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初めての海外旅行の香港でジャケット買いしたCDアルバムのあの歌手は誰だったのかを二二年後に調べるの巻 #5

アルバムの女性は香港の有名女優だった

 さて、問題のCDである。
 私が購入したのはこれである。

 見る人が見ればこの時点で、なぁ~んだ、と思うのであろう。
 それくらいの有名人であるのだが、私は知らなかったのだ。

 旅の初日。香港にもHMVがあるのだなと思って入店した。
 旅の思い出にするため当初から現地で何かCDを買うつもりでいたのか、街を歩いていてたまたまCDショップを見つけたので記念に何か買う気になったのか、今となっては思い出せない。
 思い出の品にするのだから、いま・ここで流行っている曲を買いたいものだ。
 だから売れ筋の商品が置いてありそうな棚を物色したはずである。
 ところがこちらは広東語がさっぱり読めないし、香港のエンターテインメント事情も知らないから、何を選んだらよいかについてのとっかかりが何も無い。頼りにするのは見てくれだけである。
 いわゆるジャケット買いというやつだ。
 そうして直感で手に取ったのが、先ほどのパッケージだったのである。(黄と緑の色に惹かれたのかな。)
「精選」とあるのは、いわゆるベスト盤のことだろう。それならハズレの可能性は低そうだ。
 しかし何より決め手になったのは、表紙に見えている次のローマ字である。

arigatou

 漢字ばかりの表記の中、「ありがとう」と読めてしまうのだから嫌でも注意を引く。
 何となく縁を感じて購入した。価格は覚えていない。
 もしこれが現在ならば、旅先であてずっぽうにCDを買ってみるなどということはしないはずだ。インターネット経由でいくらでも音楽を試聴できるのだから。
 そうするとこれは、まだ不便なあの時代だったからこそ意味を持った〝偶然の支配する遊び〟だったと言えよう。
 プレイヤーを持参していない私は旅先で音を確かめることができない。
 帰国して聴いてみた。
 全一八曲。
 好みの曲調の歌が多く、「当たりだったな」と思ったことは先に書いた。
 個人的には四曲目の「插曲」が一番のお気に入りだが、タイトル曲の「ARIGATOU」も悪くなかった。
 もっとも、サビで歌われる「あり~がと~あり~がと~」以外の歌詞の意味は何も分からないわけだが。
 さて、あれから二二年が経ち――。
 まずもっての課題は、このアルバムの歌い手は誰かということである。
「鄭秀文」が名前だろうから、これを検索ワードに打ち込んでみる。
 すると真っ先にウィキペディアの「サミー・チェン」なるページが引っかかった。

サミー・チェン(鄭秀文、1972年8月19日 - )は、中華圏芸能界で活動する女性歌手、女優。英文表記はSammi Cheng。血液型はO型、しし座、身長165cm。香港出身。

 素晴らしい時代になったものだ。あの時はまったく分からなかったものが、現在では無言でキーボードを叩くだけで答えが得られる。
 よく見ればアルバム・ジャケットの表紙に大きく「SAMMi」と書いてあるではないか。これが人名だとは思わなかったよ……。

「16歳のときに参加したオーディションで認められ、芸能界入り。数多くのドラマ、映画に出演し、アルバムも多数発表している。バラードからテクノポップまで幅広いジャンルを歌える実力を持つ。女優としてはアンディ・ラウとの名コンビで人気を博しコメディー映画の女王と謳われたが、2005年には初の文芸映画にも挑戦、話題を呼んだ。

 読めば、かなりの有名人であるらしい。
 歌手であるのみならず女優でもあると言うではないか。
 さっそくAmazonのPrime Videoで検索してみた。
 有名なのは、私でも聞いたことのある『インファナル・アフェア』(2002年)だろう。しかしここでは『名探偵ゴッド・アイ』(2013年)なるものを視聴してみる。原題は「盲探」。

 大きな括りでいえばサスペンスのジャンルに入るのだろうが、全体的にコメディ・タッチの作品だ。軽快なテンポが心地よく、歴史ある香港映画界の手練れの技を感じさせるものだった。
 作品の中でサミー・チェンは、アンディ・ラウなる高倉健とも菅原文太とも綾野剛ともつかない男優演じる盲目の探偵とコンビを組んで迷宮入りした事件を捜査する女性刑事の役で登場していた。性格は蓮舫みたいなタイプ?
 あのCDを聴いてから二二年の時を経て、〝動くサミー〟を初めて見たというわけだが、その歌い手は、映画のダブル主演の片方を担うほどの人気女優になっていたのである。

(次回に続く)


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