【8.1】組織に必要なサポートとは?(What support do organizations need?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/81.html

■翻訳メモ
今回から新しいセクションに入ります。このセクションでは、コーチ、コンサルタント、そしてファシリテーターといった組織の再発明の旅を共に続けてくれる人たちのことについて話します。そしてこのビデオシリーズは、このセクションが最後になって、すべてのシリーズが揃うことになります。

まず、良いコーチやコンサルタント、ファシリテーターになるには生涯を通した長期的な学習が必要です。とても多くのことを学ばなければならないからです。その道を究めるには、ありとあらゆる方法を試すための、測りきれないほど多くの時間が必要になってきます。そして、その技術は模倣によって獲得できるものでもありません。この後、4つか5つのビデオをご覧いただくことになりますが、どれも非常に具体的な課題を扱います。それらの課題は、知り合ったコーチやコンサルタントと何度も何度も話し合っているうちに出てきたものばかりです。それらは、多くの人にとっての関心事であるとともに、活用可能なものになっています。そして、さらに、それらの課題に対して、私自身の考えも付け加えていきます。これをご覧いただくと、ティールに向かう組織には、コーチやコンサルタントの存在がいかに重要であるかが分かってもらえると思います。合わせて、CEOのそばにいて、時には方向修転換を提案し、そして、それらの経験を自らの学びに変えていく、コーチやコンサルタントの実際を知っていただけるはずです。

最初の課題は、彼らのかかわりの対象となる組織が、どの領域で何を必要としているのだろうということです。まず、以前の1.15を参照してください。その回では、トップマネジメントを対象としたコーチ、コンサルタント、そしてファシリテーターの役割について話しています。彼らは、組織で働く人たちから見ると、同じ土俵にはいない人たちだというのはよく分かっていただけたと思います。そして、その視点があるがゆえに、新たな事柄を発見できるということもよくご理解いただけたのではないでしょうか。そのビデオで私が強調したことの1つに、この取り組みにかんする限り、大規模なコンサルティング会社に依頼するような本格的なコンサルティングは、まったく必要ないということがあります。しかし、コーチングにしても、ファシリテーションにしても、特定のゴールに的を絞った限定的な取り組みであってはいけないということも同時に言えるのです。組織とは、共に旅をしてくれる人たちがいて、はじめて価値を有するものになっていくものです。一緒に旅をしてくれる人というのは、CEOをサポートする人、チームをサポートする人、組織全体を何らかの形でサポートする人、という3つのレベルの人たちのことを指します。ということは、少なくとも、これらの3つのレベルのすべてで、新しい世界の意味を考える必要があるということです。サポートしてくれる外部の人間がいるからこそ組織にとってのリフレクション(内省)が成立します。CEOと協力し、トップチームと協力し、そして、組織全体と協力するというのは、リフレクションの機能にとって非常に有効なのです。それはティールに対して拒否反応を示している人に対しては気付きの手助けとなります。たとえば、特定の人がリーダーに指名された場合、あるいは、「セルフマネジメント」の導入に向けて組織の一部と協力するように言われた場合、組織の「感受性」と「反応」とが鮮明に表に出てきます。その組織で働くこと自体に疑問を感じている人や、特定の人のもとでは働きたくないと思っている人にはアラームランプが点灯するのです。そのような「感受性」や「反応」がどのように出現するかはとても重要なことです。一方を立てて、他方を無視するようなことをすれば、公正性が保たれません。なので、それはやってはいけません。そうは言っても、ずっと組織の中にいる人にとっては、その組織に違和感を覚えている人たちの声はなかなか届いてこないものです。彼らは、とりあえず、言われたままに、それを実行しようとします。「『セルフマネジメント』に向かってやってみます。きっとみんな協力してくれるはずです」といって始めるのですが、それではうまくいかないのは火を見るよりも明らかです。それゆえ、先ほどの、3つのレベルでの外部支援が必要になってくるのです。

