【6.12】なぜ私が「ビジョン」という言葉が好きでないかについて(Why I don't like the word "vision")

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/612.html

■翻訳メモ
今回はかなり細かい、ほとんど些細と言ってもいいくらいの、“言葉”の定義について話す短い回になります。このビデオを撮ろうと思った時、細かすぎるかと懸念したのですが、結果的には、この回を作ってよかったと思っています。前置きはさておき、今回は、組織が「ビジョン」を持つということについて話していきたいと思います。

多く人は、「ビジョン」と聞いたら、3〜5年先の組織の「あるべき姿」を思い浮かべると思います。3年以内に100%カーボンニュートラルにして見せる、3年以内に生産にかかわるすべての原料をリサイクル素材で賄うようにする、3年以内に完全にセルフマネジメント化する、国際化し5年後には世界のすべての大陸に拠点を出す、-これらが俗にいう「ビジョン」です。ところが、不思議なことに、私にはこの「ビジョン」がいつの間にかまったく響かなくなっていたのです。もちろん私にとってはショックでした。当時は、「存在目的」の観点からしても、「ビジョン」は、メンバーが組織に対し望んでいるもの、組織に与えるもの、そして、メンバーの想いの投影だと思っていたからです。

「私たちはこんなビジョンを持っています」と宣言することは、3年後、組織がまだそこに存在することを前提としています。つまり、それは、未来を予測し、コントロールしようとする古いパラダイムの象徴であるように思いました。それは、組織の未来に対し、戦略的な意図を持った組織といえます。私が行こうとしていたところはそこではない、私が求めていたのは、どこに行こうとしているのか、常に組織の声を聞いている組織のはずでした。

しかし、その後も、私は「ビジョン」という言葉を依然として使っています。それは、すでにみんながよく知った言葉になっているので、あえてその言葉を避ける必要もなかったという理由からです。私が、「ビジョン」という言葉の代わりに、本当に使いたいと思っている言葉は「コール」です。誰かが“私”に語りかけてくという意味だとお思いだと思いますが、そうではありません。そこに“私”の存在はありません。もし、私が、組織の3年後を表す美しい言葉を聞いたとしたら、私は一歩下がって受け止めると同時に、大きな「不安」も抱え込むことになると思います。それは、征服した新しい土地に旗を立てるという計画を示した「ビジョン」であるかもしれないからです。もしそれが「コール」なら、謙虚さと奥ゆかしさを感じるはずです。

「コール」を聞いたと確信できる瞬間は、説得力のある訴えかけだと感じると思います。私はそれを知りたいと思っているので、常に耳を傾けることに喜びを感じています。聞こえてくる時は、変化の到来と関係があることが多いように思います。また、そういうときの方がすんなりと入ってくるものでもあります。今回「ビジョン」と「コール」を扱ったのは、「コール」のことをあなたにお伝えしたかったからです。そして、通常、「コール」は、組織の中から聞こえてくるものです。
■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。