【6.7】戦略的計画は必要なのか?(Do we need strategic planning?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/67.html

■翻訳メモ
今回から2回にわたり、「戦略的計画」のことをお話したいと思います。私は何人かのリーダーと、「計画」を立てることの是非について話し合いました。その際、まるで、触れてはいけないところに触れてしまったような居心地の悪さを経験しました。別の言い方をすると、私たちはいかに無益か有益かを判断せず、盲目的に「計画」という慣習にならされているかが浮き彫りになったということです。当然その一方で、もし、「計画」がないとしたら、業務をきちんと行うことができるか、リスクがあるのではないか、コンパスを使わずに目標地点まででたどり着けるものなのか、そして、そもそもどこに向かって進んでいけばよいのかなど、そういった不安が湧いてくると思います。そのことはよく分かります。今回のビデオでは、リーダーたちに話した、私の考えを共有したいと思います。私は、「戦略的」と呼ばれるような変化は、メンバーが「パーパス」を感知することで起きると思っています。あるいは、セルフマネジメント組織の場合、誰もがそのセンサーになれるわけで、そのことで、変化の受け入れが可能になっていきます。その場合、メンバーの発する弱い信号にも耳を傾けることが重要になってきます。―たしか、フランス語にはそれにぴったりの言葉があったと思います。―そういった弱い信号を聞ける人が多くいる組織がセルフマネジメント組織ということになります。そういう組織は、一つの生命体として、成長とともに、組織自体が新しい方向にシフトしていくものなのです。

私が信じて疑わないことはもう一つあります。それは、明確な目的意識を持っている組織は、外から力が加わったとき、特定の方向にしか進めないということです。今から言う2社と比較するとよく理解できると思います。

まず、ビュートゾルフ社は、今まで一度も「戦略的な計画」を立てたことがない組織ですが、それでも、彼らはとても素晴らしい旅を続けています。本にも書きましたが、Favi社の例も同様に素晴らしいものです。一般的な組織は3〜5年先を見据えて、次の年の計画をしていることが多いと思います。しかし彼らの場合、計画は20年先に置いていると言います。20年先を見据えて翌日することを決めるということです。それを聞いた時、その言葉は私のハートを捉えて離しませんでした。私がクライアントのCEOと会話する際は、必ず、「なぜ、あなたは計画が必要と思うのですか?」と聞きます。「あなたがそれをやらなくてはいけないと思っていることからくるテンションや痛み、そして、問題は何ですか?」とも聞きます。私は、「計画を立てる」という行為が、習慣に支配された行為であることに気付いたのです。すべては「計画」にそって進めるや、計画を立てるのは当然だ、などと思っているうちは、私たちはまだ、不確実性を友として生きる術を学んでいないということです。

「計画」にかんしては、もう一つ、気づきがあります。組織が「セルフマネジメント」に移行すると、すべてが喜びで満たされるだけでなく、同時に苦痛も経験する場合があるということです。すべてが刷新されたということは、新たに学ぶことの重要性が増したということです。そこでしなければならないのは「非難」ではなく「学習」です。つまり、あなたは、新しいゲームを始めるわけです。このように言うと、「計画がなければどこにも行けない」という人は必ずいます。もしくは、「私たちはどこに向かったらいいか明確な感覚を持っているかもしれませんが、すべてが新しいということは、何か起こったとき、それへの対応策は持っていないということですよね」などと言います。「セルフマネジメント」の場合、どこに行くか、もうマネージャーは教えてはくれることはありません。それゆえの「痛み」は必要な経験かもしれません。

ある製造業のCEOとの会話です。彼らは、長年、かなりのオールドスタイルで確立された経営をやっていましたが、4年弱も期間で、見事に「セルフマネジメント」への移行を成功させました。メンバーのすべてが、「正しさ」を感知してそれを実行しただけで、売上げの2倍の負債があった会社が、すべての借金を返済し、しかも売上げが4年前の10倍になったのです。ただ、その時点でも、彼は、計画は必要と考えていました。これはある意味、私にとっても大きなチャレンジでした。私は彼に、「計画を立てる」というのは会社がうまくいっていることを外部にアピールするためなのかと質問しました。その「計画」が、本当に事業に必要なのかどうかを問うたのです。彼は、それはよく分からないと返事しました。私の質問は彼にとって、詰問のように聞こえたかもしれません。何にこだわっているのか、そこにどんなメリットがあるのか、かなりしつこく聞いてしまいました。私は、一般的な組織の場合、戦略的な計画は必要ないと感じていました。彼は、私の言うことを理解してくれて、「吟味する必要はある」と言ってくれました。続けて、ビジネスに方向を与えるために、本当に「計画」が必要なのか、他の組織のことももっと調べてみたいと言ってくれました。

私が思うに、「計画」を捨てる理由は4つあります。まず、1つ目は、市場やテクノロジーに急な変化が起こった時です。突然、まったく新しい世界に放り込まれた、そんな感覚になる時です。何も分からない中であるからこそ明確な指針が必要であると思うかもしれませんが、そうではありません。その感覚を捨てることで、まったく新しい機会に対して未来が開けます。まずは、そこで立ち止まって感じることが必要になります。

次は、高額の投資を行う時です。何も情報がない中で、新しい工場を建てるなど、いきなり大きな投資計画で動く組織があると思いますか?通常は決定を下す前に、立ち止まって、あらゆる情報を集め、それを基に判断を下すでしょう。先に計画ありき、とはならないはずです。

次の3番目は、言葉がまだ出そろわないという場合です。多くの人が、とても多くのことを感じとっている時期は、システムが自己修正をはかる時だといえます。その際、一部の人に対して、多くの人は、その人たちは大きな方向修正が必要だと感じるでしょう。そういう時は、すべての可能性に対してオープンな態度をとって、感覚が湧き上がってくるまで、時間をかけた方がよい時です。

次に、「セルフマネジメント」を始めようとしている時というのが4番目の理由です。その中にいる人は、組織がこれからどこに向かうか具体的な方向感がないことに気付くはずです。それゆえ、「パーパス」が共有できていないと、それがリスクになります。具体的な「計画」は不要ですが、「パーパス」に照らされた方向性は必要だからです。

これらが「計画」は不要だと思う4つの理由です。

振り返って、このビデオにおける私の「問い」は、本当に「計画」は必要なのかというものでした。もう一度、それがあることによって生じる、緊張や痛み、そしてそこから生じる問題などについて思いを巡らせてください。もしそこに何の感覚もないのであれば、あなたは「計画」のパラダイムにどっぷり浸かっていて、もう何も感じられなくなっているということです。私たちの多くは、計画することが当然という古いしきたりに何の違和感も持てないままなのです。その「計画」が本当に現実的なのか、あるいは、単なる絵に描いた餅なのか、それとはまったくお構いなしに、「計画」こそが重要だと言います。「計画」にこだわることにどれだけの正当性があるのだろうと、何回も、何回も、自分自身に問うてみる必要があります。

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。