。ロックなのにコーラスになっている。さらに言えばよくわからんがオペラと言うものにもなっているように聞こえた。
慌ててそのアルバムを探した。「オペラ座の夜」と言うらしい。買いたかったが、お小遣いは無い。いや音楽のほうは誰かからダビングさせてもらおうと思っていたと思う。私は、楽譜が欲しかった。ギターで弾いて歌うために楽譜が欲しかった。
新興ミュージックから出ている、洋楽の楽譜を買った。歌詞はとてもクセのある字で書かれていた。多分、定規を置いて、文字の下の部分を揃えて書いた文字だったと思う。
楽譜は読めないがコードがあったのでそれを見ながら一生懸命弾こうとしていた。いや音楽のほうは誰かからダビングさせてもらおうと思っていたと思う。私は、楽譜が欲しかった。ギターで弾くために楽譜が欲しかったのだ。
しかし、A♭とかある楽譜に、ガットギターで弾く私は諦めた。歌だ、歌にしよう。
◇
Bohemian Rhapsodyの歌詞を自分で翻訳もした。中学校2年生の時である。
Mama just killed a man.
Put a gun against his head
Pulled my trigger, now he’s dead.
辞書を引きながら一生懸命翻訳して出てきたその日本語には衝撃を受けた。
「お母さんは人を殺してしまったよ。銃を彼の頭に向けて引き金を引いたら、彼は死んでしまった。」
こんな訳になってしまって、でも信じられなくて、英語の佐藤先生のところに持っていってこれで合っているのかと確認した。
中学生が習った文法なら、「Mama just killed a man.」とあれば、「ママがちょうど人を殺した」と翻訳してしまうのは当然。だけどなんかおかしい。そしたら、
「池田、ここはMama, I just killed a man.であって、Iが省略されているんだな」と言われて
『え、英語って主語を省略しない言語だって習ったけど、それは違うのですか?』
と問い詰めたら
「まあ、こういうこともあるんだよ」
と言われて、良くわからなくなって、そして、
『Iが入るんなら、「お母さん、今僕は人を殺してしまったよ。銃を彼の頭に向けて引き金を引いたら、彼は死んでしまった」でいいのですか?』
と聞いたら
「うん、これでいい。これで合ってる」
と言われてもう一度衝撃を受けたのを覚えている。
歌詞の途中にガリレオが出てくる。他にいろんな人の名前が出てくる。翻訳しても翻訳しても意味がわからない。なんなんだこの歌は?
だけどとても良い。
◇
一生懸命フレディーマーキュリーの歌声を真似して、英語で歌うように、歌えるように頑張った。今でも
「あなたの英語はQueen’s Englishなのか?」
と海外旅行で言われることがある。まぁ、最近はオーストラリア人? イタリア人?と言われることも多いのだが、もともとはQueen’s Englishだと言われる。もしそうだとすればこれは明らかにQueenの歌を歌ったおかげだと思う。まさに、「Queen」’s Englishなのだ。
映画の中で、このBohemian Rhapsodyがプロデューサーによって否定される場面がある。「こんな長くて、何を歌ってるかわからない歌を、誰がシングルカットするもんか」のような部分があって、
(なんだイギリス人もわからない歌詞だったんだ)
と映画を見ながら笑ってしまった。
◇
この映画の良さは、既に見た人たちからあちらこちらで報告されている。音楽の良さはいうまでもない。ラストのAidのコピーも素晴らしい。4人に似た役者の素晴らしさ、特にジョンディーコンは本物ではないかと思われるようなステージングだったし、やっぱり久米宏に似ていたし、ブライアンメイの穏やかな人間性をきちんと描いたこと、ロジャーテーラーが女たらしだったこと(^^)。父と息子の葛藤藤、バイセクシャルの人間の姿、オリジナルを求めるとは何か、人種差別、仲間との生き方、人を信じるとは何か様々なことがここで描かれている。
そして、やはり問題になるのは、AIDSのことだ。
この時代、セクシャルマイノリティやAIDSのことは今ほど理解はなかった。「性的異常者の特別な病気」という考え方に支配されていたと思われる。だから、ゲイだから病気になったんだという考え方で、本人が悪いという考え方が支配していたと思う。
私も、1984年の I want to break freeで彼らが女装をして歌っていた頃は、
(やっぱり、フレディはゲイなんだろうなあ)
と思っていた。
だからなんだということでもないのだが、
(ゲイのフレディはオペラ座の夜をリリースした頃のフレディではなくなってしまったなあ)
という思いを持っていた。少しさみしかった。
私には理解できない世界なんだなあと思って、少しさみしかった。
◇
私は自分が選べるもの、選べないものというテーマで授業をしていた。
国籍、性別、身長、体重、親、髪の毛、明日の天気などなどを示して、どれが自分で選べるものなのかを考えさせる授業だ。
「本人が努力しても治らないことを根拠にして、その人を非難する」。これが私の差別の定義だ。バイセクシャルに生まれたことは、本人の努力で治るとかそういう問題ではない。私は努力することなく、男に生まれ、男という性を当たり前のように受け入れている。そして私は(まあ、次はないけど、次があったら次も男がいいなあ)と思うぐらい、今の性で安定している。
フレディマーキュリーは、バイセクシャルを選んで生まれてきたわけでもないし、なろうとしてAIDSになったわけでもない。彼は持って生まれたものを生かし、努力をし、楽曲を書き、歌っていたのだ。それが差別されるいわれはない。
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Keep yourself aliveでステージデビューするシーン。
Seven seas of rhyeをアルバムの一曲として録音しているシーン。
Bohemian Rhapsodyを作り上げている姿。
もうキリがない。
あ、1つだけ、なぜ、Liarが採用されなかったのか。これは不満。多分、この曲も6分あるので、Bohemian Rhapsodyが6分あって困るというセリフとの整合性が取れないから使わなかったのではないかと思われるが(^^)。
あ、さらにもう1つ、Love of my lifeがあのシーンに使われたのも不満(^^)。
あ、’39をロジャーに歌って欲しかったなあ。
しかし、あのAIDにまで導かれるストーリー展開、さらにはAIDのシーンは圧巻の一言だった。
エンディングの、Don’t stop me nowまで素晴らしかった。
◇
行きの飛行機で一回、帰りの飛行機で一回通して見て、帰りの飛行機は着陸のギリギリまで部分的に繰り返し見た私は、昔
(私には理解できない世界なんだなあと思って、少しさみしかった)
という思いを持ったことを思い出していた。そして、やっとわかった。
当たり前のことに気が付いたのだ。
私は、フレディマーキュリーの音楽を、Queenの音楽を愛していたんだ。中学生の頃、Bohemian Rhapsodyを聞いて、なんだか良くわからないけど、いいと思った。それで良かったんだよ。彼らのあれこれはどうでもよくて、その音楽を愛していたんだと。
耳が良くなったら、カラオケでQueenを歌うぞ(^^)。
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