韓国プロ野球 我が愛しのロッテ・ジャイアンツ応援歌(1)-② 釜山で韓国プロ野球を観戦する方法
※この記事は2015年前後の筆者の旅の想い出にもとづいて書き起こしたものです。最新事情とは異なる可能性がある点をご承知おきください。
(↓ひとつ前の記事)
巨大カラオケボックス
私が現地で観戦して驚いたのは、韓国プロ野球の応援スタイルであった。
応援なら日本のプロ野球でもやっている。
選手ごとに応援歌があり、その選手の打席になると、外野スタンドでトランペットをプープー、太鼓をドンドン鳴らして、ファンが声をあげている。
ところが韓国では異なる。
楽器の生演奏ではなく、プリセットされた楽曲をスピーカーから流すのだ。
電気の力をふんだんに利用する。
大音響を球場全体に轟かせる。
そこにファンの歌声をかぶせていくというスタイルなのだ。
私は、これは巨大なカラオケボックスだ、と思った。
いや、屋外だからカラオケ場と言うべきか。
しかも内野席に設けられたステージには4、5名のチアリーダーがいて、応援団長的存在の男性МCの差配で流される楽曲に合わせて踊りまくっている(ちなみに韓国では各チームのファンの応援席は一塁側もしくは三塁側の内野席にある。外野スタンドではない)。
ちなみにアウェイチームの攻撃時にはどうなるかというと、シーンとしている。
よーく目を凝らせば、反対側の内野スタンドに、少人数ながら相手チームの応援団がおり、その周囲を少人数のファンがこじんまりと取り巻き、小さな声をあげている。
自前のポータブル・スピーカーを持ち込んでいるようだが、その音は蚊の鳴くように小さく、ほとんど聞こえて来ない。
ホームとアウェイで完全に待遇が差別されている。
試合はホームチームのために行われる〝お祭り〟なのだ(とはいえゲームは白球の行方次第。勝利が保証されているわけではなく、筋書きの無いドラマであることに変わりはない)。
カラオケが「主」で、野球は「従」。
これはインターネット越しに観ているだけでは気がつかないことだった。
まるで野球をダシにしてカラオケを楽しむの体(てい)なのである。
もし日本でこれをやったら賛否両論が湧き起こるだろう。
頭のかたいファンからは、野球に対する冒涜と見なされるだろう。
だから日本では、プロ野球のここまでの〝ショー化〟は実現しないだろう。
エンタメとしてのプロ野球
ところで肝心の野球の内容はどうかというと、プレーは日本と比べて雑である。
大味である。
これは中継で観ていても気づいたことである。
エラーが多いし、暴走が目立つ。
傾向としては打高投低である。
日本と比べて明らかに投手力が劣る。
四球が多い。三割バッターはゴロゴロいる。
だから成績上位の投手には、外国人選手の名前が多い。
韓国で期待される外国人助っ人と言えば、まずは投手のイメージである。
だから野球の実力で言えば、日本の方が確実に上だと思う。
それは代表チームの対戦成績にも表れているだろう。
(ちなみに、試合開始前の練習を見ても、日本のプロ野球では入念なシートノックをやるが、韓国プロ野球の場合、軽くキャッチボールをするくらいである。もっとも、客に見せないだけで、その前に万全の準備を終えているのかもしれないけれど。)
しかし、だから面白くないかといえば、そうでもないのだ。
韓国のプロ野球では、投手は思い切り投げるし、打者は思い切りバットを振る。
もちろん失敗することはあるけれど、野球本来の醍醐味ともいえる部分を惜しみなく見せてくれているような気がするのだ。
かといって日本の高校野球のテイストとも違う。
適度に下手(失礼!)だから波乱があり、序盤に点差が開いても逆転する可能性が大いにあるから、最終回まで楽しめる。
それに比べると、日本の野球は緻密すぎる。
妙な言い方になるが、質が高すぎる。
確実な勝ちを目指す詰将棋のような野球も良いが、多くの人でワイワイ楽しむエンタメとしてはどうかと思うのだ。
それに韓国の球場には女性ファンの姿が多い。
しかも、女性どうしの若いファンが多い。
ひょっとしたら親しい友人とディズニーランドに遊びに行くような感覚で球場に来ているのではないか。
今度どこ行く? 映画行く? 遊園地行く? カラオケ行く? コンサート行く? の選択肢の中に、野球場行く? が違和感なく並んでいるような気がしてならない。
また、イニングの合間になされる〝余興〟も面白い。
私は韓国語を解さないが、見ているだけで面白い。
最近では日本でも熱心に取り組むようになったようだが、まだ韓国ほど針が振り切れていない。
私が好きなのは、キスタイムというものだ。
これは球場に来ているカップルをスクリーンに大写しにしてKissを促すというもので、年代別に若い順に当てていく。
最後には熟年も熟年の大ベテラン夫婦が選ばれるが、衆人環視のなか濃厚なキスをぶちゅ~とやられると、これはもう涙が出るほど面白い。
日本でやれば、野球を侮辱するな、とお𠮟りを受けそうであるが……。
エンタメ性を追求して野球を面白く見せることにかけては、韓国の方が数段上を行っていると思うのだ。
(次回に続く↓)
関連する記事
最後まで記事をお読み下さり、ありがとうございます。賜りましたサポートは、執筆活動の活力とするべく大切に使わせていただきます。