【4.2.7】よくある落とし穴:「いますぐやろう!」(A common pitfall: "Just do it"!")

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/427.html

■翻訳メモ
「ようやくセルフマネジメントチームが出来上がったぞ!早速スタートを切っていこう!」という威勢のよさだけでは、たちまち多くの問題を引き起こしてしまいます。トップがこの言葉を発すると、チームは、ただ、「自由にやっていい」というメッセージだと受け取ってしまいがちです。これこそが失敗のレシピと呼ばれるものです。「Just do it!」といったスローガンや、「先に進むだけだ」というメッセージは120人や150人といった小規模な組織においてよく使われる言葉です。メッセージ自体はシンプルで分かりやすそうですが、1万人を超えるような大きな組織になってくれば特に、「自発的に自己組織化しなさい」というメッセージになって伝わり、結局、何をやったいいのか、誰一人分からないという事態に陥ります。「ただ、やれ」「何も考えずにやれ」という特効薬は、だいたい、最初の1回しか効かないものです。

はじめに極端な例を挙げましたが、次の例も、やや極端な部類に入るかもしれません。「セルフマネジメント」をいかに主体的に捉えられるかという問題です。主導する側が、「セルフマネジメントの展開についてはすべてデザインされています。トレーニングの際に詳細に教えますのでご安心ください。きちんと指導します。気付いた頃には、セルフマネジメントができるようになっているはずです」というメッセージを出すことは誤りだということです。ただこのケースはまれで、実際は、とにかく自分で考えて、自分で何とかしろ、というメッセージが発せられることの方が圧倒的に多いと思います。

そうなってしまう原因として、私は2つ理由があると思っています。1つ目は、ただ単に「セルフマネジメント」の概念を理解できていないということがあります。その場合、典型的なメッセージは次のようになります。「セルフマネジメントのやり方は教えることができない。だから、自分で考える必要がある。そういう意味では、自己責任だ。基本的に自分で考えなければならない。私はあなたにサポートを提供できる。ただ、あなたが理解できるように手を差し伸べることはできても、あなたを何とかする義務は負っていない。そういう意味でもあなたは独り立ちを求められているのだ」と。

次の2つ目は、ストレートに言うと、いわゆる「怠惰」に責任を押し付けてしまう場合です。「あなたたちは、セルフマネジメントに向かうと自分たちで決めたのではなかったのですか?なのに、どうすればいいのか分からないとはどういう意味ですか?百歩譲って、それが本当に分からないとしても、自分たちで解決するしかないですよね。むしろ私は、あなたがたの怠慢さに本当に驚いています。組織をセルフマネジメントに向かわせたいと真剣に考えているのなら、それを理解する必要があるはずです。フレデリックの動画シリーズを見たり、セルフマネジメントに関するあらゆる本を読んだりする必要がありますよね。こんな急進的な変革を行っているのに、ぼーっと取り組んでいる人があまりに多いのには驚きです。まるでよく内容も理解せずに、会社の重要なデータを中国のクライドに預けてしまうようなものです。通常はそれをやる前には、それについて十分に勉強をしておくでしょう。
セルフマネジメントも同じじゃないですか」、と。

これらがうまくいかない時の典型パターンです。こういった状態のまま、「君は自由だ」「これからは自己組織化でいくぞ」と上から言われたら、この注射の持つ効果は、もうよくお判りでしょう。そこで、うまくいかない組織は「セルフマネジメントの勉強会」と称した会議体を作ります。ただ、その会議はまったく機能しません。そこに参加しているは、例えば、機械のオペレーターなら、ただ機械を動かすのが仕事と思っている人です。会計士やマーケティングのコピーライターであっても、彼らは、ただ自分の仕事をしたいと思っているだけの人たちです。そんな彼らに向かって、いきなり、組織開発の専門家になりなさい。リーダーシップの専門家になりなさいと言っても、それは彼らの望んだことではありません。そして、何回かの、この不毛な会議を経た後、メンバーは、自らの最善の仕事とは、クライアントに仕事を提供することだけであると再認識します。そして、もうこんな非生産的な会議は止めようということになります。そうすると、誰ともなく、「セルフマネジメント」は馬鹿げた考えだという意見が出るようになり、元のヒエラルキーの世界に戻ってしまうのです。

つまり、これが本当のリスクだと言っているのです。「セルフマネジメント」への移行期には、チームに対して、「セルフマネジメント」への理解を促すサポートが必要です。問題は、2つの極性のどこに真ん中を定めるかです。サポートの量や粒度を決めるということです。組織内のさまざまなチームが、さまざまな種類のサポートを必要としています。チームごとにそれぞれの座標が必要になってくるでしょう。チームが必要としているサポートの量も一様ではありません。そして、それを知るにはそれぞれのチームを注意深く観察し、彼らの求めるものを洞察する以外に方法はありません。サポートする側が意識してサポートの量を少なくした場合、気付いてもらえない場合もあるでしょう。また、その反対に、とても感謝される場合もあるでしょう。そうなってくると、彼らの視界は「セルフマネジメント」に入ってきています。その意味をもっと理解しようとし、適切な会議を企画し、適切な専門知識を身につけていくことになります。そうなれば素晴らしいですが、全部が全部、このようにうまくいくわけではありません。何も起こらないチームには、もっと手をかけて、「セルフマネジメント」に向けた会話が始まる場所を作ってあげることが必要です。

チームを旅に送り出すために必要となってくるサポートは少なくとも4種類あります。1つ目は、物事が起こるための適切な状況、適切なミーティング、適切な会話を生み出すためのサポートです。その次は、ファシリテーターの存在です。会話の場から出た発言を見逃さない力量を持った人の存在が必要です。3番目は専門家です。チームがあらぬ方向に行かぬよう、正しい知識を持った人が重要です。4番目は、「セルフマネジメント」に向かうのに必要となってくるトレーニングの提供です。

次のビデオでは、チームが必要とするサポートの実例について詳しく説明します。今回の動画を終了するにあたり、どんなチームにどのレベルのサポートが適切かという宿題を出しておくので、次の動画を見る前に考えておいてください。サポートをまったく提供しない、または提供しすぎるという極端な状況を作ってはいけません。サポートとは、彼らの言葉に耳を傾けるということです。それが機能すれば、チームがあらぬ方向に行ってしまうケースは回避できるでしょう。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。