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長崎 Vol.1

「はい、これかもめのグリーン個室の指定券」

9月のある日、友人Uの一言で長崎行きが決まった。長崎は彼とその友人のOの出身地である。彼らの街に訪れることは大変興味深かった。

また、私も長崎県での思い出が少なかった。諫早駅のベンチで寝落ちして、佐世保駅でドデカいハンバーガーにかぶりついた記憶しかなく、長崎市内には足を踏み入れたことすらなかった。初めて訪れる場所ほど興奮するものはない。

これまでは、旅行者としての自分の視点のみを大切にしてきたが、地元出身の友人の視点も加えることで、単なる観光から一歩先の"リアル"を追求する旅行にできたら良いなという気待ちで当日を迎えた。

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10月16日、大阪南港にて

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「City Line」こと名門大洋フェリーに、友人Oと乗り込んだ。このフェリーは、大阪南港と北九州は新門司港を結んでいるが、「名門」というくらいだから、名古屋と門司を結んでいたこともあるらしい。

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翌日17日朝5時、新門司港に到着。朝の小倉を散歩する。夜は居酒屋のキャッチがうろうろする小倉も、朝はシャッター街である。

...目の前に広がっているのは紛れもなく小倉の景色なのだが、なぜか九州に来た気がしない。寝て起きたら新門司だったからだろうか。

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そんな気分も小倉駅の接近ベルを聞いたら覚めていった。そういえば、関門トンネルを潜らずに九州に来たのは初めてだった。

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乗り込んだのは特急「きらめき」、門司港と博多を結ぶ通勤特急である。この5号にはハウステンボスの色をした車両が使われている。近年、リニューアルされたばかりで、木目を多用したインテリアとなっている。

博多駅で友人Uと合流した。九州で会うUは新鮮だった。

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いよいよ長崎へと向かう。特急「かもめ」で約2時間の旅である。

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コンパートメント席に肩を寄せ合って座る。コンパートメント利用客は我々以外見当たらない。

私にとって目に映る景色全てが感動的であった。「あ〜〜!ななつ星!」「これが水城か!」「海抜が低い!」...ただし、同行人2人にとってはただの里帰りである。この感動に対する温度差も、この旅行の特徴であった。

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しかし、このグリーン個室には3人とも面食らってしまった。

完全に独立した部屋、孤を描いた座席と、グリーン車と同じ1人がけのシート、ちっちゃく畳めるテーブル、ロッカーまでついている。かつてはこれで博多から鹿児島に行けたのだから羨ましい。「かもめぇぇぇ!皆さんもどうぞぉぉぉ!!」

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さて、佐賀平野は米どころだが、稲刈りが住んでいるところも見られた。列車はそんな秋深まる田園地帯の中を駆け抜ける。

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肥前山口を過ぎると、有明海沿いをゆっくりと走るようになる。遠浅の有明海、向こうに見えるのは炭鉱町の大牟田や荒尾だろうか?小長井を過ぎたあたりで雲仙の裾野も見え始めた。いよいよ長崎である。

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長崎駅に着いた。異様に使用感のないプラットホーム だった。今年の春に高架化されたばかりらしい。ここまで乗ってきた「かもめ号」は、フランスの高速列車のような顔をしている。787系という車両で、先述した豪華な設備が魅力的である。

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こちらが旧長崎駅の跡地である。港町の終着駅を思わせるだだっ広い構内である。Uから、このホームとかつての特急や夜行列車の思い出を聞いた。

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「ちっちゃい頃、ここにあかつきが停まっててさぁ...」

「復刻かもめのイベント連れていってもらったわ〜」

私にとっては初めて訪れた土地だが、彼らにとっては馴染みの地、ここでも感動の温度差が生まれた。

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それもこれも全て、来たる新幹線開業に伴う変化だそうだ。ここで、新幹線の経済性についてツラツラ述べる気は毛頭ない。

「変化に適応できない者は滅ぶ」と頭の良い人たちは語る。だが、そうだと分かっていても、過去を慈しんでしまうのはなぜだろう。

Vol.2へ続く


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