「バイデンを支持するプロライフの福音派」
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「バイデンを支持するプロライフの福音派」

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以下の声明が出されたのはアメリカ大統領選が最終コーナーにさしかかった昨年9月。キリスト教福音派といえば政治的には保守主義、聖書的には原理主義のスタンスで知られるが、とくに福音派の白人層は圧倒的なトランプの票田と目されていた。寝耳に水とはこのことだろう。福音派の多数の著名人が、突然バイデン支持を公に表明したのである。それも「プロライフ」という切り口から。

プロライフ(pro-life)とは広義には、産まれる前から自然な死に至るまでの人のいのちを守ろうとする信条を示すものだが、現実的な使われ方としては「中絶反対」を法制度に落とし込もうとする政治的立場を言う。後者のプロライフはすなわち共和党の政策そのものであり、その地盤が福音派でありカトリック教会の保守層である。かつてのどの共和党大統領よりも中絶反対を声高に主張し、全米で中絶を合法とした最高裁判決「ロー対ウェイド」の差し戻しを視野に入れる共和党のトランプと、カトリック信者でありながら中絶を容認し、連邦政府の資金を中絶に用いることを禁じたハイド修正条項の撤廃を匂わせる民主党のバイデン。両者の一騎打ちに「バイデンを支持するプロライフの福音派」の会がどれだけ影響したかは不明だが、今年3月、バイデン大統領誕生後も活動をつづける彼らが大統領に向けて発信した公開書簡によってその存在が大きく取り沙汰されるところとなった。

ツイッターに添付された問題の書簡は炎上し、今は削除されている。その主旨は、コロナ禍の経済対策法案の一環としてハイド修正条項の除外を決めてしまった(つまり中絶費用にも国の補助をつけることにした)バイデン大統領に「わたしたちは裏切られた」と訴えるものだった。個人的にはハイド修正条項にそこまで彼らが期待していたことがむしろ意外な気もするが、それみたことかとばかりに、今もトランプが正義でバイデンは悪であることが当然と考える既存のプロライフ団体から冷笑され罵られる始末となった(クリスチャンがクリスチャンを裁く図は、大袈裟ではなく魔女裁判の図を思わせる)。SNSがすべて閉鎖されていることから、もはや彼らの活動にこの先はない模様である。残念である。

彼らの華々しい(既得権益の側からすれば毒々しい)所信表明は徒花で終わったかもしれないが、今後のプロライフのあり方を考えるうえで十分読むに値するものだと思うので今さら日本語に訳してみた。トランプを紋切り型に批判している点を除けば、大統領選という文脈を離れても、クリスチャンの背景を持っていなくても、多くの日本人が納得する論旨ではないだろうか。中絶は法律で規制しても減らないどころむしろ増える。中絶を効果的に減らすために必要なアプローチは貧困対策である。中絶という極めてデリケートな問題を俎上に40年にわたって保守とリベラルが不毛な対立をつづけるアメリカ社会に一石を投じた彼らの愛と勇気ある一歩を讃えたい。(訳者)

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今回の大統領選でプロライフの有権者が直面する二つの重要な問い

1. どうすれば両政党に、胎から墓までの人のいのちを守る責任を最大限に果たしてもらうことができるのか?

2. 中絶という問題に関しては、どうすれば両政党―“プロライフの”言語を用いるがこの40年間中絶を減らすことに失敗してきた共和党、かたや中絶を犯罪とすることに反対するが彼らが政権を握るたびに中絶の減少に大きく貢献してきた民主党―のあいだでバランスを取ることができるのか?

これに答えることは容易ではない。しかし益々多くのプロライフの福音派のリーダーたちが、プロライフの有権者にとってよりよい候補者はジョー・バイデンであると公に言い表すようになっている。

何千というプロライフの福音派のリーダーたち(クリスチャン・トゥデイの前会長やビリー・グラハムの孫娘、数多くの福音派の大学の学長たち、そしてメガ・チャーチの牧師たち等々)は9月に「バイデンを支持するプロライフの福音派」の立ち上げを宣言する声明文を発表した。

司牧の立場にある彼らは以下の4つの主張を掲げて、プロライフの有権者たちに祈りのうちに熟考することを求めた。

1. バイデンはトランプよりリアルに中絶を減らすために多くのことをするだろう。

2. ロー対ウェイドの差し戻しは中絶の実態にほとんど影響がない。

3. プロライフのクリスチャンは、産まれる前と同様に産まれた後のいのちを守ることに責任があることを理解しなければならない。

4. トランプはクリスチャンの証しに対する深刻な脅威である。

両者の成果からわかること:中絶を最大限に減らすには?

