【4.2.12】新たな実践を明文化すること(Formalizing new practices)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/4212.html

■翻訳メモ
組織が「セルフマネジメント」に向かうとき、多くの実践とプロセスに変化が生じます。古いヒエラルキーの時代の方法に戻りたくないのなら、あらゆる実践とプロセスをアップグレードして、作り替えていきましょう。

1つ目の課題は、これらの新しいプロセスを、いつのタイミングで、どうやって形づくり、そして、そこにコミュニケーションをどう乗せていくかというものです。このことについてお話しする前に、実践やプロセスを形式化するとはどういうことか、その定義についてはっきりさせておこうと思います。というのも、私が知っているある組織では明らかな誤解がありました。彼らは、形式化というのは従来の古い組織のやり方だと言いました。ポリシー、ハンドブック、ガイドラインといったものはあっても、それらの実践を定義で縛りたくないと言いました。彼らは、紙に残したくない理由として、問題が起こったら、都度話し合って対処すると主張しました。紙に書き残すことは、彼らが望まない古い世界のやり方だと言いました。ここで私が問題にしているのは、なぜ彼らは明確化することを拒むのか、なぜ形式化を嫌がるのかということです。私は、すべてのことを毎回一からやっていると、皆の神経がすり減ってしまうことを強調したいのです。よって、経験則は明文化するべきなのです。例えば、朝起きたとき、クローゼットの中で、靴下とTシャツとは分けて決まった場所に収納してある方が使い勝手は良いものです。もし、半分寝ぼけていても間違うことはありません。その状態が日によって異なっていたらどうでしょう?それだけでイライラしてしまいませんか?それは実践とプロセスとについても同じです。

それは以前の方法とは大きく異なります。かつて、ピラミッドの上部または一部のサポート部門によって、一度、実践とプロセスが定義されたら、誰もそれを変えることはできませんでした。一方、「セルフマネジメント」では、誰もが状況を変える力を持っています。したがって、いったん形式化されたものは、次により良いものが見つかるまで、そのままその形式が継続されます。私は新しく獲得した形式を紙に残す方法が最適だと思っています。しかし、それより良い方法が見つかったなら、次はそれを採用していけばよいとも思っています。そのやり方は、改善や変更するために全員の力をもって意思決定するメカニズム、つまり、アドバイスプロセスにとてもよく似ています。靴下とTシャツの場所が瞬時に分るさらに良い方法を見つかったら、どんどん変更を加えていけばよいのです。

ある組織では、「プロトタイピング」と呼ぶかもしれません。確かにそれに近いものです。非常に理にかなったやり方です。常にβ(ベータ)版を試しているようなもので、常に進化の過程を意識します。今のところは、これ以上のやり方はないと断言しておきましょう。

カナダにフィジー社という小さな会社があります。彼らは「セルフマネジメント」への移行についてブログを書いているのですが、形式化について、そこでうまく文章化しています。その一部を紹介しましょう。新たな実践とプロセスについてです。

複数のフェーズにおいて新しい「セルフマネジメント」の実践を導入する際、何かに書き留めておかないと、そのシナリオはすぐに忘れ去られてしまいます。作成後、しばらく使ってみて、意図したとおり機能するか確認します。その実践を改善するには、さらに対話を増やし、細かな修正を加えていきます。

何かを始めることと、改善を継続することは同じくらい重要です。実践を形にし、それを改善し続けることはまったく悪いことではありません。すぐに進化する可能性があると皆がわかっているものを進化させていくのはとても良いことです。そして、そこで、最初の問題にぶつかるのです。新しいプロセスを形式に落とし込むとき、答えを言ってしまいますが、その時には、必ず、すぐにそれを紙に書くことです。これが何にも増して、最良の方法です。

これが新しい形式の獲得方法であり、進化に向かわせる方法でもあるのです。しかし、チームによって、その獲得する形式は変わってきます。つまり、異なるチームが異なる方法で実験を行い、何が最も効果的かを検討することに価値があるのです。イノベーションと標準化、および、実験と標準化の間におけるテンションについて、紹介したビデオを記憶されていますでしょうか。ある意味、すべてのチームが同じ方法で行うというとそれが良いと思うかもしれません。しかし、それは靴下とTシャツの関係と同じで、すべてのチームにとって、それらが同じ場所に配置してあることが最良とはならないのです。何か違うと感じたら、それをすぐに紙に書きます。そして、それを進化させられるかどうか試みてみます。

