嬉しい再会は突然に
嬉しい再会は突然やってきた。
支援員として入っている小学校で、1年生と6年生のクラスが交流する機会があり、校庭で綱引き、ドッヂボール、リレーなどを楽しんだ。
私が1年生のサポートをしていると、皆から少し離れたところに佇んでいた少年が私に近寄ってきた。
「久しぶり」そう言われて、マスク越しの顔をしげしげと見つめたら、4年前に担当した子だった。マスクをしていて、髪も伸びたから分からなかった。
「ずっと学校にいるよね。何年いるの?」と聞かれ、「あなたが1年生の時からだから…もう6年だね」と答えた。答えながらも、再会が嬉しくて自分でも声が弾んでいるのが分かった。
せっかくのチャンスを逃したくなくて、ゲームの説明をしている6年生の話も聞かずに、私は小声で彼に話し続けた。
彼を担当したのは、まだ2年生の時。私と過ごした日々のことを覚えていないだろうと思ったが、彼は一言「覚えてるよ」と言った。
当時の光景を思い浮かべながら、私は「保健室で隠れんぼをしたよね。イライラして保健室のぬいぐるみをあちこちに投げつけたこともあったね」と懐かしんだ。
狭い保健室は隠れる場所がほとんどないのに、隠れんぼをしたがった。保健室に病人がいないときは彼に付き合い、飽きるまで何度も繰り返し遊んだ。
鬼役の私は、女優並みの演技で「えー、全然分からないなぁ。どこに隠れているんだろう?」と彼に気づかないふりをしたものだ。本気で自分が見つかっていないと思っている彼の幼さが可愛くて、養護教諭とこっそり目を見合わせて微笑んだ。
まだ幼くて言葉にできないイライラは、ぬいぐるみを投げつけることや私に当たることで解消していたのだろう。自分ではどうしようもできない家庭環境の変化は、きつくて抱えきれなかったのだと思う。
ある日、2年生が校外学習で近くの公園に行くことになった。
学校出発のための集合時間に間に合わなかった彼を連れて、私は後から公園に向かった。
彼は、私の手を離して、わざと違う方向に走って行ってしまったり、ピンポンダッシュをしたり。学校を出てすぐに、彼を連れて公園に行こうとしたのを激しく後悔した。結局、我々が公園に着いた時には、すでに皆の姿はなかった。元気いっぱいの彼とは対照的に、私はヘトヘトになりながらやっとの思いで学校に戻った。
思わず校長や養護教諭に愚痴をこぼした。
そんなやんちゃで自由奔放な彼にはかなり手こずったが、なんだかんだ言ってもやっぱり可愛かった。当時は彼と5年生の少年の2人を担当していたから、2人が掛け合わさると大変さも倍増したが、今となってはいい思い出だ。
担当を外れてからも、低学年のうちは、校内でバッタリ会うと「よお、池田!」「いけ、いけ、いけだ〜」と声をかけられた。「先生、名前なんだっけ?」と聞かれたこともあった。時間とともにだんだん記憶が薄れていくよねと思いながらも、少し淋しかった。
休み時間に校庭でバスケをしている彼を微笑ましく眺めていたら、「一緒にやる?」と誘われて、バスケをしたこともあった。
5年生になると、保健室で見かけることが増えた。何かしんどいことがあるのかなと気にかけながら、遠くから見守っていた。
6年生になり、保健室で見かけなくなった。校長に様子を確認すると、「最近、落ち着いているよ」とのことだった。
いつからか、長いこと彼を見かけなくなり、もしや転校してしまったかと思い、先日、恐る恐る校長に確認した。「転校していないよ」と聞き、ホッとした。しかし、その後も彼とは会えなかった。
「あなたを全然見かけなくなったから、この前思わず校長先生に確認しちゃった」と私が言うと、「引越したと思ったの?」と聞かれた。「そう。だから、まだいると聞いてホッとした」と伝えた。
そんな彼も3月には卒業だ。
「卒業式、楽しみにしてるね」と言いながら、本当は淋しい気持ちもあると気づいた。「卒業式は楽しみだし嬉しいけど、やっぱり淋しいね」と言い直した。
このまま、彼とはゆっくり話もできないまま卒業してしまうのかなと思っていたから、こうやって久しぶりに話せて、思いがけないギフトを受け取った気分だった。
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先日、ある人に感謝の手紙を書きたくなり、便箋に手書きで書き始めた。思いがどんどん溢れてきて、書いても書いても終わる気配がなかった。結局、便箋8枚に私の思いを綴った。気がつけば3時間が経っていた。私はやっぱり思いを書いて伝えたい人なんだなぁとしみじみ感じて、思わず笑ってしまった。
当時2年生だった少年、5年生だった少年、1年生だった子のお母さん、講座で出会った青年、私がインタビューした人たち。そしてワークショップでは自分宛ての手紙も書いた。思えばたくさんのラブレターを綴ってきた。
引き出しの整理をしていたら、3年前に書いた1年生の子のお母さん宛ての手紙のコピーが出てきた。その子と心を通わせていった軌跡と成長の記録を綴ったものだった。
久しぶりに読み返すと、彼に対する愛情が溢れていた。その子と一生懸命に向き合ってきた過去の自分がそこにいた。私たち2人の幸せな心の交流とたしかな成長があった。お金に変えられない、かけがえのない体験だと思った。
卒業時、彼にもまた手紙を書きたくなるのかな。
もう二度と会うことはないかもしれないけれど、あなたのことが好きで、あなたを応援し、あなたの幸せを心から祈っている人がここにいるよと伝えたくなるのかもしれない。
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