韓国プロ野球 我が愛しのロッテ・ジャイアンツ応援歌(1)-③ 釜山で韓国プロ野球を観戦する方法
※この記事は2015年前後の筆者の旅の想い出にもとづいて書き起こしたものです。最新事情とは異なる可能性がある点をご承知おきください。
チョー・ヨンピルを知っていたから…
その旅ではソウル・大邱・釜山と徐々に南に移動しながら複数のスタジアムを訪れたのだが、その中でも「これは!」と思ったのが、釜山のロッテ・ジャイアンツである。
自分はなぜ、このパ・リーグなのかセ・リーグなのか分からないような球団に惹かれたのか?(ちなみに韓国プロ野球は1リーグ・10球団で、パ・リーグもセ・リーグもない。)
屋外の球場が開放的だから。
魅力的な選手がいるから。
ソウルのように殺伐としていない釜山の街の雰囲気が自分の性に合ったから。
それもある。
しかし何よりの決定打は、私がチョー・ヨンピルの『釜山港へ帰れ』という唄を知っていたからだ。
チョー・ヨンピルと言っても、今の若い人たちは知らないかもしれない。
しかし私が子供の頃には日本でもまだ演歌というジャンルが歌謡界の一角を支えていて、ヒット曲の「♪つ~ばき咲く~」のメロディーは、私の頭の中にしかと刻まれていた。
それが、この球場で得点が入ったときに歌われる。
また、勝っていても負けていても、日本で言えばラッキーセブンの攻撃回の時のように、試合の終盤になると必ず歌われる。
『釜山港へ帰れ』(通称トラワヨ)はこのチームのテーマ曲のようなのだ。
私は哀調の歌が嫌いではない。
今は権利の関係でやられなくなったようだが、同じく韓国の歌謡曲である『釜山カルメギ』から『釜山港へ帰れ』へとつながるファンの大合唱は、潮風の吹くこの街の夜空にこだまする〝黄金のメドレー〟だったと思う。
ファンが演歌を熱唱する球団がここにある。
しかも私の知っているド演歌を。
(日本ではすっかり廃れてしまったが、韓国の演歌はトロットと呼ばれるジャンルに進化して、今でも人気を保っていることを後に知った。)
だから私はこのチームに親しみが持てたのだ。
加えて、応援団長のチョ・ジフン(조지훈)から受けたインパクトも大きい。
言葉では何とも形容し難いのだが、ダサいとカッコいいの中間を行くような独特の振付は無形重要文化財に指定されてよい。
それからチアリーダーの中心的存在であるパク・キリャンのことを挙げておこうか。
ロッテ・ジャイアンツの試合に登場するチアリーダーは通常4名なのだが、その中でどう見たって目立つのが彼女なのだ。
島国にはない大陸的な手脚の長さがある。
彼女は踊るために生まれて来たに違いない。
もう30代に突入しただろうか?
できるだけ長く続けて欲しいところだが、その姿をいつ見られなくなるとも限らない。
(私は韓国語を解さないので性格的なところはよく分からないのだが、ユーチューブでパク・キリャンTVなるチャンネルを開設しているようなので、もしご興味があれば覗いてあげてみてください。)
クラウドかセンタクで
試合が後半に入る。
するとどこからともなく、派手なオレンジ色のビニール袋が前の席から後ろの席へと順に回されてくる。まるで学校の教室でテスト用紙が配られるように。
初めての人にはさっぱり意味が分からないだろう。
これはジャイアンツのオーナー企業であるロッテグループのロッテ・マートなるスーパーマーケットの買い物袋なのである。
これをどう使うかというと、袋をパタパタと上下に揺すって空気を取り込んで膨らませてですね、左右の輪っか、つまり取っ手の部分をそれぞれの耳にひっかけて頭の上に装着するわけですな。ラッキィ池田のように。
(これにはコツが必要で、事前に何度か練習しないとその場では出来ないと思われる。)
もちろん恥ずかしい人はつけなくてもOK。
持ち帰ってゴミ袋にすればよろしい。(しかしこの風習は地球環境問題的に遠からず廃止されるかもしれませんな。)
さて、試合が終わったら球場を出て、今度はスタジアムの正面、つまりホームベース側に移動しよう。
ここには関係者の出入口があり、選手の出待ちをすることができる。
出入口の左右に2本の長いロープが張られ、花道が作られる。
その中を、先ほどまでグラウンドでプレーしていたあの選手・この選手が通過する。
それを間近で見ることができる(私服です)。
運が良ければ選手から直々に手渡される球団グッズをゲットできるかもしれない(通常はお子様限定)。
なお応援団長やチアリーダーもこの道を通る。
私はパク・キリャンの姿を間近で見たが、あまりにも小顔で神々しく、近寄り難いとの印象を受けた。
さあ、選手たちの姿も間近に見たところで地下鉄に乗り、満足した気分でホテルの部屋に入る頃には23時近くになっているだろう。
大画面のテレビのスイッチを入れるとプロ野球ニュースをやっている。
それも、あの手この手で編集を加えて、日本のプロ野球ニュースよりもよっぽど細かく報道している。
冷蔵庫には昼間に買っておいたビールとマッコリが入っている。
ビールなら「クラウド(Kloud)」、マッコリなら「清濁(センタク)」の銘柄がお薦めだ。
マッコリは濃厚な味わいのものよりも、微炭酸で淡い風味の「清濁」が釜山の夏には相応しい。
それらを飲みながら、先ほどこの眼で観てきたばかりの試合をダイジェストで十二分に振り返りながら、心地よい酔いに包まれるようにして眠る。
これが私の韓国プロ野球体験である。
◇◇◇
ところが、すぐお隣の国でプレーされているのに、韓国プロ野球の知名度は高くない。
ロッテ・ジャイアンツという球団も、日本ではほとんど知られていない。
自分がこれだけ楽しめるのだから、他にもきっと、韓国プロ野球の魅力に〝感染〟する素質をお持ちの方がいるに違いない。
その方たちのために、ささやかな近道を用意しておこうと思う。
折しもコロナ禍にあって、球団の公式ユーチューブ・チャンネルに一試合分の応援の様子が丸ごとアップロードされた(次ページ参照)。
そこで、試合の中で実際に使われているロッテ・ジャイアンツの応援歌を、日本語の訳を添えて紹介することを思いついた。
球場でファンたちが歌っている詞の内容が分かったほうが、より楽しめるに違いない。
もっとも歌詞と言っても、意味が分かってしまえば実に他愛のないものだ。
語彙も限られているし、日本のプロ野球の応援歌ほど凝ってもいない。
次ページを「目次」と位置づけるので、そこから辿っていただきたい。
なお私は韓国語を解さないため、調べる努力はしたが、語学上の誤りがあるかもしれない。
もし見つけられたらご指摘いただくか、あるいは笑って御寛恕いただけると幸いである。
(↓目次に続く)
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