さらにもうひとつの「気付き」があります。それは、最初の段階で、組織のメンバーに対して、これからどうなっていくのか、今後の可能性を示してあげることが大切だということです。最初に取り掛かると思いますが、あなたが関係を持つ人と交わす会話が特に重要です。あなたは、彼らの希望や不安を聞きながら関係性を築いていくと思います。それをしていれば、あなたが模索している選択肢のことも、彼らは理解してくれるはずです。できるのなら、組織においてそのような関係構築プロセスを行うのはCEOであるに越したことはありません。ただし、このリクエストが実現する例はほとんどないといってもよいでしょう。それほど、実現しにくいものなのです。しかし、それをすべてCEOのせいにしてはいけません。ティールへ向かう旅は、まったく新しい世界への旅だからです。それゆえに、掘り下げて探索し続ける必要があるのです。そのことについて、ある人はこう言いました。「組織には、皆と同じように振舞います、という人と、自分のやりたいようにやります、という人間がいるだけだ」、と。考えてみれば分かりますが、一言で「セルフマネジメント」といっても、そこにはさまざまな人が、さまざまな思いを持って存在しています。それを紐解くには、体系的な思考が必要になってきます。組織にとって必要なのは、実際にメンバーをサポートできる空間と時間です。それゆえ、あなたは、それがCEOならば言うことはないのですが、まず可能性を明示し、やろうとしていることを明確にします。当然、そこには、あなたがやろうとしていることのすべてが網羅されているべきです。いずれにしても、あなたの役割はとても重要であることに変わりありません。真実を話し、死角の方向に鏡を向け、そして、光を当てる、そんな特別な役割をあなたは担っているのです。

どうしても気になってしようがない、言っておかねばならないことがあります。それは、絶対に安全運転に固執してはならないということです。今回はじめて明言しますが、リスクはできるだけ取るようにして、そして、そのこともメンバーにはシェアしてください。組織のメンバーに変わることを求めているあるシニア・リーダーとの会話において、このことを発見しました。中には、変化を望まない人もいます。そういう人は、自身の中にある「正直さ」に向き合う準備がまだできていない人なのかもしれません。そういう人に対しては、その人が何をモチベーションにしてその組織で働いているかという質問をしてください。その質問を通して会話を深めていきます。それは必ずしも容易な道のりばかりではないと覚悟しておかなければなりません。一般にそういう対話は、質問する側も進んでやりたがらないものです。しかし、愛と思いやりをもってそれにあたるならば、想像をはるかに超えた結果に向かって、扉は開くものです。また、リスクに対して過度に神経質になっている人たちに対しても、オープンな対話によって、彼らとの間に大きな信頼を築ける可能性があります。関係性に懸念があってもそれを払しょくできる場合もあります。もし、その質問する人がシニア・リーダーだったとしたら、真実を語る声は、彼らのところまで届くことはほとんどないという従来の現実を知ることになるでしょう。それが分かるだけでも死角を1つ潰せたというものです。愛と思いやりに起因した行為は大きな信頼の獲得につながります。

今から述べるのは、組織にとってすごく重要なことですが、以前のビデオでは、そのことについて、まったく触れてきませんでした。それは、組織にとって、私のようなコーチ業を営んでいる人、つまり、たんなる相談相手は必要ないということです。使い古された言葉を使うと「共創(co-creation)」という表現がしっくりくると思うのですが、まず、それを導き出すには、一緒に旅を続けてくれるパートナーが必要だということです。そして、そのような伴侶と呼ぶにふさわしい、共に旅するパートナーが力を発揮できる形態は、未だかつて存在したことがありませんでした。それはパッケージングされたコーチングとは全く異なります。また、それは、常に中立的な立場から組織に接するファシリテーターとも違います。そして、プロジェクトを成功に導いてくれるコンサルタントの姿勢とも異なります。つまることころ、最後までその組織に寄り添って共に旅を続けられる人が必要だということです。それは、考えようによっては、組織にとってリスクになる場合もあります。そのパートナーは常に組織を試し続けることになります。時にはうまくいき、時に失敗することもあるかもしれません。その彼はメンバーと共に学んでいくことでしょう。しかし、ここで、ただ単に、「組織と共に」という表現を使うとしっくりきません。そのパートナーは組織の内側からではなく、常にその視点を組織の外において、そこから俯瞰してみる能力を試されることになるからです。

