【4.1.2】「Why」からはじめよう(Start with why)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/412.html

■翻訳メモ
前回のビデオで私の考えを共有しましたが、あなたは少し消化不良を起こしているかもしれませんね。ティールは一種の概念(コンセプト)であって、それが組織の目的になることはありませんが、そのせいかもしれません。例えば、「私たちはティール組織になりたいんです」と言ってくる人がいたら、私は言葉を遮ります。「あなたはコンセプトになりたいのですか?それよりも、あなたが本当に求めていることは何なのですか?なぜ変わりたいと思うのか、きちんと聞かせてください」と言います。

「セルフマネジメント」についても同じことが言えます。私は、「セルフマネジメント」とはどういうものかから話をして、メンバーを困らせてしまったリーダーを何人か見てきました。そのようなリーダーは、最初にコンセプトを打ち出したために、混乱を引き起こしたのです。私は、常に、「なぜ」から始めるべきだと考えています。なぜ本当にやりたいのか、そこにある理由は何なのか、メンバーにはそれを説明しなければなりません。というのも、「セルフマネジメントを目指す」といきなりコンセプトから始めると、多くの反発や抵抗を招くことは当然で、考えを押し付けるのは、人を巻き込むのではなく、トップダウンで押し付けることになるからです。そして、コンセプトから始めてしまうと、「セルフマネジメント」がうまくいかない理由は何なのか、そもそも「セルフマネジメント」は良いアイデアなのか、などといった議論になり、抽象度の高い話になってしまいます。ですので、「セルフマネジメント」を始めたいと思ったら、なぜその方向に進みたいと思ったか、その理由を明確にし、あなたが感じとっている真の理由や深い衝動をメンバーと共有できるようにしなければなりません。それは、ちょうど、一緒に旅に出ようとしているメンバーに、招待状を渡すようなものなのです。

そのために、内面を明確にしていく方法をいくつか紹介したいと思います。ひとつは組織の持つ「真の目的」について、もうひとつは人や仕事のことで多くの人が抱いている「思い込み」についてです。

「セルフマネジメント」が組織の目的とリンクすれば、それは強力になります。病院を例にとってみましょう。「患者を健康にする、あるいは可能な限り自立した生活をしてもらうために、素晴らしいケアを提供しよう」と熱く語るのは、ある意味、簡単なことです。しかし、その実現には、少なくとも正しい知識を持った看護師と医師がいて、双方が信頼関係によって結ばれていることが条件となってきます。しかし、もしその時点で、彼らは組織の成長とともに官僚的になり、構造化が進み、階層が増え、すべてが減速し、そして、それらが理想的なサービスの提供を妨げ始めたとします。そうなった時に、看護師や医師をプロフェッショナルとして信頼できるようなシステムに戻すべきという意見が出てきます。彼らをベストな関係性に戻さなければならないという提言は、「セルフマネジメント」への移行に向けた大義名分となってきます。何か高い目的があって、それを追求しようとする姿というのもいいかもしれません。こうなってくれば、経営陣への説明も、難易度がグンと下がってきます。「今、私たちは取組の初期の段階にいます。すべてはフレッシュで、あとは目的に向かってエネルギーを注ぎ込むだけです」といった感じになります。

私は、成長するにつれて、組織が官僚的になり、構造的に階層が増えていくことに本当に恐れを感じます。階層が増えると、組織はスピードを失うだけでなく、活気も失っていくのです。そして、メンバーも情熱を失い、力を発揮できなくなっていきます。より良いものを提供するという目的があり、本来はその目的に対し100%のエネルギーを発揮する力があるにもかかわらず、その状態だと、エネルギーは30%くらいに抑えられてしまいます。だから、「セルフマネジメント」に何を求めるか、それは決まったものではありませんが、組織の目的とは合致したものでなくてはまりません。これが自らの進むべき道となってくるというものです。これが自らの「問い」を探求していく方法です。そして、その「問い」を他人に説明する際、その根底に大きな力が隠されていることを忘れてはなりません。その説明は「善」に則したものでない限り、人の心に響くことはないでしょう。

