【4.1.5】「セルフマネジメント」の誤解1:それはリスキー(Misconception 1: It's risky)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
—————————————————————

■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/415.html

■翻訳メモ
おそらくあなたは、「セルフマネジメント」に魅力を感じてはいても、同時に、「『セルフマネジメント』はかなりの危険を伴うぞ」、とささやきかける心の声とも戦っているはずです。それがまだ新しく、ミステリアスで、テストもされておらず、実験的であるからでしょうか?しかし、今言ったことの答えは「NO」です。「セルフマネジメント」は危険ではありません。実験的でも、新しいものでもありません。私が本で紹介したサン・ハイドローリックス社もモーニングスター社も、どちらも1970年代に設立された企業です。ゴアテックスのメーカーであるW・L・ゴア社も1958年に設立されて50年以上の社歴を誇っています。元々は伝統的な組織だった北フランスにあるFAVI社も、1983年にジャン・フランソワ・ソブリストに買い取られたところから「セルフマネジメント」に移行していきました。こうした何十年も「セルフマネジメント」経営が続いている組織はたくさんあるのです。彼らは周りの産業と同じように多くの不況を経験してきました。そして、すべての不況を非常に力強く切り抜けてきました。その意味で、決してテストが十分でないなどとは言えないのです。また、企業という枠を取っ払うと、そこには長い歴史のある、特殊作戦部隊のような軍の組織があります。海軍特殊部隊のようなエリートの集まりである武力介入部隊は、ビンラディンを殺すといった特殊コマンドを実施しますが、こういった部隊はずっと以前から「セルフマネジメント」で動いています。「セルフマネジメント」に頼ることなしに複雑なミッションをこなすことは考えられません。「teams of teams」という名のマクリスタル将軍が記した素晴らしい本がありますが、そこで将軍は「セルフマネジメント」のことをとてもうまく説明しています。属性も規模もまったく異なりますが、アルコホーリクス・アノニマスという組織は1930年代に設立され、現在は、180万人のメンバーと100,000単位のグループが存在しますが、それらが完全に「セルフマネジメント」によって運営されています。だから、「セルフマネジメント」は決して新しいものでないのです。その歴史をもっと調べたいのなら、「The age of heretics」と呼ばれる素晴らしい本があるので、それを読んでみてください。その本には、「セルフマネジメント」が出来たばかりの20世紀初頭の頃の様子が記録されています。その本によると、「セルフマネジメント」を採用した工場が素晴らしい成果を上げたそうです。そこには、誰もが「セルフマネジメント」に興味を持っているかのように書いてあります。しかし、当時の実験的な取り組みのほとんどは、すこしの間しか続きませんでした。従来型のマネージャーが出てきて、改革を潰し、元の伝統的な管理スタイルに戻してしまったのです。とはいえ、これらの「セルフマネジメント」の事例や取り組みはすべてがうまく運んでいたという事実があります。つまり、「セルフマネジメント」は決して新しいものではないのです。

製造業、コンサルティング、技術系スタートアップなどと業界を細かく分類すると、その業界の中では新しいと言われるかもしれませんが、実際に「セルフマネジメント」で運営している組織はかなり多くの数があります。しかし、限定的な取り組みや試みを除き、完全に「セルフマネジメント」で運営している組織というと、銀行などでは、きっと10もないでしょう。また、初期実験の段階も含めても、「セルフマネジメント」方式で運営している病院の数もまだ10には達していないと思います。つまり、各産業ドメインに分けると、そこでは、先駆者と呼ばれる確率が高いのです。しかしそれでも、「セルフマネジメント」は新しいものではなく、あなたが応用できる知識はすでにこの世に多数存在しています。我々は、「セルフマネジメント」の原理だけでなく、実際の詳細な実践も同じく蓄えてきていると言っても過言ではないのです。「セルフマネジメント」が機能するためには、まず、意思決定の方法を変更する必要があります。また、コンフリクトへの対処方法を変えることも必要です。そして、パフォーマンス指標を変更することも必要です。つまり、「セルフマネジメント」に移行する際は、いくつかの構成要素をアップグレードする必要があるといえます。私たちは、これらがどのように機能するかが分かっており、私の本にもこのことはしっかりと記してあります。他の本にも、組織開発に関する記載として、これらの実践について書かれたものがあります。原則だけでなく、具体的な実践についても明らかにされています。したがって、ゴールを設定する際は、これらの実践を盲目的にコピーしなさいとは言いませんが、これらをまったく無視することは、例えて言えば、車輪をゼロから再発明するようなもので、そこに多大な努力をつぎ込むことになるでしょう。

現在のところ、「セルフマネジメント」組織は、従来のヒエラルキー型組織に比べて、その数はまだまだ少ないと言えます。しかし、それは、この考え自体が新しいからというわけではなく、実証実験が済んでないからというわけでもなく、また、リスクがあるというわけでもありません。彼らがそう感じるのは、単に「セルフマネジメント」に接したことがないことや、「セルフマネジメント」にかんする本を読んだことがないこと、そして、そういう組織に実際に出向いたこともないというだけなのです。だとすると当然、「セルフマネジメント」がどのように機能するか彼らは知りようもありません。彼らは、「セルフマネジメント」は新しい概念で、理解できないものとして捉えています。そうであるがゆえに、あなたがしようとしていることにリスクを感じてしまうのです。もちろんそれは誤解です。

あなたが古いシステムを解体して、それに置き換わる他のシステムの導入に失敗して、さっき話したような基礎的な要素も入れないいった愚行を犯さない限りは、結果は常に良い方向に向かうはずです。理由は明確です。メンバーに意思決定の権限を与えることで、より良い決定をより迅速に出すことができるようになります。そして、それらを繰り返すことで、彼らはさらにモチベートされていきます。「セルフマネジメント」がうまく機能する理由はたくさんあるのです。だから、そもそもクレイジーだとか、また、リスクがあるなどとは考えないでください。あなたがすべきことは、これらについてもっと学びを深めることです。本を読んだり、「セルフマネジメント」組織に実際に足を運んだりして、体験を通して理解を深めるのです。もし、いま、私が起業するとしたら、「セルフマネジメント」を取り入れないことの方がリスクに感じます。まず、私自身のインテグリティが危機にさらされます。そして、私と私の周りにいる人たちの精神面にもリスクが及びます。経営面にかんしても同様のことが言えます。

最後にまとめると、6つの誤解の内の一つ目は、「セルフマネジメント」は、新しいものでもなく、テストされてないものでもなく、リスクがあるものではない、ということです。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。