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日本人とユダヤ人のルーツは同じというのは本当か?


誰がそんなことを言い出したの?


スコットランド人宣教師ノーマン・マクレオドという人が、『日本古代の縮図』という本の中で紹介したのが最初と言われます。その本の中で、日本人はユダヤの失われた十部族の末裔であると紹介されました。マクレオドの後、中田重治、佐伯好郎、小谷部善一郎らの宗教思想家によって一般に広められました。
 

ユダヤの失われた十部族とは?


旧約聖書に記されたイスラエルの12部族のうち、行方が知られていない10部族(ルベン族、シメオン族、ダン族、ナフタリ族、ガド族、アシェル族、イッサカル族、ゼブルン族、マナセ族、エフライム族)のことを指します。日本人以外に、イギリス人、アメリカン・インディアン、アメリカの黒人が失われた部族の末裔と言われます。それぞれ、一度もユダヤ人を迫害したことがないという共通点があります。
 

逆に日本人がユダヤ人の祖という説もあるが


陰謀論でおなじみの酒井勝軍が「ユダヤ人の祖は日本人である」と唱えました。ただし、後年、酒井は、日本は極東にある島国。さらにキリスト教から見たら異教徒という不名誉も背負っている。そのキリスト教を奉ずる欧米列強を見返すには、日本人のルーツをユダヤにするしかなかった、と自説が虚偽であったことを告白しています。



とここまで、明治から大正にあった日猶同祖論のあらましでした。「日本人とユダヤ人のルーツは同じ」という説は100年以上前からある、いわば一つの都市伝説なのです。いわゆる「陰謀論」も同じような傾向を持っています。大正時代のシベリア出兵の折、ロシア革命の後、現地に逃れてきていた白系ロシア人たちによってもたらされたものとされます。当時から、フリーメーソン・イルミナティらが世界征服を企んでいるとされていました。今、まことしやかに言われている陰謀論も100年の歴史があるということです。ということは、きっと100年後も、陰謀論は陰謀論のままで、その時の世界的リーダーなどメンバーが入れ替わるだけで、基本的な姿は変わらないのでしょう。
 
では、日猶同祖論はこのまま都市伝説で終わらせてよいのかという議論が必要です。ご存知の方も多いと思いますが、私は、まったく別の分野から関連して一致するこれらの説は覆せないのではないかと思っています。
 
①出雲口伝
出雲族は紀元前にアーリア人の侵攻から逃れるため、インドから砂鉄の取れる出雲に辿り着いたドラヴィダ人である。そして、ドラヴィダ人のルーツは古代メソポタミアにあり、つまり、ユダヤ人である。
 
②日本語のルーツはインドのタミル語
大野晋の「日本語=タミル語接触言語説」によると、約2000ある日本語の基礎語のうち、約500個がタミル語と一致。日本語のルーツは東アジアには存在しない。タミルというのは、インド、ドラヴィダの一地方。言語の分析調査によると、日本人のルーツは、ドラヴィダにある。上記と同様に、ドラヴィダ人のルーツは古代メソポタミアにあり、つまり、ユダヤ人である。
 
③Y染色体説
よく知られた説なので、詳細はWikipedia等に任せたい。遺伝子の中の「Y染色体」と呼ばれる染色体を持っているのは世界の中で日本人とユダヤ人だけ。


 
そう言うなら、日本人とユダヤ人の先祖は共通ということでいいじゃないかと思われたかもしれません。しかし、ユダヤ人とは誰か?という問題は、歴史的にも重い問題として残っているのです。


 

ユダヤ人とは誰か?


ナチス・ドイツはニュンベルク法によってユダヤ人を選別しようとしました。三等親まで遡り、1/8以上のユダヤ人の血が入っていればユダヤ人とされました。同様に、ユダヤ教信者についても、祖父母の3名以上がユダヤ教を信仰していたらユダヤ人とされました。その他、両親や祖父母の信仰によって、「混血」が細かく定められました。このように、血と信仰によってユダヤ人が規定されました。しかし、このやり方だと、キリスト教信者のドイツ人の中にも、万単位でユダヤ人が存在するという事態が起こりました。日本人はかなりの程度で日本人です。血と居住地域と信仰にほとんど変化がないからです。しかし、ユダヤ人は、民族と規定するのが難しいくらい、かなりの程度でユダヤ人ではないのです。


 
しかし、日本人は純血かといったら、それも、渡来人らの流入が減った4~5世紀以降のことです。結局、日本人のルーツといっても、どうやらアフリカ系の黒人ではなさそうだ。ヨーロッパ系のアーリア人ではなさそうだ。と、消去法で、この程度の粒度でしか規定できないような気がします。裏返せば、日本人のルーツは、きっと、韓国系でもあり、中国系でもあり、インド系でもあり、ユダヤ系でもあるということです。

ですので、「日本人とユダヤ人のルーツは同じというのは本当か?」と問われれば、否定が成り立つだけのくくりがないため、心がどこかざわつきながらも、本当、と言わざるを得ないのです。


神風とはユダヤのこと!?

同祖かどうかは別にして、日本とユダヤの深いつながりについては書いておく必要があります。日露戦争の折、日本政府は、海外資本に対して8200万ポンドの借款をしました。そして、その約半分にあたる3925万ポンドを買い取ったのがユダヤマネーだったのです。ユダヤ系のドイツ人、ジェイコブ・シフ率いるアメリカのクーン・ローブ商会が、しかも1社で、その借款を引き受けたのです。シフは、同胞のユダヤ人が、ポグロムと呼ばれるロシア帝国による迫害・殺戮を受けていたことに怒り、ロシアを倒すために、日本を支援したのです。まさに、この神風と言ってもよい僥倖が起こらなければ、日本はロシアに対抗するどころか、当時の国力の差なら、欧米に蹂躙された他のアジア諸国と同様に、ロシアの植民地となっていてもおかしくなかったのです。
 
第2次世界大戦の折も、同盟国ドイツからの強い要請にもかかわらず、日本は親ユダヤを貫き通しました。満州と上海に、それぞれ、2万人のユダヤ人の亡命者を受け入れました。杉原千畝が2000人のユダヤ人に対してビザを発行したのは有名な話です。再び、ユダヤマネーの恩恵に預かれないか、模索していたと言われます。しかし、2度目の神風は吹きませんでした

 
※参考文献 内田樹『私家版・ユダヤ文化論』、他



最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。