【4.4.7】キャリアアップについての考え方(What happens to career progression?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/447.html

■翻訳メモ
今回は私がよく受ける質問についてお話しします。それは、多くの組織で起こる自然な問題のようです。つまり、キャリアの問題です。ここで一つ例を挙げましょう。先日受け取ったメールです。

チームは、あなたの本に非常に熱心で、情熱を持って「セルフマネジメント」に取り組んでいます。しかし、その中で働くあるマネージャーは、自分自身のキャリア成長について悩んでいます。このチームは、インドを拠点としており、文化的な圧力が加わります。つまり、次々に新たな役職を経験するようなスピード感をもって昇進して行かなければ、もしくは、チームの規模が年ごとに倍になるようなスピードをもって成長させて行かなければ、キャリアが成長したとは考えられないのです。

この手の質問が出てくるのはインドだけではないようです。私たちは自己のキャリアの価値を「昇進」で測ることに慣れてきました。そして、急に競争が消え、「出世のはしご」が消滅したとき、チームのメンバーにとって、それを受け入れる時間が必要になります。

私が重要だと思うのは、「はしご」がなくなったことによって生じる痛みを組織が受け入れることです。どうしても一部の人は、「出世」という外的動機づけをモチベーションとして働いています。もちろん、私たちの目標は人を値決めすることではありません。よって、中には、外的な要因による動機付けを捨てて、内発的なものだけがモチベーションとなるようしなければならない。「承認」という行為は排除すべきだと言う人がいます。その思いに対しては、一定の価値は認めます。しかし、事を前に進めていくには、現実を受け入れなければなりません。もし「出世」に価値を置いている人を変えたいと思っている人がいるなら、それは、高尚でなんでもなく、自らのエゴの表出に過ぎないことを教えてあげなければなりません。ですので、まずは、「承認」を欲する人が存在している現実を受け入れることが重要です。それにどのように対処するかについては、いくつかのアイデアがあります。

一つは、そういったメンバーとの会話を持つことです。彼らに、いま、権力の階層を取り除こうとしていることを伝えます。しかし、それでも、組織には、スキルや知識、専門性、そして、物事に対する熱量などによって、自然発生的なヒエラルキーが存続することを理解してもらう必要があります。つまり、セルフマネジメント組織では、誰がどの分野に強いか、また、誰が複雑なプロジェクトを時間通りに完了させるスキルや経験を持っているかなど、皆が熟知しておかなければなりません。これら個人の強みを互いに認識し共有していくためには、ある意味、メンバー同士の「承認」が必要です。これなしには、セルフマネジメント組織は成立しないのです。

そういった「承認」を測るバロメーターの1つは、アドバイスプロセスに呼ばれた回数です。経験が豊富で、その道のスペシャリストと呼ばれる人は、当然、周囲から声がかかりやすいはずです。メンバーに加わった日が浅く、その実力も周りに知られていない場合は、声がかかる回数も少ないはずです。つまり、アドバイスプロセスに呼ばれる回数は、その人物の、長きにわたる組織への貢献を測る「物差し」であるといえます。

これはもう一つの方法です。多くの組織では、形式的な階層的手順がなくても、管理職の人たちがより多く貢献をしていることになっており、より多くの報酬を受け取っているはずです。したがって、給与は、依然として貢献度を測るゲームの要素の1つになっています。そして、それは、権力の拡大や部下の数を増やすといった不健全な側面を伴わずに行うことも可能です。エンパイア・ビルディング社が200人のサンプル採取から作ったレポートによれば、その組織の管理職は、部下への強制といったマネジメントの嫌な側面がなくても、良い環境で多くの収入を得ているとされています。

最近では、多くの組織が職位のカテゴリーに基づいた給与制度を導入しています。これについてもう少し詳しくお話ししましょう。なぜなら、これは非常に興味深いと思うからです。一部の組織では、まったくそのような制度を必要としていない場合もあります。たとえば、モーニングスター社の場合、メンバーは毎年、アドバイスプロセスを使用して給与の増加額を決定しています。給与バンドやカテゴリーのようなものは存在しませんが、それでも組織は完璧に機能しています。もちろん、職位のカテゴリーに基づいた給与体系を持った組織も、組織全体がうまく機能している場合がたくさんあります。組織ごとに、そのやり方が適しているわけです。

