【4.2.4】心理的オーナーシップのレベルを見極める(What's the level of psychological ownership?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/424.html

■翻訳メモ
今回のトピックである心理的オーナーシップのことは、信頼と自己修正を扱った以前の回でも話しました。このトピックは非常に重要なので、何度繰り返してもいいと思っています。なぜなら、それは、「セルフマネジメント」に向けて行動を開始すると、遅かれ早かれ、必ず遭遇する避けては通れない問題だからです。困難に直面した時、そこでのリスクに対する許容度は非常に重要になってきます。その許容度を決めるのは、ある1つの重要な変数にかかっています。それこそが、組織内に存在する心理的オーナーシップです。メンバーにとっては、何をするにしても、その事がいかに「自分事」になっているか問われることになります。それは「良い仕事」に対する基準値と言い換えてもいいでしょう。組織のメンバーがそれぞれに「良い仕事」に対して意識を持っていると、移行はスピーディーに進み、リスクへの許容度も高まってきます。もちろん、移行がすべて完璧にスムーズに進むなどということはありえません。しかし、皆の「良い仕事」をしたいという気持ちが強ければ強いほど、失敗への許容度も高まり、そこからの立ち直りも早いのです。「良い仕事」をしたいという気持ちのある人は、何事にも積極的に取り組みます。パーパスや顧客のためにその気持ちが発揮されやすくなります。

その逆に、心理的オーナーシップか低い人は、次のような特徴を持っています。まず、皮肉屋であること。そして、指摘ばかりして自分は動かないこと。仕事の目的は給与であると言い切る傾向があること。結果に対する責任はマネージャーとトップマネジメントにあると信じていること。そのため、与えられた仕事しかしないこと。組織がリスク取って、移行を早めようとし、彼らに自由を与えてしてしまうと、彼らは喜々としてそれを受け取ります。そうなると、それ以降は、驚くほど悪い方向に向かいます。そんなリスクは取ってはいけません。厳しい言い方をすると、彼らは自分の仕事にプライドを持っていないのです。その状態だと、システムが自己修正を起こすこともありません。これは、本当に知っておいてもらいたいことです。組織の持つ心理的オーナーシップにきちんと目を向けるようにしてください。

一つ、興味深いテーマを紹介しましょう。組織の心理的オーナーシップが高くもなく、低くもなくといった状況の時です。では、その状態から、どうやって心理的オーナーシップを上げていきますか?当然、「セルフマネジメント」は前に進めて行かねければなりません。そこで絶対にやってはいけないのは、「オレンジ」の視点を使ったテクニックに依存した方法です。つまり、アメとムチの使い分けといった方法です。これは絶対にいけません。科学的に、メリットよりもデメリットの方が大きいことが証明されています。人を大事にしているということをアピールしても、本質が伴っていなければ、簡単に見透かされてしまいます。では、仕事や組織を誇りに思ってもらうためには、どのようなことができるでしょうか?

ここでは、私が実際にその効果を体験した4つの方法を紹介しましょう。1つ目は、組織のパーパスを明確にすることです。メンバーにとって、組織が重要なパーパスを果たしていると確信できていることは、組織にとっても彼らにとってもとても重要なことです。自分の仕事がどのように社会とかかわっているか、関心を持つきっかけになります。組織にとても魅力的なパーパスがあり、やるべきことが分かっている場合と、明確なパーパスがなく、何をやったらいいのか分からない場合とでは、そこに雲泥の差があります。

2つ目は、パーパスがあっても、それが浸透していない場合のやり方です。実に多くの組織がこれに当てはまります。病院など、人の命を救うというパーパスが明確な場合でも、そこで働いている人は、しばしばそれを忘れてしまっています。その一方で、日々の仕事のなかで起こる、ちょっとしたことでも、それをたたえ合う組織も存在します。そうやって、お互いを認め合うことによって、パーパスへの理解が深まります。(そして、まさにこれの逆が一方通行のトップダウン・コミュニケーションです。)人と人との関係性を使って、パーパスに対する理解を深めるには次の方法があります。組織のメンバーがハッシュタグをつけて、自分たちのちょっとしたことをビデオにして流したり、自分たちがしてきたちょっと誇りに思っていることを共有したりするのです。

3つ目は、以前のビデオでかなり詳細に説明した自動修正システムの活用がそれにあたります。そのシステムが力を発揮するには、仕事の結果を直接知ることができるかどうかにかかっています。それは、優れた仕事をしたときは、優越感を持つことができ、良くない仕事をした時には痛みを感じるといったことです。最近は、多くのチームが、あまりに自らの仕事の結果から遠いところに置かれてしまっています。彼らは自分の仕事だけをします。そして、クライアントが自社の営業担当や財務部門に不平を言ってきても、彼らは、自分は関係ないという態度を取ります。自分のした仕事が良い仕事だったのか、それともよくない仕事だったのか知るすべがなければ誰でもそうなってしまいます。もし、変えることができたなら、それは心理的オーナーシップを植え付けるための重要なステップとなり得ます。

最後の一つは、メンバーの、組織のトップに対する信頼の度合です。それによって、組織の持つ心理的オーナーシップは変わってきます。多くの組織では、メンバーは会社のトップのことを信用していません。そして多くの場合、これは間違いなく、トップは周りから信頼されていないという事実に気づいていません。以前のビデオで、ファヴィ社やAES社における組織内での信頼関係構築の仕組みを紹介しました。人と人が同じ場所で同じ時間を過ごすことは多くの人に気づきを与えます。そしてそこに会話があるだけで、メンバーはトップとの「きづな」を感じられるようになるのです。そして、それは、結果的に、組織の文化となっていきます。なぜ、ここでトップマネジメントのことを出したかというと、これまでは、トップマネジメントこそが、会社の顔であったはずです。もちろん、「セルフマネジメント」によって、それがそうでなくなってしまったのですが。しかし、それでも、トップマネジメントの存在は重要です。メンバーがトップマネジメントとの間に、強い信頼関係があると認識しているのであれば、心理的オーナーシップの向上には期待が持てます。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。