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こんなときだからこそ、関係性を育む場所を。 ー「Cの辺り」オープンにあたって考えていること。

2021年9月1日、茅ヶ崎・海辺のコワーキング&ライブラリー「Cの辺り」は、本格オープンを迎えます。

こんな緊急事態宣言下で、場を開くの?
人の行動を促すことにならない?
今じゃなくても、半年後でもいいのでは?

…たくさんたくさん、悩みました。

でもこの40日ほど、「プレオープン」として場を開き、多くの人と対話を重ねてその意味を模索し、考え続けてきたいま、私たちは「開く」という決断をしました。このnoteでは、オープンを目の前に控えた、いまの想いを綴ってみたいと思います。

beで集う場所

私たち夫婦は、今年1月に「株式会社be」を立ち上げ、その第一弾事業として「Cの辺り」を立ち上げようとしています。株式会社beのメインメッセージは、「なにをするか(do)よりも、どうあるか(be)」。私たちはまず、大切にしたい「be」を定めることから、会社づくりをはじめました

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そして海を目の前に見渡す物件に出会い、これらのbeからむくむくと発露したのが、「場をつくる」というdo。場づくりのプロセスからオープンにしてありのままを発信し続け、DIYワークショップ等を開いて積極的に助けられ、そのことでどんな化学変化が起こるか、面白がって実験し、まじめに考察を重ねました。

本当に多くの方々に手を貸していただき、関係性のなかでつくりあげた「Cの辺り」。7月19日のプレオープンにおいては、「Cの辺りが大事にしたい5つのbe」を定め、会員希望の方にはオリエンテーションの時間をいただき一つひとつ説明し、場のあり方を共有してきました。

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ひとり約1時間。登録希望の方と一人ひとり面談という手間のかかることを重ねてきた理由。それは私たちが、「コワーキングスペース」という名前から想像されるような「快適で便利なサービス」を提供できる、提供したいと思っているわけではないから。

私たちは、海を目の前にしたこの場の楽しみ方を提供することによって、人と人の間に豊かな関係性を育み、幸せな働き方、あり方を探究してみたいと思い、「Cの辺り」を立ち上げることを決めました。

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会員さんには、「消費者」というより「参加者」という感覚でこの場に関わってほしい。

オリエンテーションの場で、そんな思いをお伝えすることが、私たちの最初の仕事となりました。

「便利なサービスは提供できません」なんて言われたら、怪訝な顔をされてしまうのでは…?なんて一抹の不安も、もちろんありました。でも本当に幸せなことに会員さんの多くは、こんな私たちの言葉に、真摯に耳を傾け、その名の通り「おもしろがって」くださいました。

レギュラー会員11名、スポット会員17名、ライブラリーオーナー24名。「be」に共感して集ってくださったみなさんとともに、プレオープン期間を過ごしてきました。

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価値の逆転が起こるとき

be、つまり「あり方」への共感で集う場で起ったことのひとつに、価値の逆転がありました。

たとえば、「Cの辺り」の本棚。「一箱本棚オーナー制図書館※」という形態を取り、本棚オーナーさんにご自身の本を並べていただいています。オーナーさんがセレクトしてくれた本棚はそれぞれに人となりが表れていて、まるでまちの人々のショーケース。とてもおもしろい空間ができあがっています。

(※一箱本棚オーナー制図書館は、静岡県焼津市の「みんなの図書館さんかく」に視察に行き、モデルとして大いに参考にさせていただきました。)

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このオーナー制図書館、これまでのサービスの考え方では、私たち運営者がオーナーさんにお金をお支払いするのが当たり前かもしれません。でもオーナーさんたちは、ご自身の本を提供する上に、月額2,000円のオーナー料を払ってくださっています。ここに、価値の逆転が起こっていることがわかります。

さらに、ライブラリーオーナーさんとコワーキングメンバーさんには、「Cの辺り」の「お店番」をする権利があります。お給料をお支払いしてスタッフとしてお店番をお願いするのではなく、関わってくださる方の権利としての「お店番」。これも価値の逆転です。

一見めちゃくちゃな発想ではありますが、会員さんたちはそこに興味を持ち、面白がってオーナーとなり、お店番に手を挙げてくださっています。おかげで本棚は賑やかになり、私たち夫婦が稼働できない土日祝、早朝夜間も、少しずつ営業できる時間帯が増え、場の価値はどんどん高まっています。

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お金を払う、お店番をする、という行為は、この場への貢献です。「貢献している」「一緒につくっている」という気持ちが、居心地の良さにつながり、豊かなコミュニティ形成に寄与しているのかもしれない

お店番をしてくださるみなさんの横顔を眺めながら、私はそんなことを考え、これからの可能性にワクワクしています。

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お金だけじゃない価値交換

そしてもうひとつ、beで集う場の可能性として感じているのは、お金だけじゃない価値交換の豊かさです。

「Cの辺り」の「幸せなあり方探究」の原点は、「豊かな人間関係こそ、人の幸せにつながるのではないか?」という仮説にあります。こちらのTEDスピーチにある幸福の研究結果にも、強く影響を受けています。

お金は便利でわかりやすく価値交換ができるツールですが、ときに人と人の関係性を途絶えさせてしまうものでもあります。「物々交換」や「おすそ分け」といった信頼をベースとした文化にはきっと、豊かさや幸せにつながる価値があったのではないか、と思うのです。

