【6.6】偽のパーパス(Fake purpose)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/66.html

■翻訳メモ
「パーパス(組織の目的)」という言葉は、最近、特によく聞かれるようになりました。しかし、誇大宣伝効果というか、多く人が過剰に反応しすぎているような気もします。すべての組織は、「パーパス」を宣言する必要があるという考えは、ある意味、最近の流行です。例えば、多くの人は、「ミッション・ステートメント」が必要だとも思っています。企業の付加価値を高めるには、パーパス・ドリブン、または、パーパスフルな組織であることを外の世界に向けて美しく表現せねばならない、という具合にです。そしてそこには社員のエンゲージメントを高めるという目的も含まれています。しかし、実際にその「ミッション・ステートメント」が効力を発揮するかといえば、必ずしもそうではありません。それらは、「偽のパーパス」と呼んでもよいような代物だからです。忘れないで欲しいのは、「パーパス」は宣言するためにあるのではありません。また、何らかの経営的な意図をもって定めるものでもありません。最低限、「パーパス」とは感じるものです。湧き上がってくる声に対しての反応です。そして、その声を、外の世界と共有したいと思う意志です。いま存在している「ミッション・ステートメント」のほとんどは、そのような作りになっていません。

「偽のパーパス」を定義することはいたって容易です。例えば、今あるもの、今の営業活動などを、そのまま「パーパス」であるとして宣言してしまう方法があります。この「パーパス」は「偽のパーパス」です。もしあなたが、あなたの組織の「パーパス」を作ろうとしているとしたら、少なくとも、すでに行っていることを、高額な包装紙を持ってきて、それでくるんでしまうようなことをして平気でしょうか?私はそれが禁止だと言っているのではありません。その組織がそれでいいのならそれでよく、特に文句をつけるのではありません。しかし、もし、あなたの組織がその高額包装紙の方向に進もうとしているのであれば、そこに「真のパーパス」はないということだけは伝えておかなければなりません。「パーパス」とは、従来からある企業活動が目的化したようなものではなく、その組織に重要な選択を差しせまるくらいの、本来は、なにか、掻き立てるようなものです。

最近、世界規模で事業を展開している有名企業の、多くのフォロワーを抱えたあるCEOと会話しました。彼女は「パーパス」について話したいと言いました。誰が聞いても響きのいいものを見つけたいとも言いました。そうは言いつつも、彼女は自分の言葉に何かもの足りないものを感じている様子でした。そして彼女は言いました。「きっとそこに足りないのは具体性だわ」。私はびっくりすると同時に、彼女の抱える問題も理解しました。もし、彼女や彼女の組織が「真のパーパス」にまでたどり着いていたら、その「パーパス」の方から、特定の具体的な事柄に対して「イエス」や「ノー」とは言わないものです。本来、「パーパス」とは、もっと広義に及ぶものです。ですので、私は、彼女に理解できないと告げました。その理由を説明すると彼女は理解してくれたようでした。これはあなたに対する確認のポイントでもあります。「パーパス」は、非常に多くのものを包含し、かつ曖昧なものです。そして、何を選択したらいいのかまで教えてはくれません。もし何かを教えてくれるとしたら、それはおそらく「偽のパーパス」だと言えます。

組織のかかげる「パーパス」を見て、それが偽物であるかどうかチェックする方法はほかにもあります。その「パーパス」が、世界の破壊を継続する理由付けになっているかどうかという視点でチェックします。現実、それはビジネスの世界でだけでなく、非営利団体や教育やヘルスケアの産業でも起きています。それらの破壊活動は、私たちが会話を始めなければならないところまできています。私は最近、組織が世界に利益をもたらしているのか、それとも、世界を破壊しているのかを調べる3つ質問からなる簡単なテストを思いつきました。

1番目のテストは次のようなものです。あなたの会社が世界に向けて発信している広告をすべて止めたら、あなたの会社の売り上げはどうなるでしょうか?つまり、広告が許可されていなければ、マーケティングができなければ、例えば、それがコカ・コーラであったとしたら、その売り上げはどうなると思いますか、という質問です。コカ・コーラの宣伝がなくなったときのことを想定してみてください。コカ・コーラの場合、何億ドルもの売り上げが原資となって、偽りのニーズを生み出す広告を作り出します。消費者は、本心から製品そのものを飲みたいと思っているのでしょうか。つまり、あらゆる意味で破壊的なその製品を世界は本当に望んでいるのかという問いです。

2番目のテストは、製品やサービスを購入する前に、それらの製造工程を映した5分間のビデオを見なければならないとしたら、その製品の売上げはどうなるか、というものです。コカ・コーラの場合、ペットボトルに入れられるすべての糖類が公開されるでしょう。そのペットボトル自体も、何世紀、あるいは何千年もの間、海を漂流するものです。それらが浅瀬に溜まったら、それを取り除く人の大変さを感じてみてください。その動画には、コカ・コーラ社のロビー活動の様子も映っています。ペットボトルの中身をベールにくるんだままにして、子供やほかの人たち販売できるようにするため、表には出ない活動を続けている様子です。購入する前に消費者がそれを見た場合、売り上げはどのように変化するか、考えてみてください。

3番目のテストはあなたへの質問です。製品やサービスにはあらゆるコストが反映されているという事実についてです。コカ・コーラの定価には小児肥満の訴えと戦うためのコストが上乗せされています。水のコスト以外にも環境汚染に対処するためのコストが含まれています。その製品自体の原価は極めてゼロに近いものです。

これらのテストにかんしては、あなたの組織に当てはめて、是非、実施してもらいたいと思います。ひょっとしたら、あなたが疑わしいと感じることがあるかもしれません。このコカ・コーラの行いを知った後でも平気でコカ・コーラを買えてしまうという気質であり行為が、それがまさしく、現在の大企業だと言えるのです。

彼らは世界に発信している「パーパス」を持っているにもかかわらず、破壊的な活動に加担しています。それは一体どういうことなのでしょう。コカ・コーラを例にして、もう一度言います。彼らの「パーパス」は、「世界に幸福とポジティブさをもたらし、そして世界をリフレッシュする」といったものです。何度も言いますが、それは本当の「パーパス」ではありません。とても内側からこみあげてきたものとは思えないからです。コカ・コーラがいま何をやっているかを知った時、世界は本当にその企業を必要とするのかを考えてみてください。繰り返しになりますが、これらはほんの一例です。次は、あなたの組織に目をやってください。

私は、あなたが極端な行動に突っ走ってしまわないよう気をつけながら話しています。しかし、そのテストをすることで、あなたは自分の組織に疑いの目を向けることになる可能性があると思っています。例えば、「パーパス」が、世界に何か前向きなものをもたらすようなものだったとして、それがあまりに食い違っているといった場合です。あなたが自分の会社のことを普段からどう思っているか、私には分かりません。いずれにせよ、答えはそんな簡単なものではないということです。もし、あなたの会社の営業活動が何かを破壊していることが分ったとしても、あなたの生活や生計はそこに依存しているはずです。もし、コカ・コーラが、正義のために、明日で会社をたたみますと言ったら、多くの人が路頭に迷うことになります。いずれにしても、単純な解決法は存在しません。しかし、私たちには、まず、「偽のパーパス」は宣言しないという行動をとることはできます。そして、すべてが破壊されようとしている現実に向き合うこともできます。答えは私にも分かりません。それでも、いま言ったことを続けていくことはできます。そして、「真のパーパス」となりうるような答えが浮かびあがってくるのを、耳を澄まして待ち続けることもできます。

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。