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気候変動を知る 気温上昇編~過去140年で世界の平均気温は1.09℃上昇した

昔に比べて夏の暑さの厳しさが年々増していると、私は感じていますが、その実感の度合いは世代によって大きく違うようです。2015年に実施したワークショップで、50代以上の参加者が、”昔に比べて暑くなった、温暖化の進行を実感する”、と発言する一方で、20代以下の参加者は、”生まれたころから、夏は暑かった”と、口々に言っていました。しかし、感覚としては実感のない若者世代が、未来に対する感度を高く持ち、気候変動問題解決のための様々なアクションを起こしています。一方、クーラーという文明の利器が温暖化リスクを覆い隠してくれたことをいいことに、社会変革の必要性に対しても関心を示さない私たちの存在があります。
 まずは、地球環境のことをデータをもとに定量的に認識し、未来をともに語るための「科学モデル」を共有することが大事だと思います。気候変動に関する共通認識を持つために必要なデータ、モデル、未来予測などについて、少しずつまとめていきたいと思います。

過去140年で世界平均気温は1.09℃上昇した

IPCC AR6 WG1 Figure SPM.1

上の図は、西暦1年から2020年までの世界平均気温変化(10年平均)を示しています。1850年以降の黒い線は温度計で人が直接気温を測った値をもとにしていて、灰色の線は別の方法で当時の気温を推定した値です。縦軸のゼロ点は、1850-1900年の平均気温を基準点としています。
 この2000年間の気温変化グラフを見ると、20世紀そして21世紀に入って現在までの気温の上がり方は極めて異常であることは一目瞭然でしょう。図の左側に示してある0.2-1.0℃の範囲は、今から6500年前に生じた過去10万年間で最も温暖であった数世紀におよぶ期間の推定気温範囲を示しており、過去10万年タイムスケールでみても、今の世界平均気温は異常であることが分かります。
 定量的に押さえておきたい数字としては、「2011~2020年の世界の平均気温は1850~1900年より1.09℃(0.95~1.20)℃上昇した」(IPCC第6次報告書SPM)という観測事実です。つまり過去140年の間に世界平均気温は1.09℃上昇したことになります。

 この気温上昇の原因はなにか。IPCC第6次報告書では
「人間の影響が大気、海洋、及び海域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」
「1850~1900 年から2010~2019 年までの人為的な世界平均気温上昇は0.8℃~1.3℃の可能性が高く、最良推定値は1.07℃である。」
としています(IPCC第6次報告書SPMの気象庁翻訳版A1, A.1.3.から引用)。

IPCC AR6 WG1 Figure SPM.2

気温上昇を説明するために科学者たちは「モデル計算」を行いました。そして、どの要因が何℃の気温上昇に貢献したのか、要因ごとに寄与の大きさを定量的に求めることに成功しています。それを表したのが、上の図で、「よく混合されたGHG は1.0℃~2.0℃の昇温に、その他の人為起源の駆動要因
(主にエーロゾル)は0.0℃~0.8℃の降温に寄与し、自然起源の駆動要因は世界平均気温を-0.1℃~0.1℃変化させ、内部変動は-0.2℃~0.2℃変化させた可能性が高い。」(IPCC第6次報告書SPMの気象庁翻訳版A.1.3.から引用)と述べられています。二酸化炭素を筆頭に数々のGHGによる寄与が計算されており、二酸化硫黄による太陽光遮蔽効果(マイナス0.5℃)が、ちょうどメタンによる温暖化効果程度を相殺していますが、過去の気温上昇のほとんどは人間活動で説明が付けられています。太陽や火山活動、気候の内部変動による気温変化への寄与は、せいぜい0.1℃、0.2℃であり、自然変動のみで1℃の気温上昇を説明することは出来ないというのが、現モデル計算の出した結論ということになります。

そしてIPCC AR6の最終的な結論として、"It is unequivocal that human influence has warmed the atmosphere, ocean and land."(IPCC AR6 WG1 SPM A.1)の記述となります。UNEQUIVOCALという単語は馴染みがありませんでした。equivocalは、cambridge dictionaryによると、"not clear and seeming to have two opposing meanings, or confusing and able to be understood in two different ways:"ということで、”正反対の2つの意味のどちらともとれる”ということで、unequivocalは、それを否定する言葉なので、”どちらなのかの曖昧さはない”、”白黒はっきりついた”、という意味だと分かります。気象庁は、”疑う余地がない”と訳しています。

過去の気温の直接観測から得られた世界の気温マップは、GISS Surface Temperature Analysisという研究プロジェクトによってつくられています。おそらくおなじデータソースだと思われますが、NASA Earth Observatoryのサイトからも気温マップが提供されています。https://earthobservatory.nasa.gov/world-of-change/global-temperatures

https://data.giss.nasa.gov/gistemp/animations/TEMPANOMALY_05_2021_pdiff.mp4

タイトル画像出典:https://earthobservatory.nasa.gov/world-of-change/global-temperatures/show-all





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