その彼、彼女はメンバーと共に旅を続けます。そして時折、ティールの知識をメンバーに注入します。実は、その行為自体がとても興味深いものなのです。というのも、そこにときどき誤解が入り込んでくるからです。この新しい世界では、これがティールの特徴なのですが、すべての答えはすでに組織中に存在しているのです。コンサルタントは答えを提供するのが仕事ですが、彼らはけっして答えを提供する側に回ることはありません。彼らは唯一の正解を持っているわけではありません、しかしいくつかの「答え」にはすでに至っているはずです。「セルフマネジメント」のパースペクティブに沿って話すと、多くの人は最初から成熟の域に達しているわけではありません。実際には、適切なタイミングで適切な知識を学ぶことで、成長していきます。そうは言っても、すべてをゼロから組み立てていく必要はありません。その時は、アドバイスプロセスを有効活用すればいいでしょう。そこで知恵を出し合うことは、独りよがりで無謀な開発を防ぐことにもつながります。一般的な組織は、経営者が独裁的な権力を持つことで争いが起こらない仕組みを作りあげようとします。ティールでは、適切なタイミングに適切な専門性を身に付けていきます。そうすると、あとは、その専門性が周知されることで、誰がもっともふさわしい人物か、自ずとシステムが見つけ出してくれるものなのです。その機能を知るためには、このビデオシリーズをしっかり見て欲しいと思うのです。

組織にとって必要なことは、インテグラルの4つの象限を使って表せるということを最後にお伝えしたいと思います。まず、その4つの象限については、ビデオ2.2を参照してください。ここではその繰り返しになりますが、もし、その4つの象限に分けられたものが、何も語りかけてこない時は、行動を止め、すべてを一時停止状態にする必要があります。私の言っていることの意味が分からなかったら、ビデオ2.2に戻ってください。もし、あなたが、真剣にメンバーの成長を支援したいのであれば、この理論に精通する必要があります。どんな人にも特定の象限を優先的に考えてしまう傾向というものがあります。あなた自身、盲点はほとんどないと思っていたとしても、優先して取り上げてしまう象限は必ず持っているものなのです。つまりその傾向そのものが盲点となります。もし、あなたの場合の優先しがちな象限が「内側の世界」だったとしたら、あらためてトップリーダーたちの間で起こっていることに働きかける必要があった際、あなたにはさらに内面に潜り込んだ会話を求めてしまう傾向があるということです。実際に、そこで必要とされるべきなのは、内面に潜った会話ではなく、外側からの視点であって、つまり、それは「優れた意思決定プロセス」がそれにあたるといった具合です。つまり、原因は、自分の思った象限とは別の象限に存在していることが往々にしてあるということです。逆に、「システムと実践」を重視してしまう傾向があるなら、今度はその内側にある「組織のカルチャー」に着目してみる必要があるかもしれません。「組織のカルチャー」について話し合ってみて、そこで発見した阻害要因を取り除けば、それがベストプラクティスとなる可能性が高いからです。それが「組織のカルチャー」に着目してみると言った理由です。そして、重要なのは、必ずしも4つの領域すべてで介入行為を起こす必要はないということです。あなたは、まず、それらに精通さえしていればよいのです。それによって、もっと精通した人物を連れてくることが可能になります。きっと精通した人物に任せた方が、「システムと実践」のみに委ねるよりも結果は早くでるでしょう。あなたのすることは、まず4象限を使って組織の状態を分析し、その後で、専門知識を持っている人物を連れてくることです。その意味では、組織にとっては、4つの領域それぞれで専門家が必要ということがいえます。少なくともあなたには、その4象限について理解ができて、どこにどのような介入が必要か見つけ出す力が必要になってきます。そして、必要に応じて、あなたを助けてくれる誰かを外から連れて来ます。あなたの組織が抜本的な変化を起こすサポートを行う人物を選んで連れてくるのですから、あなたの行動は非常に重要です。それを行っていくには、あなた本人が熟達していく以外に方法はありません。組織の成功の要因には、本当に良いコーチか、本当に良いファシリテーターが必要です。例えば、「組織のカルチャー」に熟達している人、「システム」が本当に得意な人たちなど、専門分野に秀でた人たちがいます。しかし、そういう人たちの中には、それ以外のことはまったくできないという人たちも数多く潜んでいます。そういったことで困らないためにも、少なからず、あなたは、これらのすべての領域に精通しておく必要があるのです。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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