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砧公園の中のファミリーパーク

東名高速の用賀インターからすぐ近くに砧公園はある。広い芝生の広場がある公園で、その広さはおおよそ東京ドーム8個分である。環状8号線を用賀インターから世田谷通りとの交差点に向かって走ると左手にある。近くには世田谷清掃工場や世田谷市場がある。最寄り駅が田園都市線の用賀駅で、駅から徒歩20分のため徒歩ではアクセスしづらい。そのため自動車で来る人が多い。休日は特に来園者が多く、夕方は駐車場から出るのに時間がかかるので、余裕を見て帰り支度をするようにと公園内にアナウンスが流れるほどである。

車の話をしたけれど、私の家から砧公園は近く、自転車で5分もかからない。子供の頃から遊んでいる公園である。私が大学生の時に実家が引っ越して、その後結婚や子供が産まれるなどの理由で、住む場所を転々としていたが、今また砧公園の近くに戻ってきて、子供とよく遊びに行っている。昔もよく行っていたし、色々と楽しい思い出もあるのだけど、最近行って思うことは今の方が砧公園が好きだということだ。

広い砧公園には芝生の広場以外にも施設が多くある。軟式野球場兼競技場、小サッカー場、子供のアスレチック広場、サイクリングコースなどの運動施設だ。また運動施設以外に美術館がある。昭和61年3月に開館された世田谷美術館で、開放的なムードの美術館と紹介されている。父親が仕事を引退してから油絵を始めたのだが、父の行く油絵教室の作品が飾られるイベントが世田谷美術館であり、父の絵を見に行ったこともあるので、地域にも開放的な美術館である。

サイクリングロードの内側に、ファミリーパークと呼ばれる樹林と芝生の広場しかないスペースがある。園内を1周するサイクリングロードに区切られていて、そのファミリーパークも東京ドーム3個分くらいの広さがある。わかりづらいのだけど、砧公園の中にファミリーパークがある。芝生と広さの理由は、公園として使われるまではゴルフ場として使われていたからだそうだ。そのゴルフ場を昭和32年に「家族ぐるみで楽しめる公園」をテーマに公園に造成されて、開園した。

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私が子供の時は、家族(両親と姉と私と弟)で遊びに行っていた。芝生の広場で、サッカーボールを蹴ったり、キャッチボールをしたり、ウニピョン(ウニみたいな形の柔らかい球をラケットで打ってラリーするテニスとバトミントン合体したような遊び)をしていた。広さがいる遊びも周りをあまり気にしなくいいし、ボールが飛びすぎて近くの家に入ってしまう心配もない。近くにも色々公園があったけれど一番のびのび遊べる公園だった。

家族で遊ぶ以外にも花見によく行ったし、虫取りにもよく行った。砧公園は桜が有名で、ソメイヨシノなど約840本のサクラの木がある。そして桜以外にもクヌギがあったり、花も多く咲いているため、虫も多くいる。虫好き少年だった私は夏によくセミを弟と取りに行っていた。アブラゼミはしつこいくらいいるので、少しレアリティーの高いミンミンゼミを私は捕まえていた。弟はツクツクボウシだった。その頃の私は、なんとなくセミのいる位置が分かるという能力があり、狙った木の裏には大概セミがいた。

それ以外は、1.75kmのサイクリングロードで自転車に乗って遊んでいた。昔は、専用の自転車を借りて走るサイクリングロードだった。アップダウンが意外とあるため、スピードを出して競走したりもしていた。そんなことをしていたものだから、今も危険な箇所にはスピード注意と看板がある(子供の時からあったかもしれないけれど)。そして、いつからか自転車の貸し出しがなくなり、サイクリングロードはその役目を終え、今はランニングロードとして生まれ変わり、多くの人に利用されている。

それから20年くらい経った最近は、家族で休日に行くことが多い。今では、ランニングロードになったサイクリングロードを、子供の自転車練習ロードとして使っている。ストライダーから始め、補助輪付き自転車を経て、自転車に1人で乗れるようになっていく。3人の子供のうち1人は自転車で、1人は補助輪で、もう1人はまだ立って歩けないので、全員の卒業はまだ先になりそうだ。芝生の広場にマットを敷いて寝転んだり、サッカーボールを蹴って遊んだり、キャッチボールをしたり、実家から譲り受けたウニピョンをしたりして遊んでいる。

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そして、2020年に新型コロナウィルスによるパンデミックが起きて、小学校と保育園が閉所してしまった。仕事も在宅勤務が強制されたので、子供と1日中一緒にいる生活が始まった。遠くに遊びにいくこともできず、日中家に居続けることも辛い状況で、ソーシャルディスタンスを確保できる公園の存在はありがたかった。日中は子供と公園にいき、夜に仕事をするという生活を繰り返した。

その後、保育園と小学校は再開されても、コロナ禍は続いたため、在宅勤務は続いた。外に出ずに1人終日家にいるという生活になった。なんだかひどく疲れ、どうしようもなくなった日があり、砧公園に一人で向かったことがあった。何も持たずにただ公園に行き、ファミリーパークの芝生に寝そべったり、座って過ごした。徐々に気分が回復していくのがわかった。大人になってから初めてファミリーパークに1人で来て、なぜ昔より今のほうがこの公園が好きなのかがわかった。

ファミリーパークには利用にあたっての注意事項がある。
・ファミリーパーク内へのペットの連れ込みはできません。
・ファミリーパーク内への自転車の持ち込みはできません。
・公園内では、テント、イス、テーブルは使えません。

ファミリーパーク内は、ペットもいないし、自転車も走らないので、安心して芝生に寝そべることができる。テントやテーブルなどがなく、空の青と木々と芝生の緑がよく見える。「家族ぐるみで楽しめる公園」をテーマから作られたルールによって、そこにいるのは適度な距離感でいる家族である。他の公園では感じられない安心感と開放感があり、その感覚を私は子供の時も、大人になって子供と遊びに来る今も、無意識に感じていたのだ。家族の形を変えながら、感じ続けるその安心感と開放感によって、前よりも公園が好きになっていくのだとわかった。

コロナ禍で1人で在宅勤務をする中、私は家族に救われていることに改めて気づいた。安心して過ごすことができる家族があり、その家族を私もその1人として、みんなが安心して過ごせるようにしていきたいと思う。64年続くファミリーパークを目指し、「家族ぐるみで楽しめる」家族を築いていきたい。

ファミリーパークから近くの清掃工場の煙突が見える。見える建物と言えばそれくらいだと、最近ようやく気がついたのだが、先日父がその煙突を入れた絵を描いていた。聞いてみると、建物を描くという油絵の課題で、公園から見える建物がそこだけで、描きやすいからだそうだ。そのちょうどのタイミングになんだか家族だなと思った。私が父と同じ年齢になった時には、子供たちも家を出て、妻と2人になっているだろう。妻と2人でファミリーパークに行き、一緒に散歩することを今は夢見ている。そして、その時にこの油絵をふっと思い出せたらいいなと思う。

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参考文献:公園に行こう!砧公園
https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/about004.html
https://www.tokyo-park.or.jp/map/kinuta_map201016.pdf

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