【4.2.11】サポート部門に起こる変化(What to do with support functions?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
—————————————————————

■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/4211.html

■翻訳メモ
よほど小さな組織でない限り、組織の中には、何らかのサポートを担う人たちがいるはずです。大きい組織の場合だと、サポート機能をもった部門が必ず存在しているはずです。多くの場合は、サポート部門は本社にあって、提供するサポートごとに組織化されていると思います。人事チーム、財務チーム、監査チーム、リスク管理チーム、コンプライアンスチーム、購買チーム、そういう長いリストになっていると思います。

組織が「セルフマネジメント」に向かう過程では、サポート部門の権限や機能にも劇的な変化が訪れます。ほとんどの従来型の組織では、必ずしも、これらのサポート部門は本来的なサポートを提供できているとは限りませんでした。場合によっては、サポートではなく権力を行使している場合もありました。現場における役割を決めたり、やっていいことといけないことを決めたりといった行為のことです。現場に具体的に指示を出す場合もあったでしょう。しかし、「セルフマネジメント」になると、彼らは再び本来の、支援を前提としたサポートの提供者に戻ります。彼らは支配する力を失うわけです。

1つ例を挙げると、ファビ社には「上にあげる」という仕組みがあります。通常はチーム内ですべてを完結させますが、メンバーが自分のチームでは実行できない、もしくは、実行する意味がないと判断した場合、そのアイデアは他のチームに任せることができます。代表チームが認めたら、そのアイデアは外に出て、実行の権限は他のチームに移ります。そのような非常に美しい「セルフマネジメント」の実践方法は、アストリッド・フェルメールとベン・ウェンティングが著した『自主経営組織のはじめ方――現場で決めるチームをつくる(self-management how it does work)』(英治出版)の中で紹介されています。

ビュートゾルフ社のサポートチームは創業時より「セルフマネジメント」を行ってきました。ゆえに私も彼らから多くの学びを得てきました。先ほどの本のP.60(英語版)には彼らのことが書いてあります。彼らは、「セルフマネジメント」で働くとき、個人が責任を負うという考えを手放す必要があると言います。そうすることで、何よりも優先されるプロセスである、品質の維持が可能になります。もしこれが工場のラインの場合は、そこで従事する人たちがその工程に責任を持つということです。彼らは自らの発言に責任を持ちます。何度も言うようですが、これが、現場のチームが仕事の質に責任を持つということです。

次に、サポート部門が行うアドバイスについて見ていきましょう。私は、サポート部門は一つの部署として見るのではなく、機能の集合体という見方を見ています。マネージャーにも同様のことが言えます。私はマネージャーの仕事を総合的な単一のものとは見ていません。マネージャーが果たす1つ1つの役割の集合体と捉えています。もちろん、それらの1つ1つは、メンバーでもできるということです。

ここからは、サポート部門にとって、役立つと思う方法を、4つの項目と役割に分けてお話ししていきます。私は企業に対して、アストリッドとベンが話しているような専門知識を提供しています。組織が「セルフマネジメント」に向かって変化を始めるとき、アドバイスはタップ、つまり軽く触れる程度でなければなりません。誰かから指示される状態を作ってはいけないのです。この違いが分りますか?タップとはビールサーバーからビールを注ぐようなもので、軽くハンドルに触れる程度のことを言っています。専門知識が必要になった際、専門家は寄り添うものです。決して、ふんぞり返えるのではありません。これは非常にデリケートなことです。しかし、ビュートゾルフ社はこれをうまくやっています。専門家チームは、介護チームの1ブロックくらい先の少し手を延ばせば触れられるところにいます。そのやり方なら、結果的に専門家チームに権力が集中してしまうのではないかという懸念があるかもしれませんが、実際にはそんなことは全くなく、この方法が上手く機能しています。また、チームが試行錯誤しながら自力で解決をはかろうとする場合、専門家チームはアドバイスを提供することはありません。

ここで2つ、彼らの行う具体的な方法についてお話しします。1つ目は、必要な専門知識を組織の外部から得ようとする場合です。例えば、雇用に関する法務の専門知識が必要だとしたら、弁護士が必要となるかもしれません。もし、弁護士に頼むと勝手に物事を決められるという懸念があるのなら、別の外部の協力者を選ぶこともできます。その選択もチームに任されているのです。

ビュートゾルフ社が専門知識を扱う上で、もう1つ特徴的なのは、ほとんどの専門知識は介護士が持っているということです。多くの介護組織にはお抱えの医師や専門家はほとんどいません。ゆえに彼らの力に頼る前に、現場にある専門知識を最大限に活用して対処していきます。例えば、呼吸装置のことは、すべて知っている介護士がいます。そして別の介護士は特定の病理の専門知識を持っているといった具合です。したがって、その次には、どうすればそれらの知識をつなぎ合わせられるかというのが課題となってきます。イントラネットやSlackを使いこなす必要がでてくるのです。このように、多くの専門知識はチームの中にあるということが分ると思います。チームには様々なエキスパートが属しているというわけです。一時的に招集されるメンバーは、言ってみればバーチャルな存在です。専門知識は、トップから来るのではなく、液晶をタップすることによってつながるのです。

サポート部門の2つ目の役割は、ポリシー、ルール、ガイドラインなどを定義することです。これらは一般的には、組織の中で行います。外部委託することはまず考えられません。まして、組織が「セルフマネジメント」に向かっているのなら、なおさら、チームごとに定義が必要です。

