【4.1.14】自己修正システム:リーダーの役割(Self-correction: the role of leaders)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/4114.html

■翻訳メモ
まず、前の2つのビデオが、あなたにとって、自己修正システムの重要性と、システムが自己修正を起こす際、何が必要になってくるか、それらの理解につながっていれば幸いです。今回は、そのトピックに、もう1本動画を追加して、組織におけるリーダーの重要性について、実践的な話をしていきたいと思います。システムが従来の管理型から自己修正する「セルフマネジメント」に切り替わる時、リーダーが担う役割はどのように変わるかというのが今回のテーマです。

従来の組織では問題が発生した時、リーダーは、それを解決するために現場に入ってそれを解決する必要がありまました。もしくは、担当を任命して、問題の解決に当たらせました。「セルフマネジメント」に移行すると、解決法が根本的に変わります。リーダーの役割は問題を解決することではなくなります。リーダーの役割は、その問題に迅速に対処する自己修正可能なシステムが動く支援をすることになります。繰り返します。リーダーの役割は問題を解決することではなく、システムが個々の問題に対処できるよう、サポートすることです。私はこのことを、ある大学病院のCEOとの会話の中で気付きました。

CEOである彼女は、組織を「セルフマネジメント」に移行しようとしているときに、この問題に直面しました。ある活動が低下した看護師のチームがありました。もちろん、彼らにもその自覚はあったはずです。なぜなら、彼らはそれほど仕事がなかったからです。一方で、他のチームは過重労働が原因で弱っていました。明らかにバランスを整える必要がありました。従来は、CEOである彼女か主任看護師かが、人の余ったチームから足りていないチームに配置転換するよう指示を出すことでした。しかし、彼女は、それを古いトップダウンの方法のように感じたため、その方法は採りませんでした。彼女は、まず、スタッフが余っているチームのところに行って、スタッフ過多の状態であると指摘した上で、そのスタッフをどう再配分するか自分たちで決めて、その計画を彼女に提出するよう求めました。彼女はそれが正しいことだと思いました。なぜなら、彼女は「セルフマネジメント」とは、トップダウンをしないことだと思っていたからです。しかし、チームからは何も返ってきませんでした。彼女はとても失望したといいます。そして、彼女は再びチームのもとに向かい、計画書を提出しなかった理由を聞きました。その時の彼らの答えは、彼らの人員は過剰ではないというものでした。今のままで良いという答えが返って来ました。彼女はその答えを聞き、組織はまだ、「セルフマネジメント」に移るのに十分に熟していないと思い、そして、イライラを募らせました。この種類の話をすると常に感じるのですが、「セルフマネジメント」を開始するのは、何かのテンションが必要なのです。言うまでもなく、そのテンションは、あまりに多くの仕事をこなして苦しんでいるチームと、仕事が少なすぎて、楽しくゆったり時間を過ごしているチームの間にあります。「セルフマネジメント」の起動には、テンションの存在を感じ取ることが重要です。彼女はそれがイメージできていなかったのです。彼女がチームのところに行って、行動計画を立てるよう言った行為は、システムが自己修正を起こす支援とはならなかったのです。結局、双方のチームから自主的に参加を表明した、2人ずつの看護師たちとミーティングを開き、活動のレベルと作業量のすり合わせをして、この問題の解決を図ったということです。

もし、あなたが、仕事がほとんどない状態でのんびり過ごしているチームにいたとしましょう。CEOが来た時、その提案を拒んで、自分たちにとって、今が最適だと言い張ることは簡単にできるでしょう。しかし、他の同僚たちのチームで、誰かが病気になって、他のチームから人を呼んで、何とかやりくりしている状況があったとしたらどうでしょう?そんな態度はまず取れないのではないでしょうか。つまり、忙しいチームが暇なチームに声を掛け、ミーティングを持てばすぐに問題は解決するのです。ほかには、3か月か6か月おきにミーティングを開き、すべてのチームメンバーが集めるのも良い方法です。そしてそれが、問題が自ずと解決されてゆく方法なのです。テンションは解消し、自己修正メカニズムによって問題は解決されていきます。そのCEOの彼女に出会った日、私は、「セルフマネジメント」に移行する際のマネジメントにおけるリーダーの役割は、問題を解決することではなく、システムが自己修正するために、システムが機能するように支援することだと理解したのです。そのためには、それが自然なことなのかどうかを知るためのシステム思考の知識も必要かもしれません。あなたがそうでないとしても、きっと組織の中には、そのような思考が得意な人がいるはずです。その人を巻き込んで会話が起る仕組みやルールの設計をしていったらいいと思います。

もう1つ例を挙げましょう。同じ病院で、かなり長い期間、「セルフマネジメント」を行っていた部署がありました。それは、助産師のチームでした。メンバーは赤ちゃんが生まれる産科病棟にいました。そして、責任者が辞めた後は、そのポストは埋めずに、自分たちだけで組織を運営していました。そのチームは本当に素晴らしく機能していました。「セルフマネジメント」の見本のようなものでした。ただ1つだけ欠けていることがありました。それは、そのチームは結果に責任を感じていなかったのです。このチームが財務的に健全と呼ばれるレベルは年間の出生数が4,000ほどで、少なくとも月に300の出生数を維持するのが必要であることは彼らも分かっていました。当然ピークの月には多くの人的リソースを必要としました。しかしそれを達成するにはメンバーの体力が持ちませんでした。チームの労働量は、適性労働量に対するの200パーセントから300パーセントの範囲で推移しました。しかし、メンバーたちは、その数字が意味することに関心を示しませんでした。もし、あなたが、リーダーとしてその空席のポジションに就いたとしたら、一体何ができるでしょう?彼らが結果に責任を持ち、さらにその結果に誇りと痛みが感じられるようになれるよう、彼らと一緒に設計することを考えてください。チームはとても多くの出産に携わってきました。それは素晴らしいことです。そして迅速に自己修正もできるチームです。メンバーが財務的な数字に責任を感じられるようになるにはどうしたらよいのでしょう?ブレーンストーミングができるならやってみてください。

いかがでしょう?例えばこんなアイデアがあります。毎月開かれる定例の経営会議に助産婦たちも参加し、チームの運営状況を発表するという方法です。その結果を発表した助産師は当然、チームの運営状態が分かります。そして、毎回異なる助産師が会議に参加したら・・・。これはたくさんある手段の1つにすぎません。メンバーは、一日のうちの多くの時間を大きな病棟のどこかで過ごしますが、おそらく、勤務時間に数字にも触れることでしょう。だとしたらインセンティブをつけるというのはどうでしょう?良い結果が出れば給料が増えます。または、彼らがやりたがっていることを自由にできるようにしたらどうでしょう。彼らは、自然な分娩のために、もっとバスタブが必要と思っているかも知れません。良い結果が出たら、施設への再投資も可能になります。これらは良い方法の一つかもしれませんが、リーダーはもっと多くの良い方法を考え出すことができます。私があなたに言っておきたいのは、リーダーの役割が変わるということです。リーダーの役割はもはや問題の発生を防ぐことではありません。リーダーの役割は問題を修正するために介入することではありません。リーダーの役割はシステムがどのように自己修正するか、チームのメンバーが考えるのを助けることです。リーダーは、どのようにテンションを感じ、そして、それをどのように扱うかが重要です。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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