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妻と次男くん

妻と次男が揉めた

妻は次男が決めた塾の特別講習のスケジュールについて不満を漏らしていた。

「お金払うのは私たちなんだから、コマ数を半分にしても良いんじゃないかと思うのよ。」

前回の特別講習は最初こそ真面目に通った次男であったが、終盤の数回は起きるのが辛い事を理由に頓挫した事と、志望校の合格ラインを考えてそこまでお金をかける必要があるのか?という事が大きな理由だ。目の前で塾の見積書と睨めっこしながら愚痴をこぼす妻の言う事は最もである。子供の学習に費用をかける親は子供にとってのスポンサーのようなものであり、かけてもらった分の結果を子供には示してもらわねばならない。少なくとも我が家の家計を考えれば無駄玉は撃ちたくないというのは私も同意していた。

「スケジュールとコマ数決めたのは次男が?」

そう切り出したのは私だった。自分で考えて決めたのならばこれ以上口を挟む事はない。何より自分で決めた事について親にあれこれ言われるのは辟易してしまうだろうし、自分は信用されていないのでは?という気持ちも芽生えるだろう。かつて同じような経験をした私には次男の、自分の意志を尊重して欲しいという気持ちが少しわかる。同時に、親という立場を経験した事であの時の自分の母親の気持ちを自分の妻を通して知ることもできているのだ。否定とは違う、進路を案ずる気持ちと意志を確認したい気持ち。
なかなか交わらない両者の意思である。

次男がリビングに降りてきたタイミングで、私は床に転がってすやすや寝息を立てている末っ子を部屋に連れて行くよう妻に促すと、次男にそれとなく尋ねてみた。

「自分でやるって決めたんだろ?」

片手でスマートフォンを弄りながら私の質問を聞いていた次男は、目線をスマートフォンに落としたまま器用に指を滑らせながら話し始めた。
「俺が決めたのに減らしたらとか言うからママとは話したくないんだよ。せっかく自分で決めたのにごちゃごちゃ言われると嫌になっちゃう。」

そうかそうかとなだめながら、次男の気持ちを聞けて良かったと思った。機嫌次第では私の質問にも答えなかっただろう。厄介な案件と難しいお年頃なのだ。次男が風呂へ入るタイミングを待って、妻に先ほど次男から聞いた事を伝えると妻は眉間に皺を寄せた

「そうならそうと言えばいいのに。あの子スマホばかり見て話もまともに聞きやしないんだから。」

私は妻に、かつて自分が母に不信感を抱いた時の話をしてとりなそうとしたがあまり納得がいっていないようで、塾については次男の意向を受け入れてくれたのだが、結局私が言ってもダメなのよと不貞腐れてしまった。最後はどうなるかと思っていたが、なんやかんやで2人とも和解したようである。



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