もうひとつは、精神の健康状態にリンクさせて説明する方法があります。従来のマネジメントの前提条件と、新たな「セルフマネジメント」の前提条件を対比させた前回のビデオを思い出してみてください。従来のマネジメントの前提の多くは、とても非道いものであったと思います。その前提には、組織の下層や現場にいる人は信頼に値しないというものがありました。彼らはあまり賢くない、もしかしたら、あまり正直でもない。だから、彼らの訴えには承認が必要で、彼らをマニュアルに乗せ、嘘を防止し、指示どおり動かすためは、何層もの管理層が必要だという考え方です。それは本当に非道い考え方で、それに比べると「セルフマネジメント」には、もっと美しい前提があることが分かると思います。そう考えると、こうした醜悪ともとれる「思い込み」から脱却して、多くの人が本当に素晴らしい仕事をしたいと思うような信頼に基づくシステムを目指していくのは、とても理にかなっていると思いませんか。必ずしもベストな決断を下せない1%~3%の人のために、これらすべての施策をとるべきではないということです。

それゆえに、メンバーが本当に力強い招待状を手に入れるまで、それが本当にパワフルだと感じとることができるまで、ストーリーを明確にして、あなたが話しつづけていくことを、私は切にお勧めするのです。

「セルフマネジメント」について話してはいけないと言っているのではありません。それはあくまでコンセプトなのです。あなたがどこに行きたいのかを説明するための手段として話すのはいいでしょう。しかし、それ自体が目的になってはいけません。なぜその方向に組織を導いていきたいのか、その理由を何度も何度も説明する必要があるということです。そこにある「問い」は、組織の大きな目的と結びついているからか、あるいは、その背後により美しい前提があるからです。あと2つ必要なものを付け足すとすると、ストーリーを語るとき、そして人を招待するときは、頭で理解してもらおうとしないことです。頭ではなく、重要なのは、「心」と「やる気」です。

そしてもうひとつは、物語を語るときには、話す相手の立場に合わせて、できるだけ親密に話すということです。例えば、マネージャーに話をする場合、「セルフマネジメント」の考えを受け入れるには時間がかかるであろうと最初から分かっていたら、彼らの目線で話すということです。デスクワークに縛られたマネージャー職はどこか寂しいものです。人を管理する仕事は、あまり楽しいものでなありませんし、創造的でもありません。部下のやる気を引き出し、その気にさせなければならないという大きなプレッシャーがあり、そして、上司には良い顔をしなければならないという二重のプレッシャーがあります。このゲームは成功が前提になっているため、失敗することは許されません。多くのマネージャーは、エクセルとパワーポイントによる書類作成、それとミーティングに勤務時間のほとんどを費やしていると思います。「あなたの人生は会議のためにあるのですか?」という問いは効果があるかもしれません。そして、組織の目的に直接役立つ仕事をするために、再び本当に創造的な仕事をすることができるようになるために、「セルフマネジメント」が役立つ可能性を説明するのです。現場にいる人たちは、彼らにとって本当に大切なことを伝えてくれる存在であること、そして、彼らはイニシアチブを取っていけるということ、全力を尽くせば、自分たちが変化の中心になれること、それらを実感してもらうことが必要なのです。良いアイデアがあれば、彼らはそれを実現するための意思決定権を持っています。優れたアイデアがあっても、階層を上がるにつれて、それが無駄になってしまうようなシステムはもういらないということです。

最後に、まずは、「なぜ」から始めてみてください、というのが私の訴えです。あなたにとって、最もパワフルな招待状とはどういうものでしょうか?その組織を変えようと思う真の目的は何でしょうか?そうやって、自分自身の内面を掘り下げてみてください。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。