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映画「189」が示唆する課題について

2022年7月17日(日)、門真市ルミエールホールにおいて、映画「189」の無料上映会が開催された。
市内の、子ども達にかかわる4つのNPO団体が結集し、「児童虐待という社会問題に少しでも関心を持ってほしい」という想いから、実施されたものだ。
当日は、この映画を監督された 加門幾生氏、プロデューサーの 吉野浩氏も会場にお越しになり、もりぐち夢・未来大使のU.K.(楠 雄二朗)氏、主催者のお一人であるNPO法人ハッピーマムの たましろゆかり氏とともに、上映後のトークショーで想いを語られた。
この映画は、厚生労働省が定めた、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」を、もっともっと広く啓発し、虐待によって辛く悲しい現状にある子ども達を、ひとりでも多く救いたい、少しでも問題解決に結び付けていきたい、という切なる願いが込められている作品で、トークショーを拝聴して、ますますその思い、願いが、ストレートに伝わってきた。
映画を観た多くの市民の皆さんも、きっと、同じように、問題意識を高められたのではないかと思う。189(いちはやく)ダイヤルについても、理解を深められたことだろう。その意味で、今回の上映会、たいへん有意義であったと思うし、このような機会はもっとつくられていいのではと考える。

私自身は、この映画を観るのは2回目である。昨年12月3日、公開初日に、イオンシネマ大日にて自民党門真市議団全員で、問題意識を持って鑑賞した。
児童虐待がテーマということで、怖い場面が想像され、1回目の時は正直、おそるおそる観ていたのだが、今回は2回目なので、よりじっくりと観て、映画の中に示唆されているいくつかの課題点について、気づくことができたので、以下、掘り下げて考察したいと思う。

(1)加害者プログラム
映画の中で、弁護士役の夏菜さんが、「欧米では加害者プログラムが導入されているのに(日本では、無い)」というようなセリフがあった。(詳細にはちよっと違うことばだったかもしれません)
加害者プログラムとは。週間女性PRIME  2019/2/17 杉山春氏の記事によれば「 カナダ・アルーバータ州の制度では、DVが通告されるとすぐに強制逮捕され、裁判所から接近禁止命令が出る。児童虐待が通告されると、児相から子どもの緊急保護命令が出る。10日以内に裁判が開かれ、状況によって更生プログラムを受けるよう命じられる。プログラムはDV加害更生プログラム、虐待をしてしまう父親のプログラム、両親が一緒に受けるペアレンティングのプログラムなど種類が豊富だ。更生プログラムを終えないと、児相に保護された子どもを返してもらえない場合もある。ホームサポートワーカーが派遣されて、家の中に危険なものはないか、食事がきちんと与えられているかを確認することもあるという。」
この記事を読む限り、アルーバータ州ではずいぶんスピーディに、子どもが緊急保護されて加害者が更生プログラムを受けることになるようだ。

日本では、加害者プログラムについてはどのようになっているのか。平成31年3月19日付の、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議が発出した、「児童虐待防止対策の抜本的強化について」という文書がある。(この前年に目黒区で、また、この年の1月に千葉で、児童虐待死事件が起きている。)この文書から一部抜粋する。
「④ 保護者支援プログラムの推進
・保護者支援プログラムについて、諸外国の先行事例の把握を進めるとと もに、活用方法等を周知する。また、専門医療機関や民間団体と連携し て治療や保護者支援プログラムを実施する場合の支援を拡充する。さら に、保護者支援プログラムの実施を担う専門人材の養成に取り組む。
・死亡事例をはじめとした重大事例の分析を行い、これを踏まえた対応策 を検証の上、保護者支援プログラムの活用方法を検討し、活かしていく。
・家庭裁判所による都道府県等に対する保護者指導の勧告など司法関与 の仕組みの活用を促進する。」
カナダの事例記事と比べると、ずいぶん、対応の速さや厳しさにおいて、緩すぎるのではないかと感じるのだが、実際どうなのであろうか。この発出文書は平成31年のものなので、この後、実際には進んでいるのだろうか。

現時点では、以下の調査を進めようと思う。
・「保護者支援プログラム」はいわゆる「加害者プログラム」であるのか
・具体的なプログラムの内容は
・どのような場合に、どのような場所でプログラムは適用されるのか(強制なのか任意なのか)

189で「通報する」ことはたいへん有効だ。
子ども達の、かけがえのない、命を救うことにつながる可能性がある。
しかし、通報し、一時保護するだけで終わってしまっては、虐待をなくすことは難しい。そこで、必須なのは、加害者の更生であり、そのためのプログラムでなくてはならない。

他にも、映画から伝わってきた課題点がいくつかあったので、この問題については、引き続き書いていく。

あってはならない、児童虐待。子ども達はみな、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」があるのだ。すべての子ども達の命をまもり、育てるのは大人の義務。通報ダイヤル「189」の活用を。

《7月26日捕捉》

市民の方からご指摘を受けたので、以下、加筆捕捉します。

上記記事は、映画内で描かれた事例について分析を試みるものであります。実際の児童相談所においては、さまざまなケースがあります。(大阪府の児童虐待相談対応件数は、20,694件で9年連続全国最多。2020年3月11日付け 府のHP発表より)

令和2年12月3日の大阪府議会本会議では、児童相談所の一時保護の判断や、面会等の考え方について質問があり、府は子どもの安全確保を最優先に、個々に応じた対応をすると答弁しています。児童相談所と一時保護施設のより一層の連携と、面会、通信等の交流を可能な限り行っていただくように、そして一時保護所の子どもたち一人一人の事情に即した、より丁寧な対応を求める要望がなされていることを付記いたします。

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