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初めてのケースバイザー

初めてのケースバイザー(実習生の担当症例について指導する役割)が終わった。指導者じゃなくて実習生か!?というくらい謎の達成感もあり、3週間ほど向き合ったんだから何か残しておかなければという思いに駆られて今書いている。

学生さんに伝えたいこと

きっかけは上司から「明日から〇〇さん、実習生のケースとしてお願いできる?」の一言だった。たまたま自分が実習を快く引き受けてくださるような対象者さんを担当していたとはいえ、非常に有り難い機会だなと思い、すぐに「分かりました」と返事していた。

学生さんは急性期での実習を既に他院で経験していた。これまでどのようにまとめていたか聞いてみると、全てボトムアップで考えたとのことだった。恐らく私よりベテランなOTさんが学生さんにとっての〝ボトムアップ〟の基礎を築いてくれているであろうと思えば、なんとなく安心した。

そして今回は学生さんにとって最後の実習で、学生として関わる最後の症例さん。

せっかくだから、真のトップダウンとは順番は違えど、面接や作業遂行分析を含めた、柔軟なトップダウンで対象者を捉えられるよう、学生さんと一緒にまとめていきたい。急な依頼に驚いたけども、急性期からのOBPに関して学生さんと一緒に考えることができるかな、伝えることができるかな?と思うと、ちょっとワクワクした。

どうやって伝えるか

伝えたいことは色々あるものの、がっつりボトムアップで考えてきた学生さんにとっては慣れない思考過程。さてどうしようか。

まず学生さんにとって作業療法とは何か?を問いかけ、一緒に考える。そして面接の重要性や、そもそもトップダウンとボトムアップとは?について「作業で語る事例報告」を一緒に読んで確認。そして身体機能評価と並行して面接の時間もしっかり確保できるようタイムマネジメント。とりあえずこんな感じでいいのだろうか…と思いながらケースバイザーというものが始まった。

面接評価

学生さんのお話の聞き方はとても上手だったと思う。時折私からも質問させてもらってフォローしながら、症例さんは今困っていることや、朝起きてから夜寝るまでの生活を詳細に語ってくださった。

学生さんも面接の後は「これまでの実習では日常会話でしか話さなかったので、こんなにしっかり患者さんの話を聞けたのは初めてで…」と笑顔で言っていた。

(悔しいのはADOCを体験してもらえなかったこと…学生さんはADOCを全く知らなかったので、まずは見学をしてもらおうと思っていたら、まさかの学生さん体調不良で休み。急ピッチで進めねばならぬ状況では、私が面接で実施したADOCの結果を学生さんに説明し、後にCLと確認している場面を見てもらうしかなかった。)

統合と解釈

身体機能評価も一通り終え、良いまとめができそうだな〜、OTって楽しいって感じてもらえるかな〜と色々考えていた。

いざ統合と解釈。

面接では症例さんの価値観や生活が聴取できていたが、文章でまとめてみると方向性や目標にはほぼ面接内容が盛り込まれていない。これまでボトムアップでまとめた経験はあるので、活動を心身機能評価結果をもとに分析することは頑張って取り組んできてくれた。

そんなこんなで、まず面接の結果をどう捉えて目標や介入に結びつけるかということを少し考えてもらうようにした。作業療法雑誌に触れるいい機会かなとも思ったので、OTジャーナルの目標設定特集に目を通してもらった。

そしてトップダウンを前提とした統合と解釈の書き方が分からないと書けないのも当然だと後から気がついたので説明した。

(後から気づいてごめんなさい、でも今までと同じようなボトムアップで1度まとめてくれたからこそ、修正しながら見えてくるものもあったので良いと個人的には思っている!そしてトップダウンを前提とした書き方を伝えるには自分が勉強しなければいけなかったので、正直これが一番きつかったけど本当にいい勉強になった。)

症例さんは評価を終えて介入2日程度で転院となってしまったが、転院後も毎日少しずつレポートの修正を重ねて、なんとか形になった。

勿論スーパーバイザーにレポートも確認してもらい、即OKをもらえたが「相当指導したでしょ?あなたの文章だもん」と言われた。いやー、あくまでも私の伝えた文は点と点を繋ぐ役目をするだけで、出来るだけ学生さんの考えた文章になるように意識したつもりだったけどな。第三者から見たら私の文章だったらしい。私個人の考えに染めてしまったかなぁ、難しいなぁと思いながら少し反省。

ケースバイザーを終えて

対象者の価値観や主体性を大切にした関わりについて、どういう言葉を使ったら学生さんに伝わるか試行錯誤しながら進めるのは大変だったけど楽しかった。そして動作分析や活動を身体機能面から考える思考過程は自分まだまだだなぁと感じた。もっと普段から対象者のことをよく見なければなと思ったし、代理で入ってもらったOTにどう評価したか話を聞いたり、介入方法を相談しようと思った。

学生さんには要所要所で〝医療者の当たり前や自分にとっての当たり前は一旦排除して、クライエント立場に立って考えることを忘れないで、クライエントの立場で考えるのはOTの役割だ〟と伝えていたので、最後のフィードバックでもう一度伝えさせてもらった。本当に患者さんと程よい距離感で、笑顔で上手にコミュニケーションが取れる学生さんだった。学生さんは今回の実習をどう感じているだろうか。

来年から素敵なOTになりますように。



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