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長崎 Vol.2

フェリーで大阪南港を出て約17時間、博多からかもめ号に揺られて2時間、ようやく長崎駅に着いた。

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これまでとは打って変わって晴れた空だった。

なお、この時点で長崎駅には1時間近く滞在している。駅併設のスーパーマーケットで、長崎の台所事情について聞いていたのだ。スーパーは地域性を反映する、魚のすり身など、海からの恵みを使った食材が数多く並んでいた。

やっとこさ長崎散策を始める。

「どこか行きたい所はあるか」と聞かれた。

「ドック(修船所)」

ポカンとした顔をされてしまった。長崎には、ちゃんぽんやグラバー邸、カステラ、平和祈念公園など魅力的なグルメや観光地があるのは百も承知だった。ただ、私は以前からドックを見てみたくて仕方なかった。

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駅から車で10分程度南下したところにある小菅修船所跡、通称「そろばんドック」である。明治日本の産業革命遺産として世界遺産に登録されているようだ。

港町だった長崎には、土地柄多くの船舶が出入りしていたが、明治期に入ると大型船舶の修繕をする施設が必要になった。そこで、ドックを作り、船を陸に引き上げて修理をしたという具合である。

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船を引き上げるには、動力機関での牽引が必要だったため、海外から技術を輸入した。ど文系の身分にも関わらず、メカニックなものが好きなのだ。

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ちなみにこのドック、地元の人でもあまり行かないし、知らないようである。

地域の人にとって、格付けられた遺跡や遺産なんてそんなもんである。私も文化財の宝庫である京都に住んでいるのでよく分かる。

ドック見学を終えて、繁華街の浜町方面へ戻る。

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「うぉぉぉ路面電車ぁぁぁ!!!」

西日本の中小都市では結構な割合で路面電車が残っている。街で買い物をしてヒョイと電車に乗り込む... 昔からある輸送システムだが、今でも通用する気がする。マイカーで狭い市街地に乗り入れて駐車場を探すよりもスマートなときもある。

「はい、着いたよ。お前に名物を食わせる。」「(ん?福砂屋か?)」

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登場したのは「トルコライス」というお子さまランチの進化系のような料理。

なぜトルコなのかは分からない(たぶん「イギリストースト」とか「マンハッタン」あたりと同じノリ)が、もともとサラダ屋さんだったお店で、カレーやらフライやらを乗っけたライスを出したのが始まりだそうだ。

ご飯とカレーとフライさえあれば何でもありらしく、メニュー表には100以上の品がリストアップされていた。

「絶品です!」と言えるかは微妙だが、次来ても必ず食べるであろう、中毒性の高い料理である。

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腹ごしらえも済んだところで、港を横目に造船所を目指す。

長崎「GoTo」ライン、Go Toキャンペーンはここまで行き届いているのかぁ...。違う、これは五島列島行きのフェリー。長崎は入り組んだ海岸線と離島が多いことから、海岸線の総延長は47都道府県でトップだそうだ。

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そのため、波が穏やかで水深も深い入江が多く、長崎は港町として最強の立地だったわけだ。その結果、今日も造船所が置かれている。

(しかし、造船の業績も芳しくないようで、「三菱が消える」という話も聞くそうだ。)

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夜景で有名な稲佐山から市街を一望すると分かりやすい。手前が長崎市街で、入り組んだ海岸のために平地が少ない。左奥に青く畳む山は島原半島や天草諸島だそう。

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今度は稲佐山の反対側の斜面を降る。辺りは閑静な住宅街、道端には時折お墓が見られる。墓石に彫られた文字が金色に塗られていた。お盆になると、この墓の前で爆竹をあげるらしい。

しかし、ところどころに雑草が伸び放題の墓も点在していた。

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浜町に戻ってきた。路面電車で大浦地区へと向かう。ここの路面電車は、戦前製のものから最新のトラムまでネタが豊富である。30km/h程度しか出さないため、経年劣化が遅いのだろう。

なお、1~2年前に電停が観光地仕様に改名されたらしく、久々に帰ってきた2人はまだ慣れないようだ。

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こちらがグラバー邸。何と工事中だった。そうそう。建築物が不変的で絶対的なんてあり得ないんですよ。年々どっかしらが壊れて傷んでくる。

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最後にちゃんぽんも食べる。観光地向けでない方のお店に案内された。

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彼ら曰く、ここのちゃんぽんは長崎一らしい。

麺をすすりながらこんな話を思い出した。よく「昔と変わらない味のラーメン」という文言を耳にするが、「変わらない味を何十年と演出するために年々スープを濃くしている」という話である。ラーメンスープまで変化を要求される、というより不変なんてものは存在しないんだろう。

帰りのかもめ号も、またコンパートメントシートで寝ていた。

今回の長崎では地元出身者の目を借りながら街を見てきたが、外部の人では分からない変化を見つけることができた。案内型スタイルの旅行、機会があれば今後も取り入れてみたい。


P.S. 翌日は大分に訪れた。レンタカーを運転して、擦った。 fin.

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