次は、世界中に発電所を所有している会社の事例です。彼らの方法はとても素晴らしいものです。もともと、現地の施設に人事チームはありませんでした。リスク管理チームもメンテナンスチームもありませんでした。それらは本部がすべて管理していました。当時は、その都度、本社にお伺いを立てなければならなかったのです。彼らはその状況をどう変えていったのでしょう?最初、彼らは、発電所内に自発的なタスクフォースチームを作りました。その仕組みが広がっていき、ほとんどの工場や発電所で、例えばリスク管理に問題が生じれば、誰かが発言するといった具合に、各地で自発的なタスクフォースチームが組まれるようになっていきました。ワシントンの本部にじっといる誰かではなくて、現地のタスクフォースチームによって、自分たちに必要な規則やポリシーを定義することにしたのです。それは、その「定義する」という力が、本部からチームに移動したことを意味します。そして、それは、すべての発電所に広がっていきました。その逆のパターンを考えると、この取り組みがいかに素晴らしいか、よく分かると思います。もしポリシーを定義する場所は本部と定められていたら、あらゆるポリシーは本部からの押し付けになります。そのようなポリシーは、現地では全く機能しないことだってあり得るのです。

サポート部門の役割の3つ目は、制御機能についてです。ルール、ガイドライン、ポリシーなどを決める必要があるとき、何か強制的な力が働いてそのように決めさせられているのではないことをチェックする公平な目が必要になってきます。ここにおけるチェックというのは、実際にポリシーを定義することに比べたらさほど重要ではないと思うかもしれません。しかし、自発的なタスクフォースチームが独自でポリシーと機能を定義しているのなら、他のチームの誰かに頼んで、客観的にチェックしてもらうに越したことはありません。このような監査の機能にかんしても、チームの側に責任を持ってもらうのが良いと思っています。各チームのポリシーを、毎年、各チームで共有できるようになります。

サポート部門の役割の4つ目は、チームのための事務処理を代行する機能です。つまり、チームの主たる業務と直接関係のない作業処理のことです。例えば人事機能について考えると、採用活動ひとつをとっても、採用実務以外にも、福利厚生の申請や税務関連などの業務があります。それはすべてのチームで別個に行うことに意味はなく、専任者が一括で行った方が効率よく行うことができます。そのため、この業務はアウトソースが可能な業務と言えます。3~4人の専門家からなるチームが、全体の処理業務を担当するのが理にかなっていると思います。またそのチームは、「セルフマネジメント」チームとして、自発的に編成もできますが、チームの扱う領域は、文字通りのサポートの範囲でとどまる可能性が高いと思います。そのチームが、監査や組織のポリシーやガイドラインの策定にまで、活動の領域を広げていくことは考えにくいからです。こういった観点から考えていくのも興味深いものです。

ここまでは主に、サポート部門の変化について述べてきましたが、さらに付け加える必要があるとしたら、次は、本部チームのあり方についてです。以前は本部で中央管理していた組織が、その体制を変更して、スペシャリストを現地のチームに割り当てて組織再編を行ったという例は何度も話してきました。以前のビデオで、理想的な「セルフマネジメント」の状態とは、クライアントに対するサービス提供を最初から最後までチーム内で行い、そういった自律的であるためのリソースをチーム内に保有していることだと言いました。本社のサポート部門が、現地チームに再統合される場合もこの状態に近づくことになります。工場の場合なら、チーム内に購買担当がいるといった状態のことです。メンテナンスが必要といった場合もチーム内で解決できるようになります。かつて中央集権的な部署で専門的な役割を担っていた人が、各チームに割り当てられることになりますが、ほとんどの人は、現場の声が直接聞けるので、楽しいと言います。

もう一つのアイデアは、大きな規模の組織が、課題解決のためのサービスセンターを持つというものです。10万人の従業員を持つ企業で、その従業員の多くが工場で働いている場合などにはこの考え方が有効に働きます。それだけの従業員を抱える組織ですから、専門知識を持つ人は本社をはじめ、国内の様々な場所に複数いるはずです。しかし、誰がどんな専門知識を持っているのか、必要な人にたどり着くまで、気の遠くなるような道のりを経ることになると思います。多くは、探し出すことをあきらめ、アドバイスを求めないままといった状態になるはずです。そういった状況を避けるために、独立したサービスセンターを設けるというのがこの考え方です。サービスセンターには誰と話したら解決するか正確な情報を持った、常に相談に乗ってくれる担当員がいます。つまり、彼らは専門家につなぐためのパイプ役なのです。かくいう私も実際には見たことはないのですが、大規模な組織にとって、これは間違いなくよいアイデアのはずです。

ここまではサポート部門がどのように変化するかについて述べてきました。しかし、ここにはもう一つ大事な問題があります。本社のサポート部門にいた人たちの考え方の問題です。力のダイナミクスは、すべてに対してまんべんなく影響を及ぼします。彼らは、スキルや経験に応じて現地チームに再配属になりますが、それを求めていた人もいれば、一部の人にとっては、その配置換えは苦痛を意味します。本社にずっといた人にとっては、本人のキャリアパスともかかわってくるでしょう。チームの一員として働くことは、特に役職者にとってはつらい選択となるかもしれません。一部の人にとってそれは受け入れがたい変化になるはずです。嘆き悲しむ人もいれば、その反対に、メンバーと直接触れ合うことができる新しい働き方が自分に合っていると感じる人もいることでしょう。距離が近い分、メンバーからの信頼も直接肌で感じ取ることができます。本社にいた頃の社内政治や上司への忖度などとも無縁の世界がそこにあります。きっとそこでは、本来の意味で、他社貢献とは何かを知ることになるでしょう。他者への貢献ほど、人生に価値をもたらすものはありません。それに気づくのはつらい時期を経た後になるかもしれませんが、いずれにせよ、本来のサポート機能の素晴らしさをそこで知ることになることでしょう。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?