イエスは、口では何とでも言えるものだ、と繰り返し諭された。キリストが教えるのは、指導者を決めるときにはその成果によって判断せよ、ということだ。この助言は、とりわけ中絶政策を考える際に響き合う。過去40年を振り返るに、中絶の件数は共和党の大統領の時代に増加するかあるいは横ばいだったのに対し、民主党の大統領の時代には劇的に減少しているのである。

プロライフの有権者にとってカギを握る問いは、産まれる前のいのちについて語ることと、産まれる前のいのちを守ることとどちらが重要なのかということだ。

史上初の“プロライフの”共和党の大統領だったロナルド・レーガンの時代、中絶は増えつづけた。大ブッシュの時代には空前の域に達した。それから中絶は、クリントン大統領の時代に一転して劇的に減少し、共和党大統領時代に記録した最大値の60%程度にまで急落する。その減少傾向は、小ブッシュの時代を通して下げ止まりとなり、民主党が下院を掌握する任期最後の2年まで一定を保つ。

その後オバマの時代となって中絶は再び減り始め、40年のあいだで4分の1まで減少し過去最小の値を記録する。しかしながら、トランプが就任してからほどなく中絶数のこの急激な減少傾向は止まった。同時にトランプ政権下で、中絶率は安定した

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中絶数は共和党大統領の時代に上昇するかあるいは安定し、民主党大統領の時代に減少するのは偶然ではない。女性が中絶する二つの大きな要因がある。貧しさ(中絶した女性の75%は年収250万円未満であり、さらにそのうちの半数は120万未満である)、および予期せぬ妊娠(アメリカ人の妊娠のおよそ半分は予期せぬ妊娠であり、そのうちの40%が中絶している)である。

また、共和党が中絶へのアクセスを規制することに重点を置く一方で、民主党は貧困、十代の妊娠(オバマ時代に過去最小を記録)、および予期せぬ妊娠を効果的に減少させてきた。その反対に、共和党は貧しい母子家庭への医療サービス、子どもに対する食糧支援、および女性に対する避妊への補助を削減してきたが、そうした施策がことごとく中絶を選択する女性に深く影響してきたと思われる。

ロー対ウェイドについては?

政策上の最大の争点となり、またファンドレイジングの切り札になるものとして、民主党、共和党双方にとって「ロー対ウェイド」ほど効果的なものは他にないだろう。「ロー」を差し戻すことは、共和党にとっては聖杯とも言うべき大目標となった。しかし仮に「ロー」が差し戻されたとしたならば、中絶政策についての決定はたんに各州に任されるようになるというだけである。しかも中絶を規制しようと躍起になっている州でおこなわれる中絶の占める割合は、アメリカ全体でおこなわれる中絶のおよそ10%程度である。もしこれらの州で中絶が完全に違法となったとしても、かつ中絶を求めて州をまたぐ女性が一人もいなかったとしても、「ロー」の差し戻しによってどれだけ中絶を減らせるかといえば、せいぜい10%の減少にとどまるにすぎないということだ。

それに対して40年に及ぶデータから、貧困女性を半減させることができれば、産まれる前のいのちを3倍救えることが明らかである。事実、民主党は避妊へのアクセスと産休・育休の制度を充実させること、および産前・産後のヘルスケアを改善することで、中絶を50%以上減らしてきた。しかしトランプは、こうした効果的な施策をすべて切り捨てようとしてきた。

以下の論点は「ロー」の問題にも勝る。過去9年間、共和党の議員たちは中絶へのアクセスを制限する法案の成立に寄与してきた。しかしオバマが大統領だったその時代、全米の中絶率は大きく減少したが、そうした大きな減少が起こったのは概ね、中絶へのアクセスを法規制することがなかった州だったのである。そして中絶率が上昇あるいは変わらずに推移した州の多くが、中絶へのアクセスさらには中絶を提供する施設を規制しようとしていたのである。

共和党優勢の州で中絶が増えることがなかった理由は、単純に共和党が中絶へのアクセスを制限してきたからである。それが、中絶が増える結果になってしまったのは、同じ共和党の議員たちがトランプ大統領に追随し、妊婦を支援し予期せぬ妊娠を防ぐのにもっとも効果的だった政策を切り捨ててしまったからである。

そして、とりわけキリストの模範にならうクリスチャンにとって、この最後のポイントが重要である。

女が姦通の罪で捕らえられたとき、イエスはその女と正義の怒れる群集とのあいだに自ら割って入ったのだ。

中絶を経験した女性10人のうち7人が、すでに子を持つ親である。彼らは絶望し、孤立し、おそらく恥じ入り、他に選択の余地がない。プロライフのスローガンが、この現実を変えることはない。キリストの赦しを否定し、子どもたちを束縛し、そしてコロナウイルスを無神経に友人や家族に撒き散らす大統領を再選することが、この現実を変えることはない。

そうした女性や子どもたち―産まれていようと産まれる前であろうと―に必要なのは、過去40年の愚策を繰り返すことのない勇気と信仰をもったクリスチャンたちである。 

こういうわけで、われわれはジョー・バイデンを支持する。


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