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療法士としての資質

療法士同士の関係性の中で〝療法士の資質〟について考える機会があったので、残しておきたい。

とある出来事

元々伝い歩きをしていたという対象者さんは、全身状態不良やせん妄によって離床が進んでいなかったので、当初より回復期転院方向で調整が進んでいた。通常当院ではPTのみで対応する疾患であったが、離床を促進する目的でOTも後から追加処方になった。

ある時PTは歩行練習を試みることもなく「環境が変わるとパニックになりかねないから自宅退院が良さそう」というアセスメントをカルテに残した。私は自宅環境に合わせた動作評価はまだ何もしていないのにちょっと無責任ではないか…?と感じ、リハビリの方向性をPTに相談しようとした矢先、このような言葉をかけられた。

「伝い歩きなんて家族も情報盛っているだろ?伝い歩きで転倒して運ばれたくらいだから、歩かない方がいいよ」

笑いながら言っていた。対象者やご家族に対して「歩かない方がいい」「情報を盛っている」という表現をするなんて、この人と方向性の話はできないなと思った瞬間から、厚い壁ができた。胸の奥が苦しいような、圧迫されているような感覚が始まった。

結局本人の強い希望で急な自宅退院が決まり、OTでは普段介入しない疾患で分からないこともあったため、他のPT上司に相談しながら、3日で歩行練習や自宅環境に合わせた動作練習を行い、退院時指導書類もOTのみで作成し、退院日にはご家族へ介助方法の指導も行った。

リハビリ職の協働

リハビリ職がカルテに残す「転院を推奨」や「自宅生活も可能そう」というアセスメントは、転機先を検討する上でかなりパワーを持っていると考える。それなりの根拠を示して書くべきだと思うし、慎重さも必要だと思う。

だからこそPT・OT・STの専門性を発揮して協働することで、それぞれの選択肢のメリット、デメリットを明確にすることは大切だと思った。それらを提示した上で対象者に選択してもらうことが理想だと思うし、今回この療法士の協働や情報提供が最もできていなかったなぁと反省した。

療法士としての資質

今回リハビリ職が協働するためには、まず療法士としての資質の問題もあると強く感じた。

ここで言う療法士の資質とは対象者の生活に興味を持てるかどうかや、〜させるといった医療者の操作的態度に違和感を持てるかどうか等である。

(ここで〝素質〟と〝資質〟という言葉で悩んだが、私は対象者の生活に興味を持つことも一種の才能だと思うのであえて〝資質〟という言葉を用いている)

私自身、患者さんに興味を持つことが得意か得意じゃないかと聞かれたら、後者かもしれない。でも仕事である以上、責任を果たす程度には、対象者の生活に興味を持つことは〝しなければいけないこと〟であると思うし、対象者を目の前にすると意外にすっと考えられている自分がいる時もあって安心する。

療法士としての生まれながらの性格はどうにもならないものか、そして上司に対する会話として成り立ち、且つ上手な言い回しで対象者の価値観や生活を伝える方法はなかったか、う〜ん、と今も頭を悩ませている。








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