給与バンドを採用している組織の一つに、エンコード社という会社があります。その組織の給与システムにはいくつかのレンジがあります。一番下にあるレンジは、「ジョブ」と呼ばれています。特定の「仕事」に対して、実行した内容によって評価が決まります。「その仕事をしっかりこなした」という評価項目が、職務遂行の完了を意味します。その組織では、その呼称は忘れてしまいましたが、その定められた「ジョブ」の上にもう一段階高いレンジがありました。ここでは、「自分の仕事を完了した」だけでなく、更なる成長や発展、そして「イニシアチブを発揮して自らの限界を押し広げた」ことが評価の対象となります。具体的な要素としては、「自分の仕事を改善しようとする意欲がある」「組織の成長に貢献している」「変革のための主導的な行動を取っている」などが挙げられます。これはある種、上級レベルのコンピテンシーを示しています。さらに、そのもう一つ上のレンジでは、「自分の分野だけでなく、組織全体に貢献している」ことが証明される必要があります。例えば、あるマーケティング担当者が他の分野で必要な取り組みを見出し、アドバイスプロセスを開始した場合、それに多くのメンバーが参加し、成功を収めたとします。そのような行動は、その人が現在の階層での成長が見込まれ、次のレベルへの昇進が適切であるとみなされることを示します。

そして、彼らはさらにその上に4番目のレベルを持っています。それは、「組織を改善する方法を考えるだけではなく、組織の未来についても感知している」というものです。その対象者は「ソース」と呼ばれ、その視点から遠い未来を見つめています。彼らの場合、「ソース」の存在を知ったから、そのさらに一段階上のレベルを設定しました。いろんなやり方があると思いますが、このような階層を設定する場合、特に役立つと感じることがあります。それは、ある人が昇進したときに、それを祝うことです。昇進に関するメンバーの承認と、それの本人への伝達は、1対1か、アドバイスプロセスを通じて行うことができます。その「祝福」という行為はとてもシンプルな承認過程です。それに付随して給与の増額もあるかもしれません。しかし、より高いカテゴリーになるからといって、下位のカテゴリーのメンバーに対する権限を与えられたわけではありません。当然、彼らに何かを強制することはできません。依然としてすべては、同じゲーム・ルールやアドバイスプロセスによって拘束を受け続けます。与えられたのは、単に上級職であるという「承認」のみです。

そして最後は、緩やかなメンタリングの方法です。対外的に、役職などの肩書を自由に選べるやり方があります。セルフマネジメント組織で働く多くの人は、内部で細かい役割について話している代わりに、対外的な「タイトル」を持っていない事実に気づくことでしょう。外の世界は、自社の担当が、ただの営業副社長なのか、それとも、その上に「シニア」の肩書が付く副社長なのかを知りたがっているものです。そのため、私の知っている組織では、対外的な名刺に嗜好を凝らし、人によっては年齢相応のタイトルを付けるなどして対応しています。ただし、突拍子もない肩書にならないよう、アドバイスプロセスを使って、各々の肩書を決めています。こうすれば、意味が不明であったり、完全に浮いてしまったりした役職名をつけることを防げます。それは、また、そこで働く人たちの自尊心をケアする方法でもあります。

同様の目的で別のやり方をしている組織があります。そこでは、誰かが自ら人事部のような役割を引き受け、メンバーに、「あなたならこういう肩書はどう?」という風に、メンバーに肩書を与えているというものです。これは、伝統的な組織によくあるような、名刺の肩書を作っているようなものです。この肩書は、もしメンバーが転職を考えた場合にも有効に働くはずです。そして、これは、従兄弟や知人たちに対しても使うことができます。「私は○○という会社で副社長をやっています」という風にです。それが、自組織内で通用しているかどうかは別問題ということです。

つまり、メンバーが慣れるまでのしばらくの間は、「承認」システムも必要であるということです。1年から4年といった時間が経過すると、おそらく「承認」は重要ではなくなってきます。美しい組織や深い人間関係に浸ることから得る満足感が大きくなってくることで、メンバーは、もう二度と伝統的な組織に戻りたくないと感じるようになります。昇進や、従兄弟に対しての見栄は重要でなくなってきます。それが必要とされるのは一時的なものです。ただ、最初はそれが必要だということだけはしっかり認識してください。そして、それに対処できるようになっていきましょう。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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