【4.2.10】 経営チームはどうなってしまうのか?(What to do with the executive committee?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■翻訳メモ
長期的なスパンで見ると、組織が本来の意味で「セルフマネジメント」に向かっているのなら、経営陣もしくは経営チームと呼ばれる集団はいずれ消えてなくなる運命にあります。「トップチームが必要ですか?」(4.1.21)という動画はもう見られましたか?組織が完全な「セルフマネジメント」を導入したなら、経営チームの将来における存在可能性は、おそらく「ゼロ」です。組織全体の調整役としての経営チームはもう必要ありません。ただ、当然ですが、どうせなくなるものと、放置しておいたらよいわけではありません。従来の組織において、彼らは非常に重要な役割を担っていたからです。

経営チームは主に2つの機能を担っています。1つ目は、企業の運営です。企業の業績の最終責任者は彼らであるということです。2つ目は、事実上のビジョンの提供者という存在です。経営チームは、全社的な調整力を有した唯一の機関であると言えます。多くの組織において、そして特に機能的な側面で、ビジョンの一貫性を担保するのは経営チームの働きに負うところが大きいのです。オペレーション、財務、マーケティング、人事といったすべての部署のすべての視点を考慮に入れて、より良い決定を下せる機関は経営チームだけなのです。ただ、いずれ、経営チームにも解散の時が訪れます。それは、各チームにとって、中央集権的な管理の必要がなくなった時です。以前のビデオでお話ししたように、各チームが「自己修正」の機能を発揮できることが必要条件になります。そうなれば、管理をするための経営チームが不要になります。

次の段階の話をします。システムが組織のすべてのレベルで調整を行う場合を考えてみましょう。アドバイスプロセスのようなものを使用しているケースです。つまり、どのようなレベルのシステム、仮に年功序列のようなシステムを持っていたとして、いくらそれを優先したいと思っても、最終的にはアドバイスプロセスを経なければならないという場合です。しかるべき人やチームのすべてと会話をする必要があるという仕組みです。これが組織の意思決定プロセスとなって機能します。そこで決定するという、経営チームが事前に承認する必要もありません。しかし、経営レベルの意思決定システムが組み込まれることには注意が必要です。経営者の最終決定なしに方針が決まってしまうということは理解しておかなければなりません。

意思決定の場を決めることは鶏と卵の関係に似ています。移行の準備がまだ整っていないのなら、取締役など、経営チームの一員に相談することは大いに価値があります。それをすることで、準備のスピードを上げられる場合もあります。基本的には、安全にゆっくり進めるのがいいと思います。経営チームを取り去ってしまう前に、十分な検討がなされているほうが好ましいからです。そして、経営チームの一員に相談することはもう一つのメリットがあります。意思決定をメンバーに委ねることのリスクを分かっているのは彼らだけだと言えるからです。

もしまだ経営チームが必要と感じているのなら、その時期は、組織がどの方向に向かおうとしているか、次に何をすればよいのかを考える重要な時期といえます。経営チームの中に、今後の方向を決定付ける重要な要素が眠ったままになっていることもあります。1つ言えるのは、経営チームのメンバーだけで、腹を割って会話するのが必要なタイミングでもあるということです。お勧めするのは、よく慣れたファシリテーターに依頼して、オフィスから離れたところで、「セルフマネジメント」がもたらす意味について話し合ってもらうことです。それは各人の不安について吐露し合う場でもあります。詳細は、トップチームに関する以前のビデオを参照してください。4.1.21、4.1.22、4.2.6あたりがそれにあたります。

また同時に、組織のメンバーの各々が、あたかも自分がCEOか組織のリーダーであるがごとく、仕事への意識を高めていくことも重要です。もし、この「セルフマネジメント」のビジョンに反対を唱える人がいたら、明確な境界線を設定する必要が出てきます。邪魔立てするのを止めさせる代わりに、彼らには選択権があることを伝えます。その提案を受け入れると、彼らは組織に残るか、組織の外に新たな可能性を見出すか、それらのどちらかを選べるようになります。なかには、独立して、他の組織への助言を新たな仕事として始める人も出てくるでしょう。それは彼らにとってもハッピーなのだと言えます。実際に、そういう例はたくさん見てきました。彼らは「セルフマネジメント」への動きに反対する形で、自らを「セルフマネジメント(自主経営)」にしたのです。

また別の方法があります。アドバイスプロセスを運用する自発チームが、あらゆる種類の権限を経営チームから譲る受ける方法です。例えば、誰かが経営チームのところに来て、人事ポリシーの改訂をしたいが、経営チームから号令をかけてもらいたなどと言ってきた場合、これは経営チームが決定を下すのではなく、アドバイスプロセスを使用して欲しいと差し戻すような場面が思い起こされます。もう一つのメリットは経営会議の短縮です。半日もしくは、丸一日、しかも毎週集まり、決定事項を討議していた経営会議が、2週間か1ヵ月ごとの開催に短縮が可能になります。アドバイスプロセスなどの新たなプロセスに意思決定機能を委譲することで、彼らは、会社経営にとってより優先順位の高い事柄に集中できるようになります。

経営チームが存続した場合にできる小さな工夫としてお勧めしたいことがあります。経営会議に席を2つ追加する方法です。組織全体に募集をかけ、先着順で代表者をその会議に参加させるというものです。非常に機密性が高いものを扱うときは一時席を外すのは構わないと思います。参加したい人は参加できるようになったと皆が知った時、それは大きな推進力となっていきます。そして、2~3度経営会議に出席した人は必ず言います。経営会議といっても、社内の他の会議と変わりないと。

最後の提案は、何度も言いますが、物事の明確化です。経営チームとのミーティングを終えたら、議論されたことや決定事項を、すぐに社内に向けてアナウンスする必要があります。これはスピードに意味があります。とてもローテクな方法ですが、イントラネットに乗せるのなら、会議中にスマホで撮影した写真でも良いのです。これはシンプルですがパワフルな方法です。「こちらが今回の議題でした。私たちはこれについて議論しました」といった詳細が分かりやすく伝わることが重要です。

経営チームがたどる途は一つではありません。いずれ消えてなくなるとしても、その時期はしっかりと考慮されなければなりません。組織が「セルフマネジメント」によって運営できるようになり、経営チームを必要とせずに自動修正できるようになった時がその時です。正しい方向に向かって、このプロセスを経れば、また次のステップが見えてきます。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。