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炭火が生まれるまでの物語 #5 紀州備長炭の選別

和歌山県で紀州備長炭を焼いております、池渕木炭です。
炭火が生まれるまでの物語、第5回目は、備長炭の選別作業についてです。

ゆったり炭火を眺めながら、もしくは炭火を思い浮かべながら、
読んでいただければうれしいです。


#5 金属音が響く一日「備長炭の選別」

山に生えていたウバメガシが、ここまでの工程を経て、金属音を発する物質になります。

ここまで物質を変貌させることができる、昔の炭焼き職人の方が磨いてきた技術にはいつも頭が下がる思いです。

今回は、完成した紀州備長炭が、お買い求めいただいた方のお手元に届くまでをお話したいとおもいます。


心はウキウキ、腰はガチガチ

窯から出して、素灰で急速に消火した備長炭を、翌日に掘り起こしていきます。
掘り起こすとまだほんのり暖かったり、結構熱かったりします。

真っ赤だった炭が、どんな姿で出てきてくれるのか、
いつも楽しみなので、1日かがんでの作業ですが苦になりません。
(腰は悲鳴をあげますが・・・)

味のある炭を見つけると眺めてしまいます。手が止まってしまうと思いつつやめられない楽しみです。

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そんな調子でどんどん掘り起こしていくうちに、気がつけば素灰の山が、備長炭の山に入れ替わっていきます。

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金属音が響き渡る1日

備長炭の選別は、一本一本、長さと太さを目で見て、締まり具合を調べるために、音を聞きます。

一本の炭でも部分によって締まり具合が違うことがありますので、
手刀で備長炭を叩いてその境目を見極めて折っていきます。

こうして違う種類の炭が混じってしまわないように注意して選別します。

「キーン」という音が1日中、仕事場に響きます。


備長炭の種類

備長炭の種類ですが、池渕木炭ではどんなふうに分類しているかお話ししようと思ったのですがたくさんあってとても長くなってしまい・・・回を分けて書いてみることにします。すみません・・・

今回はざっくりですがどんな種類があるかというと、

まず、「○○丸」シリーズです。
最後に「丸」がつくのは、断面が丸い備長炭。響きが可愛いです。

代表選手をご紹介すると、
↓こちらが「上小丸」(直径が2〜3cmで、長さが20cm以上)

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↓こちらが「細丸」(直径が1.5〜2cmで、長さが20cm以上)

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次に「断面いろいろ」「形いろいろ」シリーズ。
今回は使いやすい小さめのものをご紹介します。

まず、我が家のレギュラー備長炭でもあるこちら。
「並」(荒と呼ばれる小さめ備長炭の中で、中サイズのもの)

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続いては、「並」の弟分。
「並小」(荒と呼ばれる小さめ備長炭の中で、小さめのサイズのもの)

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他にも色々種類があるのですが、基本的には、

・断面の形
・長さ
・締まり具合

によって分類されています。
それぞれ特長があるので、

・求めるもの(火付けのしやすさ、火持ちの良さ、熱量、など)
・使う道具(七輪やバーベキューコンロ、火鉢の大きさや形)

など、お使いになるシーンに合わせて選んでいただくのがよいかなと思っています。迷われた時はお気軽にご質問ください。

あ、あと、こういうものもあります。
「長尺物」といって、長さが1m以上のものです。

箱に入らないため折ってしまうことが多いのですが、オブジェとしてお部屋に飾っていただくこともあります。

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「使う人の身になって」

備長炭は自然の木で出来た木炭ですので、いろいろな形があり、
ビシッと基準にあうものばかりではなく、判断するのが難しい時もあります。

そんな時、炭焼き職人が昔から選別の基準にしているのは「使う人の身になって」という視点です。

この合言葉を忘れずに頭においておくと迷いません。


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選別された備長炭は、ご注文をいただいたら箱に詰め、全国あちこちに旅立っていきます。

お客様から炭火焼きを楽しんでいるお写真やメッセージをいただくと、心に染み入ります。大変だった作業の疲れが吹き飛ぶ、一番嬉しい瞬間です。


最後に

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

木を切って、窯で焼き、炭になったら出す。
シンプルな仕事ですが、ひとつひとつ、奥が深いです。

炭火を眺めながら、この炭火が出来るまでの物語をふと思い出してもらえるととてもうれしいです。

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備長炭ができる工程のお話はこれで終わりますが、
これからは炭火の楽しみ方についても書いてみようかなと思っております。

「こんなことが知りたい!」などございましたらコメントなどでぜひ教えていただけるとうれしいです。

これからもどうぞよろしくおねがいします。






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