「梅」派
3月のある日、まだ寒さの残るお日柄
水戸の偕楽園は梅の花で埋め尽くされていた。
遠くから眺めても地味、桜のような豪快さはない。
黒くて細い木に、ポツ...ポツ...と
けれども確かに、静かに小さく、そこに咲いている。
ほのかに漂う上品で甘い香り。
目も鼻も楽しませてくれる花。
梅が冬の終わりを知らせると、やがて桜が春の訪れを教えてくれる。
桜は春の風物であり、春を表す記号だ。
「花見」といえば桜の花見のことを指す。「花見」としか言ってないのに。
「さくら」を名付けられたポップスは毎年のようにリリースされている。
「確かに桜は豪華絢爛だよなぁ...でも僕は梅派よ」
時折吹き付ける坂東の空っ風に震えながら、彼らを眺めていた。