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個別塾講師バイト初日

朝起きて、スマホのリマインダーを確認すると、「個別塾講師バイト18:00〜」の文字。

ああ、そうだった。完全に忘れていた。5月にコンビニバイトの他にも塾講師バイトにも応募して、両方とも採用されたからどっちもやることにしたんだった。6月に一回研修を受けたっきり、一回も出勤することがなかったから、塾講師バイトに採用されたことも忘れかけていた。今日に至るまで何もしてこなかったが授業上手くいくだろうか?いや、だけれども今日は期末レポートの作成が急務だ。とりあえず期末レポート書き終えてから、色々考えよう。

そう決意して、ノートPCと水筒だけ携えて大学の図書館に行く。

期末レポート作成終了。腕時計を見ると、時刻は16:30であった。

これならなんとかなるだろうと安堵しながら帰路に着く。帰宅すると、我が家は一人暮らし用の6畳1Rのはずなのに、「カサカサ」と音がする。「まさかな、新築マンションの4階にヤツがいるわけ...」と思いながらも、念の為ゴミ箱を覗くと、案の定、Gがいた。

そこからの私の行動は早かった。リュックを投げ出し、財布だけ持ってサンドラッグに全力ダッシュ。値段を気にせず、ゴキジェットプロを購入して家に戻り、ゴミ箱に噴射した。

しかし、相手は数多のセキュリティをかいくぐり、新築マンションの4階までたどり着いた歴戦のGである。Gはゴミ箱から飛び出した。

「もはやこれまで」と思いながらも、一心不乱にゴキジェットプロを噴射し続けて、気がついたらGは死んでいた。

時刻は17:30。こんな死骸さっさと処理したいが、流石に初出勤であるからもう家を出なければならない。

スーツに着替えて、結局ろくに準備もできないままバイト先の塾に赴いた。

教室に入ると、事務の人が出迎えてくれた。教師用ロッカーに案内され、荷物をロッカーの中に入れる。そして、白衣を渡された。ああ、なんか制服として白衣が支給されるから私服で塾に来てもいいとか研修の時に言われたような。次からは私服で来るか。

その後、生徒のデータファイルの保管場所や授業で使うペンの置き場などを教えてもらい、今日の授業内容に関する説明に移った。

「○○先生には今日英検対策の授業をしてもらう予定でしたが、今日その子が来れなくなったため、代わりに中学社会を教えていただきます。」

!?

生徒の当日変更なんてあるのか。しかも、教科も変わるのか。授業準備をしても意味がなかったということか。結果オーライだな。中学社会くらいだったら教えられる、、、はずだ。

「映像授業を利用した学習ですので、○○先生ががっつり教えるということは今日はないです。自学の補助的なことをやってもらえれば大丈夫です。」

まじか。塾に来て、映像授業を受ける時代なのか。家でやれば良いような...私の存在必要ないような...。ともあれ、それだけのことでお金が手に入るとはレジ&洗い物地獄のコンビニ夜勤とは比べ物にならないくらいチョロい。今日のところは授業よりも、指導報告書の書き方や教室のモノの配置を覚えることに専念しよう。

そうこうしているうちに、生徒が来て、授業が始まった。「何かわからないことがあったら遠慮なく聞いてね」私が授業開始時にそう伝えると、生徒は慣れた手つきでタブレットを操作し、黙々と映像授業に取り組んだ。

私は不慣れな手つきで教員用のタブレットのボタンを手当たり次第押しまくり、何がどうなっているのか把握していった。

本当に暇だった。そりゃわからなければ映像授業見直せばいいだけの話だもの。生徒からの質問はほとんどなかったから、私は、生徒の手が止まっていたら、「その問題わからない?」と聞いて教えた。生徒は中学歴史をやっていた。高校日本史と高校世界史を両方履修し、阪大のレベルまで高めた私も、相手が中学生であることを意識して、できるだけ簡略化して教えた。

授業が終わり、生徒はすぐに帰った。授業後、指導報告書を書き終えたら、勤怠の説明を受けた。紙に記入するらしい。「なんでそこだけアナログなんだよ」と思いながらも、書いた。

最後に、シフトの入れ方の説明や駐輪場の説明を受けて、帰宅した。

時刻は20:00。流石に腹が減った。今日は奮発して昨日買っておいた冷凍チャーハンを食べようとか帰宅途中考えていたが、未処理のGの死骸を見てテンションはだだ下がりした。冷凍チャーハンを温めている間に、同業者に申し訳ない気持ちと、ライバル社に意地悪したい気持ちの半々でGの死骸を近所のコンビニ前のゴミ箱に捨てた。冷凍チャーハンを食べ終わり、今に至る。

いやはや、これからどうなっていくことやら。今日は映像授業の子一人だったけど、通常は、対面で二人の子を教えるという。今日見た感じ、教室の雰囲気は良かったから、先輩教師に頼りながら、少しずつ慣れていこう。

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