古き良き昔に戻るのではなく、すでにある文化をいまの時代にあったかたちで、資本主義社会の中で取り入れるには?と考え、私たちはそれを「関係資本主義」と呼び、「Cの辺り」で様々な価値交換の実験をしてみたいと考えました。

たとえば、Cの辺りという場はほとんどDIYで作り上げたのですが、ワークショップ形式で多くの方に参加していただく機会も設けました。4日間のワークショップに参加してくださった方々は、のべ約80人。みなさんには、コワーキングの利用券というかたちで、お返しをさせていただきました。

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さらに、DIYアドバイザーとして関わってくださった建築士さんや、撮影をしてくださったフォトグラファーさん、ライブラリーオーナーさん一人ひとりの似顔絵を描いてくださるイラストレーターさんには、本棚オーナーになっていただいたり、コワーキングの永久会員になっていただいたり、それぞれの働き・貢献に応じた価値交換をさせていただいています。(もちろん、それでも等価ではないと感じた分はご相談の上、お金という金融資本にも頼りながら。)特化した職能だけではなく、「トイレ掃除をさせてください」と、毎週通ってくださっている方にも、同じように価値交換をさせていただいています。

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これらは、「お支払いして終わり」のお金とは違い、ずっと関係性が続き、さらに豊かさを増していく可能性も秘めた価値交換。まだ始まったばかりですが、ことあるごとにこの場に足を運んでくださるみなさんの様子から、その大きな可能性を感じずにはいられません。

集中と雑談と

さまざまな可能性への予感に満ちたプレオープン期間、実際にご利用いただいたみなさんからも、さまざまな声をお聞きしました。

最も多かったのは、

すごく集中できた!

という声。当初は、「海を見ながらなんて、仕事にならないのでは?」なんて心配していた時期もありました。でも波の音が聴こえ、遠くに人が行き交う、程よいざわざわ感が、PC作業や読書、論文執筆等、自分の仕事に集中できる環境をつくってくれているのかな、と感じます。

さらに言えば、同じように仕事をしている人がいる環境は、だらけてしまいそうな自分を制し、集中力を高めてくれます。私たち夫婦も、自宅でふたりで仕事をしていた当初とは比べ物にならないくらい、「Cの辺り」での仕事は集中できると実感中。

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集中するだけではなく、コロナ禍で失われたと言われている「雑談」の豊かさも感じます。ある会員さんと、「こんなプロジェクトをやりたいね」と話していたら、となりのテーブルから、「それなら私も一緒にやらせてください」なんて声が上がったことも。同じまちに住み、この場のbeに共感して集ってくださったみなさんとなら、プロジェクトや事業といった形の新たな価値も生み出していけるのかもしれない

リモートワークが当たり前になったいま、自宅を飛び出し、程よく自然を感じながら、ゆるく集える場の価値を感じています。

深呼吸できる場所

深呼吸をしたい。

私はコロナ禍で、何度も何度も、そんな気持ちを抱いています。そのたびに、海へ自転車を走らせ、マスクを取り払い、思い切り息を吸い込み、吐き出しています。そんな環境に身を置いていることに感謝の気持ちが溢れ出ます。分断に向かう社会、外に出ることもためらってしまう社会の中で、私には、深い呼吸が必要だと強く感じています。

「Cの辺り」も、感染症対策のため、会員さんたちにもアルコール消毒、検温、マスク着用、パーテーションの使用をお願いして運営しています。会員のみなさんの安心安全のため、絶対に必要な施策。やっぱりちょっと、息苦しい…。

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でもここなら、一歩外に出ればそこは、どこまでもどこまでも続く、広い海。自分のしたいように、思い切り深呼吸ができます。ときにはストレス発散に叫んじゃっても、あまり誰も気にしません。

「Cの辺り」を拠点に、ビーチにあるモニュメント「茅ヶ崎サザンC」の「辺り」で、思い切り深呼吸をしたり、集中して仕事や読書をしたり、ちょっとだけ立ち寄って言葉を交わしたり。そんな時間が、いま、この社会を生きる私には必要です。

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それぞれの方法、タイミングで。

「私にはこの場が必要」だと確信したから、いま、この場をオープンすることに決めました。ここで自分自身の幸せ探究をしていきたい、と心から思えたから。なんて利己的な運営者でしょう(笑)。

でもきっと、私と同じように、こんなときだからこそこの場を必要としてくれる人がいるはず。そんな確信をくれたのは、プレオープン期間をともに面白がってくださったみなさんのおかげです。この場を借りて、心からの「ありがとう」をお伝えさせてください。

大きな声で「来てね!」と言いにくいのは、本当に苦しい。「オープンするよ」と伝えてしまうことも罪なのでは、と、このnoteを紡ぐこともためらいました。感染への不安から、足を運ぶのをためらっている方も、きっといることと思います。

でももし「Cの辺り」のあり方に心惹かれた方は、それぞれが安心できる方法とタイミングで、アクセスしてみてください。メールでもコメントでも構いません。オンラインでも、なにかお伝えできるかもしれません。そして足を運べるときが来たら、ぜひ一度、訪れてみてくださいね。どんなに時間がかかっても、いつまでも、「Cの辺り」で、お待ちしています。

もちろん今すぐ必要としてくれている人は、今すぐにでも。こんなときだからこそ、こんな場所が必要だと思っていますので。

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この記事を読んでくださったみなさんが、それぞれの場所で、それぞれに幸せを感じられていますように。そう願いながら、静かな一歩を踏み出します。ただただ、感謝の気持ちとともに。

※見学、お申込みは、ホームページからお問い合わせください。


貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。