2番目にやることは、紙に書き込む前に、それがどのように定義されたかチェックしてもらいたいのです。元執行役員といった、かつてのリーダーがそれを定義しているのではないというのは1つの明確な答えです。最前線にいるチームには、自らの実践を定義することに意義があります。あるいは、他のチームの採っている方法が良いと判断した場合、自発的なグループを招集し、そこで、新たな実践を定義するのもよい方法の一つです。意思決定や定義に興味ある人が集まり、アドバイスプロセスやそれに代わる同意プロセスの確認を行います。そこでは、半日、あるいは丸一日かけて、フリップチャートなどを用いて、自分たちの方法を定義していくのです。

実際にそうやって、自らの意思決定プロセスを定義した組織のことを紹介します。20人くらいの小さな組織ですが、彼らは、丸一日かけてそれを決めました。自らが選択し、それを業務に反映させる、意思決定とパフォーマンス管理のやり方を決めました。彼らはその定義をもって仕事に取り組み、新たな形式に慣れ親しんでいきました。結局のところ、形式とは、これが決まらないことにはスタートを切れないというものなのです。

ひとつ、ある興味深い方法があります。最初は、精神性を高めるような抽象概念のみを提示し、具体的な行動は明文化しないというやり方です。つまり、原則のみを定義して、行動についてはなんら触れないという方法です。例えば、デカトロン社はそういうやり方をしています。そこでは、すべての会議は「チェックイン」から始まるという原則があります。しかし、その「チェックイン」の長さやどんなことを発言するかについては定義がありません。そこでは「チェックイン」というルールがあることだけで十分なのかもしれません。最初はルールが少ない方がいいという場合もあります。

課題の3つ目は、各チームが定義した実践方法をどうやって書き表し、会議に出席していなかった人も含め、どうやってチームに浸透させていくかという問題です。私からアドバイスできるとしたら、まず、紙のメモなどの古いやり方はきっぱり忘れることです。例えば、私のこのビデオシリーズなどは、新しい伝達手段の一つだと気づかれたかもしれません。つまり、表現するためには、いかに視覚に訴えるかを考えてください。インフォグラフなど、簡単なものならあなたの身近にも作れる人がいるのではないでしょうか。ただし、視覚効果は極端な変化など、想定以上に効果を発揮することがありますので、使い方には注意してください。それさえ守れば、その方法は伝達手段としてはとても良いものです。

また、チームメンバーがフリップチャートの横に立ち、新しい意思決定メカニズムを定義したということをビデオで配信するのも効果的です。説明しているチームをカメラで撮って、チームメンバーに送信したり、見たいときに誰でも見られるようにチームのwikiに置いたりします。単に紙に書いて、どこかに保存すればよいという考えは捨ててください。wikiなどに置いておけば、これが進化し、変化するものであるという印象を与えるはずです。

最後に、よくある質問について共有しますが、それは、最初に何を定義したらよいかというものです。もちろん組織によって異なるというのも答えとして間違っているわけではありませんが、こと「セルフマネジメント」に限定すれば、以前の「4.1.16 Five key processes of self-management」のビデオが参考になるはずです。意思決定、役割の定義と割り当て方、紛争への対処方法、情報の透明化、パフォーマンス管理の5つについて整理しています。なぜうまく進まないのか、その理由を遅かれ早かれ直視せざるをえないものとして挙げていますから、もしまだご覧になっていないのであれば、是非、ご覧になってください。そして、定義を作る過程を楽しんでください。組織は生き物であるがゆえに、とても美しい変化のプロセスを形作ってくれるはずです。ビデオやイラストレーションを使う方法は私の知っている中での最高の方法ですが、是非そこから飛び出て、さらに新たな方法へと、プロセスを進化させていってください。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。